802 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/10/08(日) 15:48:57 ID:???
『一号機の識別信号を追跡するようにセットしました。行動制限はレベル3まで開いてます』
「分かった。一号機はそれほど速度を出していない。それで行けるだろう」
『一号機の識別信号を追跡するようにセットしました。行動制限はレベル3まで開いてます』
「分かった。一号機はそれほど速度を出していない。それで行けるだろう」
いくら高度な人工知能を持っているとはいえ、やはり遠隔制御のように融通が利くわけではない。
あくまで二号機は一号機を足止めさせるだけだ。暴走を止めるのは人の手で行うしかない。
あくまで二号機は一号機を足止めさせるだけだ。暴走を止めるのは人の手で行うしかない。
「こちらも間もなく管制復旧する見通しだ。ひとまず本部のほうに戻ってくれ」
『分かりました。…ようやっと、なんとかなりそうですね』
「だといいが…」
『分かりました。…ようやっと、なんとかなりそうですね』
「だといいが…」
――ドッシーン!ドッシーン!…
二号機が足を踏み出すたびに、その振動が床から体に伝わってくる。
ロールアウトしてすぐの半自律制御には若干の不安もあったが、少なくともこの程度の簡単な指示なら
確実にこなせるほどに、二号機の中枢は高度な機構を持っている…いや、持たせたのだ。
ここに至るまで様々な苦難があったが、いまや世界でも最高水準と言える自律制御を可能にしたJA二号機。
二号機に限らず、決して制御不能を許さないその信頼性こそが、両JAの唯一の強みであった。
ロールアウトしてすぐの半自律制御には若干の不安もあったが、少なくともこの程度の簡単な指示なら
確実にこなせるほどに、二号機の中枢は高度な機構を持っている…いや、持たせたのだ。
ここに至るまで様々な苦難があったが、いまや世界でも最高水準と言える自律制御を可能にしたJA二号機。
二号機に限らず、決して制御不能を許さないその信頼性こそが、両JAの唯一の強みであった。
(…今ここで事態を収拾できなければ、JAの有用性は失われてしまう…)
政治家のごとく利害で動くことを、もともと技術者出の時田は良しとしない性格である。
しかし、現に、多大な政府援助金を投入され、日本政府による国内外でNERVに対抗するための最後の切り札として、
ジェットアローンが政治的立場を得てしまった今、JAの存在意義の喪失は、日重工のそれを失うことに等しい。
しかし、現に、多大な政府援助金を投入され、日本政府による国内外でNERVに対抗するための最後の切り札として、
ジェットアローンが政治的立場を得てしまった今、JAの存在意義の喪失は、日重工のそれを失うことに等しい。
自分が責任を取るだけではすまされないかもしれない――
日重工の解散という最悪の結果が彼の頭によぎる。
すでに国連から使徒迎撃作戦の一環としての補助予算を承認された以上、日本政府と国際世論の二つの立場に挟まれて
そのギリギリを日重工は歩んでいるのだ。
すでに国連から使徒迎撃作戦の一環としての補助予算を承認された以上、日本政府と国際世論の二つの立場に挟まれて
そのギリギリを日重工は歩んでいるのだ。
なんとしてでも、JAを止めなければならない。
803 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/10/08(日) 15:52:52 ID:???
