十六聖天外伝 雪月華の章 第九幕

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「それでは我が子よ、滞りなく任務を遂行することを願う」 ゲームマスターの言葉を背に受け、私は本部を後にする 我が子、か。 冗談ではない。ゲームマスター個人の事は尊敬もするし、慕ってもいる だが私はあの「我が子」という呼ばれ方が大嫌いだった あの方は親ではないし、私には父など居ない 私の親は― ◆ ―7年前 「そんな、何故でございますか!?何故、私と雪子が…」 父と母の言い争う声で目が覚めた その会話内容はすべて聞き取れた訳じゃなかったけど それでも、この一言だけは聞き取れた 「華京院の名を汚した売女め、家に置いてやっているだけでもありがたく思え」と 一か月前まで、ほんの一か月前まで父も母も、私も妹たちも笑顔で過ごせていたのに 何処で、こんな事になってしまったんだろう。何を間違ってしまったんだろう 私は枕に顔を押し付け、静かに泣いた 華京院に生まれた子供は、父方の能力と母方の能力 二つの系統の力に目覚める それ故に、華京院は妻となる人間の血筋や、その血に流れる異能の力等を徹底的に調べ その厳しい審査に合格した者だけを妻とする そこには元来、愛等はなく血の優秀さだけを良しとする、狂った何かが存在していた 私が成長するに従って家の者は「お家が始まって以来の才能だ」「次期家督は雪子しかおらぬ」と、私を褒めてくれ そして、私はその期待に応えるために一層の努力を続けた。本妻ではない母のためにも そんな中、哀れだったのは本妻の二人の娘である 特に月子は全くと言っていいほど能力が開花せず、疎んじられていた 一番下の華子は幸いながら、それなりに優れた資質を持っていたらしいが、それも私に比べれば霞むらしい 私は二人が家の者に冷たくされているのを見ていたから、誰よりも二人に優しい姉であろうと心掛けた 二人の妹も、私を姉として慕ってくれて、そこには母親は違うとはいえ確かな姉妹の絆があった そして姉妹の母である月華様も私に、大変よくしてくださる。私は幸せだった 私が歳を取るにつれて、周りの声が少し変わった 「母方の力に全く目覚める気配がない」「いずれ目覚める。あの才は惜しい」 私に対する評価が、少し変わってきたらしい 家を継ぐには父と母、二つの力に目覚めるのがしきたりとの事 母に対する風あたりが少し強くなってきていた 私は、少し焦りそれまで以上に修練を積み重ねた。それでも私は母方の力に目覚めることがなかった 華京院に嫁ぐ以上、恐らくは音に関係する力ではあるのだろうが、母はどんな系統の音の力を使うのだろう? 私は母に何度か訪ねてみたが、母は悲しそうな顔をして一言「ごめんね」と言うだけであった 私は二十歳になった。そしてそれと同時に母方の力に目覚めた それは少し予想と違っていたけど、遂に目覚めた これで母に対する風あたりも弱まる。私も家督を継げる その一心で、父はじめ一族の人にその力をお披露目した 「よくやったな、雪子」そう言いながら、厳格な父が微笑み私を撫ぜてくれ、私は眼を細める… そんな姿を脳裏に浮かべながら 「雪子、静を連れて今日から離れで暮らしなさい」 父の言葉は、私の想像とは大きく違っていた そして私と母に対する風あたりが常軌を逸し出したのだ 私だけならいい、母に辛く当る人間は許せなかった 側室という立場で辛い思い沢山した母、そんな母をこれ以上苦しめたくなかった 私は生まれて初めて、人を殺したいと思った そんな中、妹と月華様だけが私たちの味方だった。彼女たちのおかげで、私は人を殺さずに済んでいた ある日、母が吐血した 疲労や心労がたまっていたのだろう。医者を呼んでください、と言ったが無視された 母にその事を伝えて謝る。「ごめんなさい、私のせいで」と 母はそんな私を見て、涙を流し謝る 何故、母が謝るのだろうか。そんな母を見て私はますます悲しくなった 当主に、当主にさえなれれば…こんな暮らしは変えれるんだ 思えば私も少しおかしくなっていたのだろう。考えてみればこんな状況で 当主になれるはずがなかった。それでも私はそれを信じていた。信じ続けていた いつしか、一番下の妹である華子を、当主に推薦する声が多くなっていた事には気づいていたが 華子は「私なんかより、姉様の方が相応しいですから」と言ってくれる そして華子はいつものように、隠れて食糧や医療品等を届けてくれる 今思えば大した演技だ そんな言葉を素直に信じていた私が馬鹿だったのだ ある日、私と母の元に医者が来た 父が許してくれたんだ!助けてくれたんだ!と思った私は天にも昇る気分だったが 直後に地獄に突き落とされた 「当主 華京院華子様の名で参りました」 と医者は言った。その言葉の意味を理解した時 私は母を連れて家を出た ◆ 同士討ちを始めたその隙をついて、西園寺邸を脱出した私は笑いが止まらなかった 「ふふ…大した御当主様ね…?」 健気にもサイレントノイズを中和して、片膝をついていた華子の姿を浮かべると 笑いが止まらない。無様なヤツ!無様なヤツ!無様なヤツ!無様なヤツ!無様なヤツ! けどまだよ。まだ殺さない。地獄を味わうと良いのよ そんな私の耳に―チリン。という鈴の音が飛び込んでくる 「雪子姉さん。もうやめて」 「あら…月子さん。全く気配が感じなかったわ。大したものね?」 「姉さん」 目の前に立っていたのは、私のもう一人の妹である月子だった 私はこの妹はさほど嫌いではない。意外とおとなしく控え目なこの妹の事はむしろ好きだった そんな妹が悲しそうな顔で私を見ていたので、私は少し胸が痛くなり、出来るだけ優しく妹に聞き返した 「ところでやめるって何をかしら?」 「華を、仲間をこれ以上傷つけるのはやめて」 「華…?本当にあの子が大事なのね、月子さん。わかったわ、その気持ち」 そう。貴女は優しいのね。姉妹が傷つけあうのは嫌なのね だから華子とも争ってほしくないのね。よく、わかったわ 「姉さん…」 「“気持ち”は理解したわ。けど…」 「辞める訳ァ無ェーだろうがよォー!?あの餓鬼をグシャグシャにする事だけが私の生きる目的なんだからよォー!!」 「雪子姉さん…!貴女は…」 「ふふふ…邪魔するなら貴女も潰すわよ、月子さん?」 月子がゆっくりと簪を構えたのが眼にして、悟った。そう…やる気なのね 貴女は私と同じで妹に当主を追われた仲間のはずなのに、あの子の味方をするのね 華子は何でも持っている。私の欲しかったものを全て私から奪った 上等だ…ぶち殺してやる。邪魔するっていうならアンタの肉片を華子の家の前ににバラ捲いてやる… 食事に混入してやる、あの餓鬼のマンションの貯水タンクにアンタの死骸を詰め込んでやる… 私はその絵を想像して、興奮が抑えきれなくなった 十六聖天外伝~雪月華の章~第九幕 クリムゾンブロウ曰く「女って何歳から死んでいいと思う?」 ブラックパイソン曰く「姫がいなけりゃ25越えたら死ねって言えるんだけどな…次の議題は決まったな」

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