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それはあまりにも巨大なおっぱいだった。
それを脂肪の塊と断ずるにはアリスには経験が足りなかった。
愕然となり、ついまじまじと見てしまう。
これまで何度か服の上から見たことはあったが生は初めてである。
『どうせブラで寄せて上げてその上パットを仕込んでいるに違いない。きっとそうだ。間違いない』とこれまで自分に言い聞かせてきた。
だが服というくびきから放れたその乳は一回りも二回りも大きく見える。
ここが公衆浴場だということすら忘れ、放心状態に陥ったアリスにできることはただひたすらに自分を支えるだけなのだ。
(そうだ、こんなの数年もすれば垂れて逆にみずぼらしくなるだけだ)
なのに何故だろう。この目から溢れるものは。
「あれれ?どうしたんですかアリスちゃん?目にゴミでも入ったの?」
優しげに問い掛けてくるのがまた憎らしい。
(五月蝿い乳魔人。ゴミはお前だ)
「あはは、はいちょっと目にゴミが…」
ああ、言い訳をしている自分のなんと惨めなことか。
目の前で揺れる二つの球体が恨めしい。
(ああ、成る程)
ここに至って彼女は気づく。
(つまりは……これが敗北なのだ)
十六聖天異聞「少女と本屋」