「――主任、時田主任!」
「――主任、時田主任!」
加藤の声が耳に入る。
「あぁ、すまない。なんだ?」
怪訝な顔を時田に向けていた加藤であったが、すぐに表情を切り替える。
「リコンパイル完了しました。主プログラム、実行します」
「よし、走らせろ」
「よし、走らせろ」
加藤がキーをたたくと同時に、文字列が目にも止まらぬ速さでモニタ内に映し出されていく。
「行けそうか?」
「そう…みたいですね。今度は大丈夫のようです」
「そう…みたいですね。今度は大丈夫のようです」
文字列が一瞬停止すると、画面が切り替わり、”日重工JA管制システム”と書かれたGUIの起動画面が移る。
そして。
そして。
「主任、管制システム、起動しました!」
加藤の声とともに、14インチの画面に見慣れたウィンドウが複数重なって開かれる。
もっとも、いつもは専用端末の大画面モニタで見ているものではあったが。
もっとも、いつもは専用端末の大画面モニタで見ているものではあったが。
「よし!まず、ほかのPCへとタスク振り分けだ。最低、手動制御シェルとN2リアクタ、RT光学センサーのモニタリングだけでいい。
ネットワークはのほうはどうだ?」
「はい、メインフレームへのリモートログインは正常、主信号回線インフィニティへのバイパスもOKです」
ネットワークはのほうはどうだ?」
「はい、メインフレームへのリモートログインは正常、主信号回線インフィニティへのバイパスもOKです」
これで、少なくともJAの手動制御だけはできるようになるはずだ。
「分かった。いいか、みんな、……JA一号機を停止させるぞ」
804 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 15:54:37 ID:???
暗闇に数台の高輝度液晶画面が浮かぶ。
暗闇に数台の高輝度液晶画面が浮かぶ。
「今、広域通信を開放しました。一号機と二号機を探索中です」「NERVの通信とつなぎました。衛星からの位置情報をマッピング中」
「グリッド処理に問題なし。ブレード数を12%蹴ってもまだいけます」「二号機からのデジタルで応答確認、制御を手動遠隔に移します」
「グリッド処理に問題なし。ブレード数を12%蹴ってもまだいけます」「二号機からのデジタルで応答確認、制御を手動遠隔に移します」
いつもの端末、とは行かないものの、システムさえ起動してしまえば、あとは彼らにとっては得意なものだ。
「処理に余裕があるなら蹴って電力浪費を抑えるんだ。二号機の現在位置は?」
状況の全体を見渡すモニタがないために、各員の間を行ったり来たりしながらも、時田はすかさず指示を出す。
「一号機と約1.2Km離れています。ですが、光学で補足しました。速力は原速、リアクターも正常です」
「そのまま後方から接近、一号機を捕らえるんだ。一号機のほうから応答は?」
「それが、妙なことになってるんです。初期応答は返ってきたんですが恐ろしく返答が遅くて。
モニタリングはできますが、信号の断絶が激しくてリアルタイムでは確認できません。やはり内部の問題でしょうか?」
「そのまま後方から接近、一号機を捕らえるんだ。一号機のほうから応答は?」
「それが、妙なことになってるんです。初期応答は返ってきたんですが恐ろしく返答が遅くて。
モニタリングはできますが、信号の断絶が激しくてリアルタイムでは確認できません。やはり内部の問題でしょうか?」
停電と同時に暴走が起こったことを考えれば、停電によって管制信号が失われたことが暴走の原因かとも考えられたが、
一号機の制御チップは管制下を離れて15分以上たった場合、自動的に停止するように組まれている。
すると、制御チップの処理のどこかで問題が発生したとしか考えられない。
だが、応答が返ってくるところを見ると、外部からの信号も正常に処理しているようでもある――
一号機の制御チップは管制下を離れて15分以上たった場合、自動的に停止するように組まれている。
すると、制御チップの処理のどこかで問題が発生したとしか考えられない。
だが、応答が返ってくるところを見ると、外部からの信号も正常に処理しているようでもある――
「何らかの原因で、制御チップがビジーになった可能性も考えられるな。自己チェック信号を送信してみてくれ」
もしハード面でチップに異常が出ているのであれば、予備用のチップに切り替えればいいだけだ。
それから緊急信号を送出すれば、少なくとも停止だけは出来るはずだ。
それから緊急信号を送出すれば、少なくとも停止だけは出来るはずだ。
「主任、今戻りました。……歩行しつづけるところを見ると、下半身の制御チップでしょうかね?」
と、管制室の入り口から先ほどまで二号機再起動現場にいた小松たちが入ってくる。
外にいて機材を運び降ろししていたせいか、彼らは汗だくだ。
外にいて機材を運び降ろししていたせいか、彼らは汗だくだ。
805 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 15:56:56 ID:???
