闇伝 外道対外道17

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弾ける光球から現れたその姿は、人々からすれば、白き鋼の鎧に太陽の如く光り輝く雄雄しき翼を携えた、 まさしく混迷の大地に神が遣わした太陽の戦神そのものであった。 「・・・すげぇ、なんだ、ありゃ・・・? つかあれランスロットじゃね?」 「お前の言うことは偶によく分からん」 「あれって・・・ロボット? でも、他のに比べると随分小さい・・・」 「でっかけりゃいいってもんじゃない! っておねーちゃんがいってるの」 「ええ・・・それは、まごう事なき真理真実ね」 「何の話をしている? ともかく、もう少し逃げたほうがいいだろう。幸い敵の注意はあれに向いている」 「だな、後はアレに任せるとするか」 天より舞い降りた戦神の中では軽い痴話喧嘩が発生していたが、それもひとまず沈静化。 「でだ麟音、大丈夫か?」 「ええ、もう大丈夫。それよりも、この状況は」 「どう見ても、やったのはあの黒いロボどもだな。どう見てもMMMICSじゃないし、マシンゴーレムの類でも  なさそうだ。ソーレッタ、生態反応は?」 <むむむむ・・・うむ、わかったのです! コアチップCPUからの命令伝達と処理解析速度向上のために  おそらくはクローニングで大量生産した脳神経組織を使ってはいますが、定義上は無人です!> 「ちっ、ドイツ語読みの17・18じゃあるまいに、どんな糞野郎が考えた制御法だっての。そりゃ確かに  人の頭脳を100%使って並列化すりゃCPUにゃ勝ち目は無いとはいえ、だったら作って混ぜりゃいいだろって」 「汚らわしいにも程があります。宗次君、やってしまいましょう」 「だな。どうやら向こうもやる気みたいだし・・・学園に飛んでた頃以来か、MMMICS以外と戦うってのは。  だがもういい加減ゴーレムとかドラゴンの相手は勘弁してくれよなぁ!」 光の翼をはためかせ、鋼鉄の戦神が黒き巨人へと飛翔する。 <突然何事かと思ったけれど、そんな精々6m程度のロボットがいきがった程度で、何が出来ようと  いうのかしらねぇ? やってしまいなさいジュ・ゲイム!> ジュラフマーより高らかに響くファウストの声に従い、ジュ・ゲイムの一機が白いロボットへ立ち向か 「遅い!」 白き戦神は輝く光の矢と化し天を翔け、腰に据えた翼状刀を抜き放ち、ジュ・ゲイムを一閃の下に両断する。 「まずは一体! ・・・つか、どんだけヤワい装甲使ってんだ? 合金トイよりヤワいって・・・そうか、  さすがに1000年前じゃ重粒子合金系やナノメタルマテリアルの類は作れないのか」 <な、い、一撃ですって!? ・・・た、たかだか一機倒したくらいでいい気にならないことね!  それにその速度、どうやら音速以上のようだけれど、どこまでソッチの体が持つかしらねぇ?> ファウストFはジュ・ゲイムの群れを散発的に襲わせることで、パイロットの気力と体力を削ぐ戦術に出る。 だが、宗次にはその程度の戦略など意味がない、むしろチャージのためには好都合。 デカブツの中の人には残念なようだが、このディヴァイザーはマッハ5を想定して機体強度を設計しているし、 コクピットブロックの慣性制御機構もそれに準じたものを備えている。 それにこちとら「瞬転」のESP持ち、速さに関しては生涯一度も苦になるような場面に出くわしたことはない。 さて、そいじゃいい具合にあったまってきたし、そろそろ一発かましてやりますかね・・・ 「ソーレッタ、WBDチャージ効率算出!」 <はいな! WBD充填量、問題ナッシングです!> 「よっしゃ、やるか!」 両腰の翼状刀を手にし連結、腕部グラビティワイヤーのアンカーに固定し、投擲の要領で勢い良く振り回す! 唸りを上げて風を切る刃はやがて「波動」の停滞により固着された重力子と、それに引き寄せられた 光子の収束により眩い輝きを放ち始める! 「光牙の舞、烈光の刃、避けられるものなら避けてみな! ウィング・ブレイダー・ディバイド!!」 