476 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/17(土) 01:18:51 ID:???
長い長いエスカレータ。そこを出ると地上へつながっているリニアのハブステーションがある。
ジオフロントのほぼ中央に位置するNERV本部ビルのすぐ脇だ。
採光ビルから伸びる光ファイバケーブルを通じてジオフロント内に降り注ぐ陽光がまぶしい。
長い長いエスカレータ。そこを出ると地上へつながっているリニアのハブステーションがある。
ジオフロントのほぼ中央に位置するNERV本部ビルのすぐ脇だ。
採光ビルから伸びる光ファイバケーブルを通じてジオフロント内に降り注ぐ陽光がまぶしい。
「科学に対する冒涜、か」
時田は地上に向かうため、リニアのプラットフォームに、一人佇んでいた。
皆地下で仕事をしているのだろう、NERV職員の姿は一人も見当たらない。
皆地下で仕事をしているのだろう、NERV職員の姿は一人も見当たらない。
「次の上りは・・・あと5分後か」
もうそろそろJAの修復作業も終わるころだろう。今から第二研究所に戻っても、さして仕事があるわけでない。
ぼぉっとそんなことを考える。いまさら出来る事は少ない。
作戦に関しても、当然、立案から決行まで全てNERVの指揮下だ。日重工の出番はない。
ぼぉっとそんなことを考える。いまさら出来る事は少ない。
作戦に関しても、当然、立案から決行まで全てNERVの指揮下だ。日重工の出番はない。
ヤシマ作戦――前代未聞の、日本中の電力をかき集めて行う狙撃作戦。
もし使徒がその名の通り神の使いならば、この作戦は全身全霊をもってして行う人類のテクノロジーの挑戦だ。
そして、敵を撃破する狙撃主の護衛役となったジェットアローン。
せっかく彼のために作られた武装も、彼は一度も携えることなく、ほぼ身をはっての護衛をしなければならない。
目標の知覚能力、攻撃能力を考えれば反撃は必死だ。加藤にはああ言ったものの、まず大破してしまうだろう。
さすがに腹部にある中枢システムをやられてしまえば、リアクターが無事でもJAの再建は厳しい。
もちろん、彼の任は、その弟のジェットアローン二号機・・・JA改に受け継がれるだろう。
テスト機であり、上層の権利の闘争に巻き込まれ無理やり実戦に出されたJA一号機。二度の使徒戦を、辛くも勝ち抜いたJA一号機。
おそらく、第二に戻り最終チェックをするときが、JA一号機を見る最後の機会になるかもしれない。
第一の二号機に、全力で支えると言った自分が情けない・・・
もし使徒がその名の通り神の使いならば、この作戦は全身全霊をもってして行う人類のテクノロジーの挑戦だ。
そして、敵を撃破する狙撃主の護衛役となったジェットアローン。
せっかく彼のために作られた武装も、彼は一度も携えることなく、ほぼ身をはっての護衛をしなければならない。
目標の知覚能力、攻撃能力を考えれば反撃は必死だ。加藤にはああ言ったものの、まず大破してしまうだろう。
さすがに腹部にある中枢システムをやられてしまえば、リアクターが無事でもJAの再建は厳しい。
もちろん、彼の任は、その弟のジェットアローン二号機・・・JA改に受け継がれるだろう。
テスト機であり、上層の権利の闘争に巻き込まれ無理やり実戦に出されたJA一号機。二度の使徒戦を、辛くも勝ち抜いたJA一号機。
おそらく、第二に戻り最終チェックをするときが、JA一号機を見る最後の機会になるかもしれない。
第一の二号機に、全力で支えると言った自分が情けない・・・
そこまで考えて時田は気づく。
なんて馬鹿だったんだ、俺は・・・!
不安なのは、おとり役のパイロットが死ぬかもしれないからじゃない・・・!
ジェットアローンが・・・自分の息子が死ぬかもしれないからだ・・・!
ジェットアローンが・・・自分の息子が死ぬかもしれないからだ・・・!
477 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/17(土) 01:33:26 ID:???
