シド・レインズは貴重なイケメン!?
── レインズのデザインコンセプトは?
野村哲也(以下、野村) レインズは最初、年配の武骨な軍人タイプになる予定だったんです。ですが、今回の主要キャラクターは武骨なタイプが多く、ロッシュが先行して出てきていたので、差別化も考えて現状のデザインさせてもらいました。たまには美形のシドもいいかと。服装はロッシュのデザインができあがっていたので、そちらに準じる形で描きました。飛空艇の主ということなので、羽のモチーフを取り入れたりもしています。
── ダイスリーはいかがでしょうか?
野村 “いい人”がコンセプトだったのですが、市民の代表を務める精神力の持ち主ということで、威厳のある顔つきにしました。長い金髪をオールバックにしているのですが、帽子で見えませんね(笑)。
聖府と軍の組織系統
── レインズやリグディをみると、聖府内もいろいろな思惑があるようですが?
鳥山求(以下、鳥山) 聖府内には、長く続いたファルシ政権による歪みや軋轢があり、一枚岩というわけではないんです。
── 政治にファルシが関わるのですか?
鳥山 ファルシは市民による政治を監督する立場で、聖府代表に助言などを行うことがあります。一般市民は聖府とファルシを信頼していて、反ファルシ的な者が代表に就いた前例はありません。
── 騎兵隊はどういう組織なのでしょう。
鳥山 シド=レインズ准将を中心としたコクーンの空の警備隊ですね。彼の人格を慕い、“人間の手によるコクーンの自由な統治”を理想として集まった腕利きたちを中心にメンバー構成されています。
── 騎兵隊とPSICOM(サイコム)には、どのような違いがあるのですか?
鳥山 PSICOMは、対パルスとの戦争に備えて超兵器で武装した軍隊で、聖府直属の特務機関です。体力的にも精神的にも秀でたエリートのみで構成される少数の精鋭部隊ですね。一方の騎兵隊は、ライトニングが属していた“警備軍”と同等の組織です。警備軍が各地域に配備されているのと違い、コクーンの宙空を警備する役割を帯びています。そのため、母艦となる巨大空母飛空艇“リンドブルム”を所持しています。空を自由に行動できる機動力があり、遊軍的な部隊となっているんですよ。
ヘカトンケイルのコンセプト
── ヘカトンケイルはどのようなコンセプトで設計されたのでしょうか?
鳥山 コンセプトは“シューティングブラスター”です。ドライビングモードでは遠距離攻撃のみで攻撃するので、敵との位置関係に影響されずに、ガンガンと撃ちまくれます。
── 魔導アーマーになるのは驚きですね。
鳥山 じつは、最初から魔導アーマーにしようとしていたわけではなかったんですよ。2足歩行で乗り込める“パワードスーツ戦車”ということでデザインしたら、結果的に魔導アーマーらしくなったんです(笑)。
発売直近の状況と海外版の動向は?
── 現在、開発スタッフの方はマスターアップを終えてひと息ついているところですか?
北瀬佳範(以下、北瀬) 一度小休止したのですが、すぐに来年3月9日の海外版発売に向けて再起動しました。現在も作業中です。
── 今回は日本語版の発売から北米版の発売までの期間が、かつてないほど短いですよね。
北瀬 そうですね。もともと日本語版と並行して開発していたので、時期を揃えることができました。今年のE3で北米用にXbox360版の実機デモをお見せしたように、基本的な部分はできていたんです。それからテキストの翻訳やボイスを加えて、あとはプログラマーが最終デバックを残しているくらいですね。
── 今回は北米版を日本に逆輸入する“インターナショナル版”はなさそうですか?