高速旋廻する光纏う刃が、暗雲を切り裂きジュ・ゲイムの円環の群れに食いつき、そのまま一気に円周上の 機体群を爆砕し突き進む! 次々に爆散するジュ・ゲイムを遠目に見つつ、 <そ、そんな馬鹿なことが・・・30機のジュ・ゲイムがこんな一瞬で・・・!?> ファウストは驚愕する。 自分が作り上げた現在のボディでもあるこのジュラフマーもそうだが、ジュ・ゲイムも、単機であらゆる任務を 遂行するために知りうる限り最高水準の知識と技術をつぎ込んで完成させた逸品であることに違いは無い。 そんな我が手足となるべき存在が、かくも容易く破壊されるものなのか・・・!? 否、そんなことが断じてあるはずがない! <行きなさいジュ・ゲイム! あの喧しい虫を叩き潰してやりなさい!> 近接戦で両断あるいは赤熱爆砕された5機、今の攻撃で30機をものの10分足らずで失い、残る15機の ジュ・ゲイムに命じるより他無い。ジュ・ゲイムで時間を稼いで、収束荷電粒子砲でこの世界から跡形もなく 消し去ってやる・・・! 「ソーレッタ、残りは?」 <小さいほうが15機と、あとデカいのが荷電粒子砲のスタンバイを始めてるようですよ?> 「荷電粒子砲? 今更あんな500年前にフォトンブラスターに取って代わられた骨董品で何を、って  ココじゃ最新以上の武器なのか・・・とはいえ撃たれたら俺らは無傷でも地表面が面倒になるな」 「それに、あの巨体は普通に倒したんじゃ、落下時点で被害を極小にするのは難しいわ。小さいほうなら  必要以上にダメージを与えて破壊するかレッド・インパクターでどうにかなったけれど」 「だよなぁ・・・なぁソーレッタ、あのデカブツ確実に消すにゃ、やっぱ70は要るよな?」 <アーカイバのSGN射出ログとシミュレート、敵さんの推定質量からすると、やっぱり70は欲しいですねぇ> 「となると、専念すべきか・・・すまん麟音、ユーハブコントロール」 「畏まりまして。アイハブコントロール」 「メインシートはSGNチャージモードへ移行。ESP SEED、Break Out!」 宗次の全身を金属繊維と特殊金属で出来たメタルフルコートが被い、右腕も特殊金属製のガンドレットが 装着される。それと共にSGSドライブ及びHSLの臨界駆動パラメータ値やESP充填度パラメータ等が表示された ホロパネルが多数展開される。 「私の役目はあくまでも時間稼ぎにてございますれば。麒宮 麟音、参ります。麒宮流薙刀術の冴え、  遙かに古の世にも知らしめて差し上げましょう」 ジュ・ゲイムを大量に爆砕し帰還した翼状刀は、収納された柄が伸びてそのまま双刃薙刀となる。 SGSドライブが唸りを上げ、HSLが周囲に拡散する魔素を吸い上げ始める。 <推力が落ちた・・・? ふふ、どうやらさっきので著しくエネルギーを消耗してしまったようね?  ですが残念、こちらにはまだまだ駒はあるのよ!> 「品性の無い人と話すほど暇ではありませんので、静かにしていていただけますでしょうか」 さらりと言ってのける麟音はディヴァイザーを駆り、流麗乱舞。 ESP技能により機体性能を100%発揮できる宗次と違いあくまでもチャージモード時の防衛用でしかないが、 元々の機動性能の高さや柔軟性は、麒宮流薙刀術を扱うには申し分の無いレベルである。 さらに麟音は薙刀を使わせたら文字通り右に出るものは居ない、史上最年少免許皆伝の名誉を受けた逸材。 となれば、二人にとっては時代遅れのジュ・ゲイムに遅れをとることなどありはしない。 「せぇい! まずは一体! ・・・宗次君、どの程度時間を稼げばよろしくて?」 「70まで上げるとなると、そうだな、5分くれ!」 「心得ました。5分で14体、何とかなるやも知れませんわね」 麟音はディヴァイザーをジュ・ゲイムの群れに向かわせる。 その戦い、舞うが如し。ジュ・ゲイムはディヴァイザーに触れることすら叶わず、次々と爆砕する。 「申し訳ございません、私では下に被害が出ないように倒すのは難しいので、せめて人の居ないところに」 人気の無い場所を目視確認した上で、そこにジュ・ゲイムの残骸を叩き落していく。 <SGSドライブ及びHSLの臨界突破値180、グラビトロンチャンバー1への光子充填量250を突破。放射口開放、  余剰光重力のスラスター及びPMWへの転換を開始します> 「やっとこさ50、もうちょい頼む!」 「お任せあれ!」 背部ウィングの光がさらに光度を増し、煌きが戦場を駆け回る。 「・・・おいおい、MAPWに気力連動特殊機能持ちか? 大概だなありゃ」 「言ってる意味はよく分からんが、とりあえず凄い事なのだと言う認識で居ればいいわけだな」 「にしても、最後の最後、一番オイシそうな出番盗られちまったなぁ・・・」 既に蚊帳の外と化した翠や苓達は、戦場を離れつつ天上大決戦を見守る。 <ジュ・ゲイム、全滅・・・!? まぁいいわ、時間稼ぎは出来たわ!> ジュラフマーの腹部シャッターが開き、複数設置された砲門が中央部に集約される。 <ざぁんねぇん! 遅かったようねぇ! さぁ、これでも喰らいなさい!> 意気揚々と砲口を白いカトンボへと向け、高らかに勝利を確信し吼えるジュラフマー。 「ソーレッタ、蓄電量から推定照射距離、照射時間の算出と弾いて一番被害の出ない角度を算出!」 <あいあい!> <さぁ、消し飛びなさぁい! 収束荷電粒子砲、発射ぁ!> 現行世界の化学工学では明らかにオーバースペックな、必殺とも言える破壊の閃光が、今放たれる! 「麟音、アイハブ! それが・・・どうしたぁあああああああああああああああ!!!!!!!!」 排気口とPMWから黄金の閃光を迸らせ、翻る翼が破壊の閃光を打ち据える! 「うぉおおおおおおおおおおお! っらっしゃあああああああああああああ!!!!!」 黄金色の翼に激突した荷電粒子砲は、その牙を何にも突き立てることなく、電荷の自然放電と拡散により 一切の用途と果たすことなく消滅する。 <そん、な、ばかな・・・荷電粒子砲を弾き飛ばすなんてそんな> 「時代遅れの骨董品ごときで、俺達を如何にか出来ると思うなよ!」 <それなら、圧倒的かつ絶対的な質量差で押し潰してやるわぁあああ!!!> 推力100%で驀進するジュラフマーと、それを静止し待ち受けるディヴァイザー。 推進の勢いに、300tを超える質量が乗り、ジュラフマーの拳が発揮する威力は、直撃すれば荷電粒子砲と 遜色ないだけの破壊力を秘めている。 <この一番単純で粗暴ながらも確かな破壊力、その身でとくと味わい> 「んなもん効くかよ!」 全高以上の大きさの拳の接近を、タイミングを合わせた払い腕で弾き飛ばす! <ばかなぁあああああああああ!? そんな細い腕でそんな、ありえない!?> 「大図書館の隅っこにあった本で覚えたスキルだが、まさかまた役に立つとはなぁ!」 腐女子の巣窟と化していた大図書館の片隅で、とある学園生の父親にしてあの世界で最も凶暴かつ恐ろしい 魔女王の旦那が執筆したらしい学術論文やら、半分ライトノベル気分で読んだ歴史書やら、意味もなく 読んでみた魔道書やらと一緒にあった、「私のいい考え百選」とかいう本に載っていたので冗談半分で 頑張ってみたらホントにどうにかなってしまった「大きさの概念を棄てる」スキル。 ドラグガドリウムとの戦いで大いに役立ったスキルだが、今またこうして役立てる機会が来るとは。 「中の人はデフォでサイズ差補正無視持ちか・・・」 「またよくわかんない単語が出てきた・・・バカ兄、ゲームのしすぎじゃない?」 至極分かりやすい単語も、知らない人からすれば何のこっちゃである。 「さて、そろそろ終わりにしようか! SGS及びHSLオーバードライブ!」 全身から黄金の闘気を巻き上げるが如くに光子を噴き放ち、瞬間、ジュラフマーに肉迫、 「おおおおおぉぉおおおおおぉぉ!!!!!」 ディヴァイザーの拳と蹴りがジュラフマーを打ちのめし、 「次はこいつだ!」 翼状刀を両手に構え、蹴り飛ばしたジュラフマーに追いつき、その全身を駆け巡り切り刻み、 「連結ランサーモード、麟音、ユーハブ!」 「アイハブ! はぁぁああああああああ!!!」 切り上げ上空に叩き上げた巨躯を薙刀が織り成す流星の舞が襲い、 「ウィンガーモードへ! ユーハブ!」 