いまさらになって、ヤシマ作戦について葛城作戦部長に抗議すべきだったと後悔する時田。
だが、すでにMAGIも今回の作戦を最適解として提示したという。
いまさらになって、ヤシマ作戦について葛城作戦部長に抗議すべきだったと後悔する時田。
だが、すでにMAGIも今回の作戦を最適解として提示したという。
「なんて・・・馬鹿、、なんだ・・・」
ジェットアローンは、日重工の仲間たちと何年もかけて育ててきた、自分だけではない、皆の息子なのだ。
未知の敵、使徒を迎撃すべく、時田たちが人類の希望を込めてつくり上げたジェットアローン。
それを人類を救う正義という大儀と天秤にかけたとき、時田が選んだ選択肢は正義だった。
当然、間違った選択ではない。「世界を守る最も合理的手段」――冬月副司令もそう表現した。
NERVにとっても、パイロットを守るほうが、民間の兵器企業のロボットを守ることより遥かに重要なことだ。
たとえJAが大破するとしても、パイロットの人命を守ることは、常に最大限の努力をもってして取り組まなければならない。
未知の敵、使徒を迎撃すべく、時田たちが人類の希望を込めてつくり上げたジェットアローン。
それを人類を救う正義という大儀と天秤にかけたとき、時田が選んだ選択肢は正義だった。
当然、間違った選択ではない。「世界を守る最も合理的手段」――冬月副司令もそう表現した。
NERVにとっても、パイロットを守るほうが、民間の兵器企業のロボットを守ることより遥かに重要なことだ。
たとえJAが大破するとしても、パイロットの人命を守ることは、常に最大限の努力をもってして取り組まなければならない。
だが、割り切れない。どうしても、割り切れない。
立ち上がらせるために幾多の汗を流し、徹夜を続け、そしてそれに応えるかのように、
何度も時田たちに奇跡を見せ、人類を救ってきたジェットアローン。
彼を見捨てるなど、いまさらできるわけがない。
立ち上がらせるために幾多の汗を流し、徹夜を続け、そしてそれに応えるかのように、
何度も時田たちに奇跡を見せ、人類を救ってきたジェットアローン。
彼を見捨てるなど、いまさらできるわけがない。
「・・・俺は・・・どうすればいい・・・」
もはや時間はない。
JAも、パイロットも助け、さらに使徒を撃破する方法があるとしたら、今にでも見つけなければ手遅れだ。
JAも、パイロットも助け、さらに使徒を撃破する方法があるとしたら、今にでも見つけなければ手遅れだ。
見上げれば、ジオフロントの外縁部にそって螺旋状に敷設されたレールの上を、リニアがこちらに向かって下ってきている。
これに乗れば、もうNERV内部には戻れない。螺旋を走るリニアトレインが、彼に決断を迫る。
これに乗れば、もうNERV内部には戻れない。螺旋を走るリニアトレインが、彼に決断を迫る。
走り去るリニアトレイン。待ち人がいなくなった駅は無人となり、静けさだけが残る。
だが、トレインの中もまた、無人であった。
478 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/17(土) 01:46:43 ID:???
(うぅ・・・緊張するな・・・)
(うぅ・・・緊張するな・・・)
NERV内部、パイロット待機室。
制服のまま椅子で寝転んでいるシンジは初戦を控え緊張の真っ只中にあった。
制服のまま椅子で寝転んでいるシンジは初戦を控え緊張の真っ只中にあった。
→(7時半までにケージに行けばいいんだよな、確か・・・それにしても、綾波はどこにいったんだろ・・・)
待機室内にはNERV発令所から送られてくるデータを見るためのモニタがあるが、
今はあわただしく動き回る職員の姿しか映っていない。おそらく監視カメラの映像だろう。
今はあわただしく動き回る職員の姿しか映っていない。おそらく監視カメラの映像だろう。
(プラグスーツに着替えるのは7時にして・・・まだ2時間近くある・・・)
待機命令を出されたが、こう退屈だと緊張ばかりが高まってしまう。シンジは時間をもてあましていた。
(ミサトさんはNERV内部にいればいいって言ってたし・・・ちょっと散歩しようかな)
広大な地下空間に建設された大深度地下施設群には、職員のための様々な施設がある。
とりあえず、食堂に向かおうと考えたシンジは、待機室から出て、似たり寄ったりの風貌が並ぶ廊下を歩く。
来た頃は迷ってばかりいたが、今はなんとか目的地まではたどり着けるようになった。
もっとも、未だに行ったことのないブロックや施設も多く、下手に歩き回ればまた迷子だ。慎重に現在位置を確認しながら歩く。
とりあえず、食堂に向かおうと考えたシンジは、待機室から出て、似たり寄ったりの風貌が並ぶ廊下を歩く。
来た頃は迷ってばかりいたが、今はなんとか目的地まではたどり着けるようになった。
もっとも、未だに行ったことのないブロックや施設も多く、下手に歩き回ればまた迷子だ。慎重に現在位置を確認しながら歩く。
「あれ??」
シンジの視線の先には、見慣れたNERVの制服とは違った服装に身を包んだ男性が一人。
(あれって確か、ジェットアーロンの人だ・・・たしか、時田さん、とかミサトさんが言ってたな・・・)
モニタでしか見たことのない人物だが、確かに時田その人には間違いなさそうである。
よく見れば、壁にかかっている案内板を必死で見つめている。どうやら迷ったようだ。
よく見れば、壁にかかっている案内板を必死で見つめている。どうやら迷ったようだ。
479 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/17(土) 01:49:10 ID:???