「分からん。レスポンス自体はあるようだ。だが…」
「JAはあらゆる事態を想定してプログラムは組まれている、そうですよね」
「分からん。レスポンス自体はあるようだ。だが…」
「JAはあらゆる事態を想定してプログラムは組まれている、そうですよね」
無論、小松の言葉は嫌味などではない。彼はJAの制御に関してもっとも労力を投じた男だ。
JAの制御原理、初期実装、そして二号機のJRシステムの搭載も、彼の貢献によるところが大きい。
JAの制御原理、初期実装、そして二号機のJRシステムの搭載も、彼の貢献によるところが大きい。
「そうだ。例え制御回路に異常があったところで、歩行を続ける、ということは有り得ない」
「二号機のほうはどうです?」
「特に異常はない。あと少しで一号機に接付するところだ」
「二号機のほうはどうです?」
「特に異常はない。あと少しで一号機に接付するところだ」
覗き込むPCの画面の右上には小さなウィンドウが二号機の光学カメラからの映像を映し出している。
一号機の背中まであと少しだ。
一号機の背中まであと少しだ。
「主任、チェック信号のレスポンス着ました。システムは正常、チップ0、チップ1、ともに生きてます」
「…変だな。下半身制御切り替え、予備回路へ移せ。それから緊急停止信号を送出」
「…変だな。下半身制御切り替え、予備回路へ移せ。それから緊急停止信号を送出」
制御チップが正常に稼動している――そうなると、暴走の原因はよりいっそう不透明になる。
(だとすると、駆動系の問題か…?いや、そうだったら歩行もままならないはずだ…)
「チップ1、チップ2へ切り替え完了しました……あぁ、ダメです。やっぱり停止しません」
「停止信号は拒否か?」
「いえ、レスポンスなし。どうやら受信していないようですね…」
「停止信号は拒否か?」
「いえ、レスポンスなし。どうやら受信していないようですね…」
信号そのものを受信しなければ、遠隔からの停止は難しい。そうなれば、あとは力づくで止めるしかない。
「主任、二号機が今一号機を捕らえました。出力68%で負荷は47!」
職員の一人から声があがる。
806 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 15:59:11 ID:???
PCの画面には、二つの輝点が重なって表示されている。
PCの画面には、二つの輝点が重なって表示されている。
「もう一度、一号機へ緊急停止信号を送信。二号機はそのまま一号機を足止めさせるんだ」
まだ強制的に押し倒してしまうわけにはいかない。打つ手はまだあるはずだ。
「小松、加藤、ほかに考えられる原因は何があると思う?」
「あまりに状況が不可解すぎますね…。モニタリング信号も出してはいるのに断絶している、こちらからの
管制も受信しているかどうか怪しい。けれど、制御チップに異常はない…」
「信号自体も、その返答の時間、返答確率はランダムですし…」
「あまりに状況が不可解すぎますね…。モニタリング信号も出してはいるのに断絶している、こちらからの
管制も受信しているかどうか怪しい。けれど、制御チップに異常はない…」
「信号自体も、その返答の時間、返答確率はランダムですし…」
手をあごにあて考え込む時田たち。
ふと、小松が顔を上げる。
ふと、小松が顔を上げる。
「加藤、そういえば一号機のモニタリング信号は受信できているようだな?」
「デジタルのBchとアナログの併用で確認できるだけで、リアルタイムじゃないですけど。まだN2には臨界まで余裕があります」
「…ちょっと待て、じゃぁ命令信号はどっちで出してるんだ?」
「デジタルのAchで、応答もデジタルチャンネルで返ってきてます。」
「デジタルのBchとアナログの併用で確認できるだけで、リアルタイムじゃないですけど。まだN2には臨界まで余裕があります」
「…ちょっと待て、じゃぁ命令信号はどっちで出してるんだ?」
「デジタルのAchで、応答もデジタルチャンネルで返ってきてます。」
JAには、一号機、二号機ともに3系統の通信装置が搭載されている。1系統が管制との通信、1系統が敵味方識別信号、
そして、バックアップ用である。もっとも運用時には、各チャンネルが決まった役割をこなすことは少なく、状況に応じて、
柔軟に送受信チャンネルを変更するため、役割分担はあくまで建て前上のものでもある。
そして、バックアップ用である。もっとも運用時には、各チャンネルが決まった役割をこなすことは少なく、状況に応じて、
柔軟に送受信チャンネルを変更するため、役割分担はあくまで建て前上のものでもある。
「アナログでは通信できないのか?」
「アナログでは応答してこないですね。ちょっと距離がありすぎるのでは…」
「待てよ……そうか分かったぞ!」
「アナログでは応答してこないですね。ちょっと距離がありすぎるのでは…」
「待てよ……そうか分かったぞ!」
小松が急いで二号機のモニターに駆け寄る。
807 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:00:40 ID:???