北瀬 通例では、北米版が出るまでに時間がかかるので、日本語版に新規要素などを加え、それをインターナショナル版として日本でもリリースしていました。ですが今回は差異がないので、検討していませんね。
聖府とファルシとそこに属する者たち
── 今回公開された情報で、聖府軍の構造がわかってきましたね。
鳥山 軍は大きく分けると、特務機関のPSICOMと、ライトニングも所属していた警備軍があります。レインズ率いる騎兵隊は、警備軍の部隊のひとつです。
── 騎兵隊はPSICOMのことをよく思っていないようですね。
鳥山 そうですね。PSICOMというより、聖府に対していい思いを抱いていないのが、レインズやリグディです。彼らはファルシが政治に関わることを快く思っておらず、政治は人間たちだけでやるべきだと考えています。そういう点では、ノラという集団を作って聖府におかまいなく暮らしているスノウに考えかたが近いのですが、スノウはやりかたが子供じみていますね。(笑)。レインズは権力を得つつも、いつか果たすべくある野望を抱いています。リグディはレインズに同調し、彼ならそれを果たせると思って従っています。
── 聖府代表は、ファルシの意思に従って政治を行っているのでしょうか。
鳥山 コクーンの首都はエデンという街なのですが、そこにいるファルシがときどき代表に助言を行っています。
── 公式サイトで公開している小説やいままでの情報では、“ファルシ=クジャタ”や“ファルシ=カーバンクル”などが登場しています。それぞれ召喚獣の名がついているんですね。
鳥山 ファルシには“神様”のイメージがあるので、神聖な存在である召喚獣のイメージをカブせて名づけているんです。
── コクーンにも、ファルシから使命と烙印を受けたルシがいるのでしょうか?
鳥山 はい。コクーンのルシは、刻印の形がライトニングたちとは違っています。ただ、コクーンではここ数百年、ルシは登場していませんでした。ところが、小説にあるようにサッズの息子であるドッジがコクーンのルシに選ばれます。それが、始まりの物語のひとつになるんです。
── 小説でたびたび名前が挙がる、“黙示戦争”は本編に絡んでくるのでしょうか?
鳥山 それ自体を描くというより、物語のバックボーンとしてあります。“ファブラ ノヴァ クリスタリス”の作品に共通しているある神話があるのですが、その神話のずっとあとにあった歴史的事件が黙示戦争です。
グラン=パルスを闊歩する魔物たち
── 以前公開された情報では、“パルス”はあくまでコクーン側の呼称であり、パルス側では“グラン=パルス”と呼んでいるとのことでした。“グラン”の意味とは?
鳥山 “大いなる”というような意味ですね。物語のけっこう後半に登場するエリアです。グラン=パルスは広いですよ。とくにアルカキルティ大平原というエリアは、本当に広くてモンスターもたくさんいます。
── 敵との遭遇が頻繁になるのですか?
鳥山 モンスターのシンボルに触れなければバトルに入らないので、自分の意思である程度遭遇率を操作できます。ちなみに、フィールドではキャラクターたちがある程度離れると、倒した場所に敵が再出現するようになっています。行き来すれば経験地も稼げますね。
── グラン=パルスには超巨大なモンスターもいるようですね。
鳥山 遭遇しても、戦うとまずやられてしまいます。見かけたら迂回してください(笑)。
── やり込み用の相手なんですね。そういったモンスターが、こちらを見つけるとアクティブに追ってくることはあるのでしょうか?
北瀬 ある程度大きな魔物は追ってくることもありますが、アダマンタイマイくらいになると、それはありませんね。今回は“リスタート”することでエンカウントまえには戻れますが、バトル中に“逃げる”というコマンドはありません。倒せないモンスターが、避けられない場所にいることはありませんよ。
鳥山 アダマンタイマイは、アクティブである以前に、眠っていることもよくあります。近づくといびきが聞こえてくるんです(笑)。それと、アダマンタイマイは、足を攻撃すとアゴから潰れ、ダメージを与えやすくなるなどのギミックがあるんですよ。
── 足? 魔物には部位があるんですか?
鳥山 巨大なヤツにはあります。通常のモンスターでも、連続攻撃で“ブレイク”させると形態が変わったり、怒り始めた瞬間にモードが切り替わったりと、バトル中に様子が変化することが多いですね。“1回の戦闘の中にも物語がある”という作りかたをしています。
北瀬 モンスターの中には、ブレイクすると装甲が壊れ、裸になるものがいるんです。細いワニのようになったヤツを叩くのは気持ちいいですよ(笑)。それから、モンスターが大技を出してくるのにもサイクルがあって、それでHPがかなり削られます。それまでにどれだけ耐えられるようにしておくかというのが、バトルのポイントになりますね。
── 以前、キングベヒーモスが立ち上がって青白く光っている画面写真がありましたが、あれも形態変化のひとつですか?
