「十六聖天外伝 クリスマスの章 第一話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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「フン…?そーかい。もう“そんな時期”かよ…?」
その男の一言で、屈強な男達の動きが、凍りついた
ルディ
「よぅ…。俺の“車達”に火ィ…入れとけ…?」
祭りの始まりを予想させるには十分すぎる一言
屈強共の轟きが、白い大地に熱と震動をもたらす
そう、今年もやってきたのだ。あの日が…
<デスメタル様。今年は楽しいクリスマスになりそうですね>
「そうだね」
相変わらず暗く、じめじめした「おひさま荘」ではあるが、その部屋の主は
例年にない程、心が明るかった
その年のハロウィンを境に、部屋の主…デスメタルを取り巻く環境が
若干の変化を―彼女にとっては大きな変化を遂げたのが原因であろう
<デスメタル様、今日は門限等気になさらず、遠慮なく楽しんで来てくださいませ>
「それはできない。寝ていないとサンタさんがプレゼントを置けない」
滅多に笑わない彼女が、微笑んでいるのを見て
デスメタルが生まれて間もない頃から世話をしてきている
ヘヴィメタルの心は、ズキリと痛んだ
サンタクロース。12月24日、寝静まった子どもに夢を与える存在
だが、目の前の少女は恐らくこの12年の人生のうち
両親の死後、一度たりともそんな物を貰ったことがないのだ
何度もヘヴィメタルは、今は亡き彼女の両親に変わりプレゼントを買い
枕元に置こうとした。だが無理なのだ。余りにも見た目が人間ではない彼に
買い物など出来るはずがない。そもそも使役されるゴーレムである以上
主人の命がないと動けないのだ
毎年『別にプレゼントなんかいらない』と言いながら
その実、期待にあふれたデスメタルの眼を24日の夜、毎年ヘヴィメタルは見てきた
そして25日の朝、悲しそうな眼をしながら、何事も無かったかのように振る舞う彼女を
延々と見てきたのだ
そんな時、彼は決まってこう言って慰めるのだ
<デスメタル様、サンタクロースは正体をお隠しになられている貴女様に気付けないだけなのです
もしいつの日か、貴女様の正体を知る人が5人以上増えたら、きっとサンタクロースは来てくれますよ>
と。我ならが陳腐な、そして思えば酷いウソだと思う。デスメタルの正体を知る人間など
彼女の性格と立ち位置を考えると、そうそう増えようがないのだから…
ヘヴィメタルの心情等知るわけもなく、デスメタルは普段のローブ姿と違い
女の子らしい格好をして、元気よく部屋を飛び出した
今日は年に一度のクリスマスイヴ。そして恐らく彼女にとって初めてのクリスマスパーティーであった
お頼み申し上げますよ…Mrブロウ…パイソン…
主人に忠実なゴーレムは祈るような気持ちで
デスメタルを、聖天士ではなく普通の女の子としてパーティーに招待してくれた
二人の男の名を呟いていた
十六聖天外伝~クリスマスの章 第一話~