十六聖天外伝 失楽園の章 最終話

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今度ばかりはワンダーワールドにも打つ手がない。 デスメタルは常にワンダーワールドの一歩先に立っている。敗北は決定的であった だがそれでも、顎を打たれ、脳を揺すぶられても、それでも尚、ワンダーワールドは立ち上がった 「ふざける…な。お前達のような恵まれた奴に負けてたまるか…  私には何もない、何も、ない。何もない。名前すらない  生まれてから、身体を弄られる以外はずっとカプセルの中  やっと出れたと思ったら人殺しばかり。私には勝つことしか無い  戦って相手を殺す以外、ない。お前達みたいな、仲間とぬくぬくやってるようなのに  絶対負けられないのよ…!名前すら無い、私の唯一の存在意義まで、奪わせる訳にはいかないんだ!」 「それが最後の言葉?  私も、アリスも、大なり小なり辛い目を見てきた。いちいち語るつもりはないけど  自分だけが辛いだなんて、甘い戯言。さようなら」 デスメタルは、握りしめていた自分の指を順番に開いていく 俗に言う貫手である。かつて力を得るために世界中を回っていた折 中国の山で倒れそうなところを助けてくれた、イモ虫が教えてくれた技である 今のデスメタルの身体能力ならば、ワンダーワールドの胸を軽く貫く威力はあるであろう それが、一直線に振り下ろされようとした時 ワンダーワールドとデスメタルの間に割って入る影一つ 「ダメ、やめて!デスメタル…!」 「どいてアリス」 「ダメ、どかない!私は絶対どかない!」 「…どきなさい!」 「嫌だ!絶対どかない!どうしてもこの子を殺すなら、私を殺してからにして!」 「なん…で」 なんで、アリスが。 なんで自分を助ける?何度も貴女を殺そうとしたのに、なんで私を? 「そんなの決まってるじゃない。アリスはアナタのお姉ちゃんなんだから…!  だからデスメタル。デスメタルがこの子を傷つけるなら、アリスが貴女と戦うわ!」 デスメタルは口元に笑みを浮かべながら、閉じていた両目を開ける 涙を浮かべながらも、デスメタルを真っ直ぐに見据えたアリスの目 その目には一点の曇りもない 「いたじゃない。貴女にも」 「!!」 命をかけて自分を守ってくれる人が 決してその言葉は、声にだして出されなかったけど それでも、彼女が私にそう言ったのが分かった。私にもいた 家族は私にもいたのだ。それを自分から見ようとしなかった その事に気づいたワンダーワールドの目に浮かぶアリスは 憎むべき敵である前に、たった一人の姉妹。 ワンダーワールドは本当の意味で初めて泣いた 悲しくて、切なくて、苦しくて、嬉しくて、ただ只管に声をあげて泣いた (これで良かったんだよね) そう呟くデスメタルのローブがひび割れ、パラパラと崩れ落ちていく 否、黒いローブの下から、純白のローブが姿を現わしていた 彼女が仇を討つと決めた時から着用していた、血染めの黒いローブ それこそは、クリムゾンブロウとブラックパイソンからの最後の贈り物 クリスマスの夜に彼女が余りにも、陰気だからと送った白いローブであった 「上出来じゃねぇか」 「偉かったな…お前になら後を任せられるぜ。次郎と上手くやれよ」 崩れゆく不思議の世界の空を見上げるデスメタルの耳に 二度と聞こえることのない声が聞こえた気がした それが、幻聴だったのか、それとも… ただ一つわかっていることがある この場所こそは不思議の国。どんな不思議が起きてもおかしくはないのだ 「どうやら、我が主は目的を果たしたらしいな」 その光景を見て全てを悟った吸血皇は、本懐を遂げたデスメタルに向けて微笑みかける 不思議の世界が消え去り、現実世界に戻ったデスメタルの顔を アリスとワンダーワールドの最初の戦いで空いた穴から零れる朝日が照らした 今、夜は明けたのだ 十六聖天外伝 ~失楽園の章~  最終話

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