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 サハラ砂漠。アフリカ大陸北部に広がるこの広大な砂漠の南端部に、「叛乱軍」は防衛線を張っていると予想される。 
 これを突破し、敵軍の領土に侵攻拠点を確保することが我が軍の任務である。 
 ――というのが、彼、アルフレッド連合軍大佐に課せられた任務の、おおよその内容であった。 
 補給の心配もなく、兵員の数も充分であり、士気も高い。それらの条件以前に、相手は後ろ盾もないアフリカだというのだからお笑いではないか。 
 「戦争」と呼べる物になるかどうかすら疑わしい。一方的な殺戮にならぬよう気を遣わねば、後世に汚名を残すことになるかもしれない。 
 空調の効いた指揮車のシートに沈み込み、考えながらうとうとと、いつしか彼は眠りについた。
  
 昨夜と変わらない、静かな夜だった。 
 突然、大きな衝撃と爆音がアルフレッドの五感を襲い、文字通り彼はシートから飛び起きた。 
 「何事か!」 
 「か、確認中であります!」 
 答えたのは彼の副官、レジナルド大尉だった。万事において優秀な士官だが、やや機転に欠けるのが玉に瑕である。 
 アルフレッドは思案した。敵の奇襲か、何らかのトラブルによる事故か。確実に現場指揮官である自分の責任が問われる後者よりは、作戦を立案した上層部の連中に押し付けが効く前者のほうがまだマシというものだ。 
 事故であれば失点回復の余地はほぼ無い物であるし、その場に居る者である程度の対処はし得る筈だ。ここは例え間違いであったとしても、奇襲と想定して迅速に行動するべきである。 
 聡明をもって鳴る連合軍大佐の判断は、ただ正しかったという一点でのみ報われることになる。 
 一分と待たず、部隊の前方で展開されている戦闘の映像が届き、指揮車の中央モニターに映し出された。 
 アルフレッドは目を疑い、次に自分の正気を疑った。ライトに照らされた夜空に舞う複数の人間――恐らく、人間だ。数は決して多くない。多く見積もっても十人かそこらだろう――が、手に持った棒状の兵器から光線のような物を放ち、連合軍の戦闘車両をダース単位で破壊する光景がそこにあった。
 
 「状況は!?状況を報告しろッ!」 
 大本営は一瞬にして大混乱に陥った。 
 卓上に投げ出した頭を抱え込んだまま動かない者、機器から伸びるマイクに向かって怒声を張り上げる者、スクリーンに視線を固定したまま手元のキーボードを忙しく打ち続ける者……。 
 西暦2211年、12月24日。英日米による共同作戦の第一陣が、敵の「未確認大量破壊兵器」によって全滅。 
-後に「沈黙のクリスマス・イヴ」と呼ばれるこの事件は、先進列強から成る連合軍を戦慄させ、作戦は一時中断が決定。 
+後に「沈黙のクリスマス・イヴ」と呼ばれるこの事件は、先進列強から成る連合軍を戦慄させ、アフリカ侵攻作戦の一時中断が決定された。 
 連合首脳部はこの事件を厳重に隠匿、各国から軍事・科学の専門家を召集し、この信じがたい事象の解答を探る緊急会議を開かせた。 
 
 「熱による破壊跡であることは確かですな」 
 「思うに、やはりミサイルの類ではないか?」 
 「その線は何度も検証したが、破壊の規模と精度から言って説明が付かない。また、現場からは放射能も検知されていない」 
 会議は幾日にも渡って続いたが、何ら進展を見せず、6日が経過すると、オカルトの分野からも研究者が招かれた。その中の一人が、魔法研究家の相沢祐一博士である。この時、36歳。 
 「まずは事実を容認して頂きたい。これは現代の科学では説明できない物です。いずれ、科学的に解明される日が来るかもしれませんが」 
 「ほう、何だと言うのかね?」 
 「魔法です」 
 沈黙が会議室を支配し、次に失笑が起こった。 
 「・・・ジャパニメーションの見過ぎではないのか?」 
 出席者の一人が茶化した。 
 「その反応も、今の段階では仕方がない。しかし、予算と人員を私に預けてくだされば、お集まりの皆様方の誰もが納得する答えを、数日中にご用意いたしましょう」 
 議長は悩んだ。明確な答えを出せないまま、これ以上時間を浪費する訳にはいかない。 
 日本人のオカルト・ドクターが何を根拠に大言を吐いているのかは解らぬが、藁にも縋りたい状況であることも確かだ。 
 数分の沈黙の後、大きくため息をついた議長の口から出た言葉は、 
 「宜しい、やってみたまえ」 
 の一言であった。
 
 
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