「小松、どういうことだ?説明しろ」
「小松、どういうことだ?説明しろ」
時田が小松のもとに駆け寄る。当の本人は、二号機の光学センサーの映像を最大解像度にしている最中であった。
「主任、おそらく原因は通信系です!」
「なんだって?だが、3系統が同時に落ちるはずなんか…」
「電波妨害ですよ…おそらく」
「なんだって?だが、3系統が同時に落ちるはずなんか…」
「電波妨害ですよ…おそらく」
画面上のウィンドウでは二号機の光学センサーの映像をキャプチャしている旨が表示される。
「ちょっと待て、妨害だとして、二号機に影響がないのは一体…」
「おそらく一号機そのものに狭域ジャマーが取り付けてあるんでしょう。そしてさらに、そこから一号機に歩行信号を送出し続ける。
こうすればこちら側からの信号、特にアナログは受信できないし、モニタリング信号も断絶します」
「おそらく一号機そのものに狭域ジャマーが取り付けてあるんでしょう。そしてさらに、そこから一号機に歩行信号を送出し続ける。
こうすればこちら側からの信号、特にアナログは受信できないし、モニタリング信号も断絶します」
キーをたたきつづけながら小松は続ける。
「JAの通信装置にはシールドとフィルターがついてますから、超近距離からの信号であればジャミングに埋もれず受信してしまう。
歩行信号を送出しつづけられているなら、チップは管制下であると認識して、ESSは作動しない」
歩行信号を送出しつづけられているなら、チップは管制下であると認識して、ESSは作動しない」
最大解像度でキャプチャされた静止画像が徐々に画面に姿を現す。撮影されたのは一号機の背中にあたる部分だ。
「今回の一連の暴走はやっぱりテロリズムですよ。そうでなければ、俺達のJAが暴走するわけがない!」
小松の一言――そう、幾度の使徒戦を乗り越えてきたJAが、そう簡単に内的要因で暴走するはずはないのだ。
時田と加藤は納得する。
時田と加藤は納得する。
「そうか…有り得なくはない。むしろ、それなら確かにつじつまが合うな」
「じゃぁジャミング装置は…一号機に直接取り付けられているってことですか?」
「じゃぁジャミング装置は…一号機に直接取り付けられているってことですか?」
PCの画面をの静止画像を指差して小松が口を開く。
「それを今から探すんだ」
808 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:02:27 ID:???