「あの・・・どうかしましたか?」
「あの・・・どうかしましたか?」
急にかけられた声に驚いて振り向く時田。そこには制服を着た男子学生が一人 ――― なんで学生が???
「き、君は・・・その、ここの職員なのかい?」
「え?えぇ、まぁ一応、そうですけど・・・」
「え?えぇ、まぁ一応、そうですけど・・・」
思わぬ答えに驚く時田。まさか中学生が職員とは思ってもいなかったのである。
いや、だがNERVは優秀な人間を年齢関係なく集めている組織だ。きっと彼も優秀な能力を持つ少年に違いない。
勝手にそう解釈した時田は、早速この窮地を救ってもらおうとシンジにたずねる。
いや、だがNERVは優秀な人間を年齢関係なく集めている組織だ。きっと彼も優秀な能力を持つ少年に違いない。
勝手にそう解釈した時田は、早速この窮地を救ってもらおうとシンジにたずねる。
「道に迷ってしまってね、申し訳ないんだが、発令所まで案内してもらえないかな?」
「発令所って第一発令所ですか?いいですよ」
「発令所って第一発令所ですか?いいですよ」
あっさりと承諾され、安堵する時田。道に迷っている時間などない。
「悪いね、君も何か仕事があるんだろう?」
「いえ、仕事といっても、まだ僕は待機命令なので・・・ちょうど暇だったんです」
「いえ、仕事といっても、まだ僕は待機命令なので・・・ちょうど暇だったんです」
やっぱり職員なのか。NERVの常識を疑いつつもシンジについていく時田。
「あの、時田、さん・・・ですよね?」
「そうだが、、、なぜ君は私の名前を?」
「あぁやっぱり!ジェットアーロンを操縦している人ですよね!」
「そうだが、、、なぜ君は私の名前を?」
「あぁやっぱり!ジェットアーロンを操縦している人ですよね!」
ジェット"アローン"だっ!一瞬そう言い返しそうになるのをこらえる。
「・・・あぁそうだよ」
「僕、ジェットアーロンの戦闘、発令所でずっと見てたんです!この前の第四使徒戦凄かったです!感動しました!」
「僕、ジェットアーロンの戦闘、発令所でずっと見てたんです!この前の第四使徒戦凄かったです!感動しました!」
ちょっと興奮気味に話すシンジ。だが、一方の時田は、シンジが発令所に出入りできる職員だということに愕然としていた。
一体何者なんだ、この少年は。
一体何者なんだ、この少年は。
480 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/17(土) 02:04:53 ID:???
いくつかのエスカレータを使い、廊下を歩くこと数分、彼らの前に「第一発令所:中央入り口」と書かれた扉が現れる。
いくつかのエスカレータを使い、廊下を歩くこと数分、彼らの前に「第一発令所:中央入り口」と書かれた扉が現れる。
「ちょっと待ってくださいね」
そういうとおもむろにポケットからIDカードを取り出し、スロットに通すシンジ。
時田に発行されているIDカードはゲスト用のものだ。当然、ゲストレベルでは発令所には入れない。
シンジがカードを通し終わると、ピッという電子音とともに「ROCK」の赤い字が消える。
時田に発行されているIDカードはゲスト用のものだ。当然、ゲストレベルでは発令所には入れない。
シンジがカードを通し終わると、ピッという電子音とともに「ROCK」の赤い字が消える。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ミサトさ~ん」
「なにシンちゃん?今アタシ忙しい・・・」
「なにシンちゃん?今アタシ忙しい・・・」
シンジを追い返そうと振り返るミサトが目にしたのは・・・
「と、時田・・・主任?」
そこに立っていたのは、先ほど帰ったはずの日重工所属、時田シロウその人であった。
「こ、ここは部外者立ち入り禁止です。いったい何の用件でしょうか?」
思わぬ来訪者に動揺しつつも、とにかく対応をとるミサト。さっきと言ってることが違ったような気がしたが気にする彼女ではない。
「・・・実は、ヤシマ作戦についてなのですが」
「すでに作戦の準備は整っていると聞きましたが、何か問題でも??」
「すでに作戦の準備は整っていると聞きましたが、何か問題でも??」
時田の話に顔が曇るミサト。何事かと端末に向かっていた日向も振り返る。
もしJAに何かトラブルが発生していて初号機の護衛につけないなどということになれば、作戦の変更を余儀なくされるからだ。
もしJAに何かトラブルが発生していて初号機の護衛につけないなどということになれば、作戦の変更を余儀なくされるからだ。
「実は・・・JA大破を防ぎつつ、おとり役のエヴァの危険を回避する方法を思いついたのです」
彼の思いもよらなかった一言に、発令所の面々は動きを止めざるを得なかった。