十六聖天外伝 残光 ~第五章 アリス・ザ・ワンダーワールド四章前編~

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「沙羅双樹の華が散った、か…」 最後の100円硬貨は無情にも、鋼鉄の箱に飲み込まれていった。何の実りもなく。 ビッグバンの衝撃に匹敵する程のダメージを受け、がっくりと肩を落としながら 次郎は、背後からその様子を見ていた少女達に向き直る 「次郎のバカー。サラとデスメタルが可哀想じゃない!」 『…別にいい』 「気にしないでください」 ウサギのぬいぐるみを抱きながら、不甲斐ない次郎を責めるアリス 小刻みに震えながら、どんな闇よりも暗いオーラを放っているデスメタル 一見、笑顔に見えるも肩を震わせ、よく見ると瞳を潤ませている沙羅 何とも居た堪れない気持ちになり、どうしたものかなと思案していると 次郎が先ほどまでプレイしていたクレーンゲームの台に、若いカップルが硬貨を投入し あっさりと人形をゲットして去っていく それが引き金となり、小刻みに震えていた黒い塊から嗚咽が漏れだした ≪うぅ…ック…ヒック…うあぁ…≫ 「デスメタル、泣かないで、ね?」 「あ、よく見るとこの人形可愛くないなァ。アリスやっぱりコレいらない!デスメタルにあ げるね!」 ≪い゛らな゛い゛…それは…アリスのぬいぐるみ…!≫ 「だって可愛くないし!本当にいらないんだよー!」 「次郎様が取ってくれたのに可愛くないわけがないじゃない…!」 「だって…ねぇ可愛くないよね!次郎!」 頑張って取ったものを可愛くないとか、いらないとか言われて次郎は少し傷ついた 大体そんな可愛くないものに俺の生活費は飲まれたのか…?いや、デスメタルを慰めるため の方便という事は理解している 彼は十六聖天2位。常人なら致命を免れないダメージを負いつつも、それを顔に出す事はな い 「うーん。なぁデスメタル。アリスもこう言ってるんだから貰ってやったらどうだ?」 ≪…いいの?≫ 「…うん、いいよ!はい、デスメタル」 ≪ありが…と…ぅ≫ デスメタルにぬいぐるみを手渡そうとするアリス。だがその手がぬいぐるみから外れない 「アレ…おかしいなぁ。手が外れないよ。チョット待ってね。アレ…アレ…」 ん?おかしいな、と思いアリスを上から見下ろすと、アリスの足もとに水滴がポタポタと落 ちていた 「う…ぅん…おかしいな。アレ…うぅ…離れないよ、離れないよ次郎…」 こっちを振り返るアリスの顔は、涙と鼻水でグシャグシャだった そしてさらに背後からも嗚咽が聞こえる。本当はほしいのを我慢していた沙羅にも限界が訪 れたのだ (これが十六聖天関係者が三位一体になって放つ影の闘法…なんて威力だ…) 死ぬか。死ぬか次郎 「次郎さん、ご無沙汰しています」 「あんたは…」 クリムゾンブロウ曰く「痛いけど鼻毛抜く手がとまらねぇ」 ブラックパイソン曰く「長いのが出てくると少し幸せな気持ちになる」 十六聖伝外伝 残光 ~第五章 アリス・ザ・ワンダーワールド四章前編~

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