日本の光学レンズ技術の集約させて設計されたJAの光学センサー群。その一つに超高解像度カメラがある。
小松が引き出した静止画像は、そのカメラを使って一号機の後部を撮影したものであった。
日本の光学レンズ技術の集約させて設計されたJAの光学センサー群。その一つに超高解像度カメラがある。
小松が引き出した静止画像は、そのカメラを使って一号機の後部を撮影したものであった。
「おそらく信号発信やジャミングの効率から考えて、ジャマーは一号機の上半身にとりつけられている可能性が高いでしょう」
「となると、……このあたりか、このあたり…あるいはここか?」
「制御棒に隠れているってこともありますしね」
「となると、……このあたりか、このあたり…あるいはここか?」
「制御棒に隠れているってこともありますしね」
時田が指した部分をさらにズームアップする。JAの排熱のせいで一部画像がややぼやけているものの、かなり詳細な画像だ。
「内部に取り付けられている可能性も否定はできないが、まず外郭部から探そう。PC一台に二人一組であたれ。
画像を分配する。とにかく怪しい影を探すんだ」
画像を分配する。とにかく怪しい影を探すんだ」
各PCにそれぞれ画像の部分部分が表示され、各職員たちでそれらを入念にチェックしていく。
とはいえ、この暗闇の中だ。液晶を長時間見つづけるのは目に堪える。
とはいえ、この暗闇の中だ。液晶を長時間見つづけるのは目に堪える。
「左腕腋下は特に怪しいのはないな…」「第3制御棒周り、…特になし」「くそ、頭部第二アンテナ周辺も特にはなし」
じんわりと汗ばむ中で、黙々と確認作業が続けられる。だが、チェックにチェックを重ねても怪しい影は見当たらない。
(やはりジャマーは内部に取り付けられているのか?)
時田に限らず誰もがそれを感じ始めていたときだった。
「…っ!?時田主任!」
一人の職員が声をあげた。
809 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:06:19 ID:???
声をあげた職員のもとへと駆け寄る時田たち。もはや二号機の関節疲労もかなり蓄積されている。時間はない。
声をあげた職員のもとへと駆け寄る時田たち。もはや二号機の関節疲労もかなり蓄積されている。時間はない。
「これ、これなんじゃないでしょうか!?」
彼が指差す先にあるのは、制御棒と制御棒の間の影にうっすらと見えるでっぱりのようなものだ。
「なんだこれは…確かにここには何もなかったはずだな…。小松っ!」
「分かってます!今二号機のズームレンズで補足中です」
「分かってます!今二号機のズームレンズで補足中です」
二号機のカメラで再度、先ほどの部分をズーム撮影する。
「データ転送開始。もう少しで来ます」
彼の言葉から数秒後、徐々に画面に指定部分の拡大写真画像が現れる。
そして、その中央。
そして、その中央。
「…これ、、、だな」
平べったい円形状のものが、JAの後部に張り付いているのが見える。
白く塗装されたそれは、ちょっと見ただけではよく分からないものだ。
白く塗装されたそれは、ちょっと見ただけではよく分からないものだ。
「よしっ!ジャマーかどうか分からんが、二号機でコイツをそぎ落とす!小松たちは制御準備、加藤は一号機のモニタリング再開!」
時田の指示が下ると、すぐさま皆がすでに慣れてきたノートPC前の床という配置につく。
「JA二号機、左手で一号機をおさえて、右手でコイツをとるぞ。左足前、重心を後方へ移動!」
二号機がやや後ろに体重をかけ、片手で一号機を抑える。
「左腕出力98%、損傷限界ギリギリです!」「体重移動完了、下半身前駆同系には問題なし!」
「よし!そのままあれを取り去るんだ。右手の出力は抑えろ!制御棒と排熱口に注意しろ!」
「よし!そのままあれを取り去るんだ。右手の出力は抑えろ!制御棒と排熱口に注意しろ!」
810 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:08:25 ID:???
二号機が、ゆっくりと、少しずつ、その右手を一号機の背中に伸ばしていく。
一号機を抑える左手は、いささか軋んだ悲鳴を上げている。
二号機が、ゆっくりと、少しずつ、その右手を一号機の背中に伸ばしていく。
一号機を抑える左手は、いささか軋んだ悲鳴を上げている。
「あと少しだ、焦らず慎重に…!」
思わず時田の手にも力が入る。
「あと、10、8、7、6、4、3、2、1、……」
大きすぎる指が、円形状の装置を、まるでかさぶたを取るように剥ぎ取る。
そして。
「…一号機からの信号受信を確認!」
およそ丸一日に渡る、長い戦いの終わりであった。
811 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:11:53 ID:???