鳥山 そうですね。ベヒーモスが立ち上がるのは、本当にヤバい印です(笑)。大型のモンスターには、そういった形態変化を終えるまでに時間がかかるものがいるので、そこでどう一気に畳みかけるかが重要になります。
北瀬 相手に弱体魔法などをかけていても、形態が変化すると効果が解除されるので、またかけるか、ゴリ押してダメージを与えるかでプレイヤーの性格が出ますね。
── 以前公開された、ジャボテンダーにもそういった仕掛けが?
鳥山 あったかなあ。僕はサボテンダー相手のバトルですら危ういので・・・・・・(笑)。サボテンダーはエンカウントすることも難しいし、強いんです。エンカウントするために追い駆けていると、ちょっと酔いそうにも(笑)。
── ものすごいスピードで走ってるんでしょうね(笑)。それらのモンスターは、特定の場所に行けば遭遇できるのですか?
鳥山 基本的にはそれぞれに生息するエリアがあるので、そこに行けば会えますね。
── ちなみに、グラン=パルスのモンスターは、コクーンのものより野生に近いと思うのですが、装甲をつけていたりするのは・・・・・・?
鳥山 もちろん野生に近いものもいるのですが、『XIII』は未来的なデザインでまとめているので、パルスのモンスターとはいえ、すべてがまったくの原始的な姿ではないだろうという判断からです。コクーンとパルスでは、同じモンスターでも進化の系統が違うのですが、基本的にグラン=パルス種のほうが大きくて強い。チョコボもパルスのほうがかなり大きく、モミアゲがありますしね(笑)。
情報の集積とアイテムの収集
── モンスター図鑑のようなものは、『XIII』にもあるのでしょうか?
鳥山 ライブラの魔法で集めた情報がすべて蓄積され、メニューの“オートクリップ”内の項目から閲覧できます。かなりの量がありますね。『XIII』では敵の状態や特徴に関しては、ライブラを何度かかけることで段階的に確認できますし、戦いをくり返すとキャラクターが経験で覚えていくこともあります。そういった情報がAIの行動に影響を及ぼすシステムです。
── 従来のシリーズ作品よりだいぶ複雑になっていますよね。
鳥山 チュートリアルもオートクリップで見られるようにしています。いままでの『FF』とだいぶ違うバトルですので、初心者の方にもわかるように丁寧に解説していますよ。
── セーブポイントが小刻みに配置されているようですが、それも同じ配慮からですか?
鳥山 そうですね。今回、セーブポイントにはショップの機能もあって、そこで買い物や装備品の改造を行うことができます。
── 特定のセーブポイントからしか行けないショップなどはあるのでしょうか?
鳥山 基本的に、物語の進行に伴ってフィールドがどんどん変わっていくため、行き来をするということがないんです。そのため、ショップの種類は徐々に増えていきますが、すべてどこからでも利用できます。
北瀬 グラン=パルスに降りてからは、いろいろと行き来するようになりますけどね。ショップでの買い物も重要ですが、むしろ今回、序盤はギルが貴重ですね。敵はギルを落とさないので。
── すると、アイテムを売ったりして稼ぐことになるのですか?
北瀬 そうです。とはいえ僕はアクセサリーなどはなかなか売れない性分なので、金策が難しくて・・・・・・。6キャラクター分集めて、7個目で初めて売ってもいいかなと。(笑)。
鳥山 僕はすぐに“解体”してしまうか、ギル目当てで売っちゃいますよ(笑)。それでまた別の素材やアクセサリーを買います。それらしい解説文がついた売却専用の素材もあるので、そういったものを積極的に売って稼ぐ手もありですね。
※ 週刊ファミ通 「No. 1096」2009年12月17日号 より一部抜粋。