「アイハブ! WBDと同時に脚部パイルバンカースタンバイ、地表面に向けてアンカー射出!」 上空高く、満身創痍のジュラフマーへ倒滅の光刃が迫ると同時に、ディヴァイザーは地上へ急降下する! 「対ショック備え! 麟音、舌噛むなよ!」 麟音が頷いた数カンマ秒後、爆音と共に地上へ降り立つ。 <な、ぐ、一体、何を、するつもり・・・!?> ロールアウトしてからまだ3時間と経過していない、なのになぜこの至高にして究極の機械神ジュラフマーが これほどまでに損傷しなければならない!? 既に損耗度は70%を越え、稼動限界損耗を上回っている。宙に浮いていなければ自重で潰れていても おかしくは無いレベルにまでこの機体を損壊させられるなど、あっていいことではない! 何故だ! 「知識」の宝珠から引き出したデステクノと世界各地の最高水準の頭脳を結集、あるいは知識のみ 吸い出させて結集させた現在人類の英知の全てをつぎ込んだ筈のこのジュラフマーが、何をどうしたら あんなカトンボ風情にこれほどまでに破壊されねばならない!? <こちらもただやられていたわけではなくってよ! 荷電粒子ほ> 「サイキック、ウェイィィィィィブ!!!! ってなもんだぁ!」 両腕にインパクターガンドレットを展開、敵を拘束する「波動」のESPを打ち込まれたことで、ジュラフマーは 完全にその行動を封じられる。 「ソーレッタ、標的の高度算出! 5000越えてるかどうかだけでいい!」 <あいあい! 現在敵さんの高度は5380±10、黒雲突き抜けなおも上昇中!> 「オーライ、んじゃ、対ショック閃光防御! アイカメラシャッターON、照準、トリガー!」 <いえっさ! 準備万端整いまして!> 「フォトングラムシリンダー展開、パベルノン・クラスター開放、Gチャンバー1射出シークエンスへ移行!  旅立て、星生まれ出ずる輝きと無限の虚空の彼方へ!  光子超重力爆砕太陽砲(ソル・グラヴィトン・ノヴァ)、ぶちかませぇぇぇぇえええええええええ!!!」 宗次の雄叫びと共に引き絞られたトリガーに合わせ、胸部から漆黒のエネルギー体が極超音速で、 ジュラフマー目掛け一直線に撃ち放たれる! <そんな単発弾ごとき・・・な、なにこのエネルギー量、まるで> ファウストF、ならびにジュラフマーの思考はそこで絶える。 極大音の爆砕の中にジュラフマーは完全無欠なまでに破壊され、光子の高濃度圧縮と衝撃破砕による 地を焼き尽くすほどの熱量と直視した者の眼を焼き尽くす閃光、耳を突き抜ける爆砕音、その全ては 一拍明けて空間を割り開かれた虚空の顎へ飲み込まれ・・・一陣の烈風のみを残し消え去る。 烈風は立ち上る戦火を吹き消し、黒雲を吹き飛ばす。 黒雲吹き去り再び開かれた空。 動乱の終結を祝福するかのごとく、ベルリンの町を、赤々と曙光が照らしていた。 「ふぅ・・・ひとまず終った、か。さてどうすっか」 <ひとまず極東共栄圏諸島政府、じゃなかったこの時代だとニッポン、ですかね? そこに行くのは  どうでしょう? この時代ならマスターが良く行く神田の特別閉鎖区も普通の町並みですよ!> 「そういえば、この時代には2937年の対火星動乱で沈没したオキナワ島は健在で、G兵器の直撃の余波で  閉鎖された地域も、極普通の街なのよね?」 「ま、それに俺らが生まれる1100年前、でないかも知れんが、とりあえずは故郷のようなもんだ。ひとまず  行ってみることにしようか。ソーレッタ、各所チェック、クールダウンまであとどの程度掛かる?」 <あと580秒といったところです。とりあえず普通に稼動するのであれば問題ないのですよ~> 「よし、じゃ、そろそろ行くか。長居は無用、変に絡まれるわけにもいかんしな」 ディヴァイザーは再び飛翔、瞬く間に暁紅の中へその姿を消すのであった。 人々は、閃光と共に現れ、太陽の如き輝き纏い悪鬼を打ち倒したその鋼の戦神を、神が遣わした 神聖なる機動戦神、Divine Weapon と呼び語り継いだと言う。

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