NERV総司令官公務室。
あいも変わらず、公務室のわりに公務が少ない。
NERV総司令官公務室。
あいも変わらず、公務室のわりに公務が少ない。
「では、配電設備の破壊、管制プログラムの書き換えは第三者の仕業だと?」
冬月が中空に表示されているホログラムにたずねる。ホログラムに映っているのはもちろん加持リョウジだ。
『えぇ、当然日本政府が日重工の施設を破壊するとは考えにくいですしね』
「しかし、まさか碇と同じ事を考えるやつが、他に二組もいるとはな…」
「しかし、まさか碇と同じ事を考えるやつが、他に二組もいるとはな…」
そう、JA一号機にジャミング装置を取り付け、今回の実演会を失敗させること――これらはNERVによるものであった。
「管制プログラムの書き換えは恐らくNERV本部に対するテロ行為と見ていいだろう」
「もしバグのあるプログラムが第3新東京市の第二研究所で使われていたら、使徒殲滅作戦に支障をきたしただろうしな」
「あぁ。むしろ今回の事態で発覚したのは幸いと言える」
「もしバグのあるプログラムが第3新東京市の第二研究所で使われていたら、使徒殲滅作戦に支障をきたしただろうしな」
「あぁ。むしろ今回の事態で発覚したのは幸いと言える」
ゲンドウがサングラスを中指で持ち上げながら答える。
『しかし、司令、日本政府がそのような動きをしたとの情報は掴んでいませんが』
「何も日本政府だけが我々に対抗心を燃やしているわけではないよ」
「あぁ。戦自、NERV中国、ドイツ、アメリカ支部、あるいは他にもいるだろうな」
「何も日本政府だけが我々に対抗心を燃やしているわけではないよ」
「あぁ。戦自、NERV中国、ドイツ、アメリカ支部、あるいは他にもいるだろうな」
しかし、運悪く、他の組織も(その意図こそ不明だが)日重工に対し工作をしており、事態はゲンドウたちの予想外の事態へと展開した。
結局、今回の暴走はテロによるものと片付けられ、またJRシステムも成功したことから、JA両機の評価は下がることはなかった。
結局、今回の暴走はテロによるものと片付けられ、またJRシステムも成功したことから、JA両機の評価は下がることはなかった。
812 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/10/08(日) 16:18:29 ID:???
『すでにJAは政治的力学の中心にいる…そういうことですかね』
「気にすることではない。まもなく、君とともにエヴァ弐号機も本部の管轄となる。我々の目的はあくまで補完計画だ」
『分かっています。今のところ、こちらも予定通りです』
「そうだ。イレギュラーをも抱えたとして、死海文書の記述に影響はない」
『分かっています。すべてはシナリオ通りに…』
『すでにJAは政治的力学の中心にいる…そういうことですかね』
「気にすることではない。まもなく、君とともにエヴァ弐号機も本部の管轄となる。我々の目的はあくまで補完計画だ」
『分かっています。今のところ、こちらも予定通りです』
「そうだ。イレギュラーをも抱えたとして、死海文書の記述に影響はない」
『分かっています。すべてはシナリオ通りに…』
加持との通信が切れる。
「ときに碇」
「なんだ冬月」
「死海文書にはJAの記述は本当になかったのか?」
「…」
「なんだ冬月」
「死海文書にはJAの記述は本当になかったのか?」
「…」
JET ALONE 報告
EPISODE:7 実演会公試運転における暴走
EPISODE:7 実演会公試運転における暴走
JET ALONE 01 外的要因により暴走、損傷なし
JET ALONE 02 損傷なし
JET ALONE 02 損傷なし
第一研究所国立第三試験場 一部電力施設が破壊される
その他テロと思われる事象 停電/管制プログラムの書き換え
備考 : JET ALONE 02はジェット・リフレクス・システムの試運転に成功
日本語認識システムMAJI-SYSTEM for JA_Hi-SYS,JA2_Sf_SYS
(c)Reset Co.Ltd
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