十六聖天外伝 残光 ~第五章 アリス・ザ・ワンダーワールド五章中編~

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宮本武蔵と佐々木小次郎…岩本虎眼と伊良子清玄…歴史上、達人であれば達人であるほど その勝負はあっけなく、一瞬の迎合で決着がつくものである 今ここで繰り広げられた戦いも、まさに「それ」であった 「無念…じゃ…」 エクスカリバーの細く、小さな身体が地に沈む 彼女の周りに広がる血溜まりから、彼女が戦闘不能になったのは誰の目にも明らかだった 「弱いとは言うまい。だが所詮、主なき聖剣ではこの程度、か。哀れだな」 <あらジーク。もう良いの?この子殺さなくても> 「構わん。無駄足だったな。アレクサーが健在なれば楽しめたのであろうが」 <そっか。けどアタシもその方が嬉しいかな。出来れば生き延びな、ね?エクスカリバー> 今は亡き宿敵を思い浮かべ、ジークフリードは深紅のマントを翻し、その場に背を向ける せめてアレクサーを倒したという男がいれば、楽しめたであろうに 「ハ、ハン!流石はジークフリード。十大聖天の2位だけはある!素晴らしいよ!お前なん か彼の前ではゴミさ!」 (くやしいのぅ…すまん。ジロウ…。アレクサー、ワシもお主の居る所に行けそうじゃ) あー、じゃがアレクサーは高知を破壊しとるし、自分とは天国と地獄で離ればなれじゃのう 、とはいえワシも剣として 数えきれぬ程人を斬っとるから、同じ地獄かのう…エクスカリバーは薄れゆく意識の中でそ んな事を考えていた そんな薄れ行く彼女の意識を、狂気を孕んだ声が現世にと薙ぎ止める 「おっと、まだ死ぬなよエクスカリバー!君も一人じゃさびしいよねぇ!だから!だからァ ー!こいつらも連れていけばいい!」 「…!」 同じ「名前」を持つ姉や妹には、その能力、性格共に小馬鹿にされ、見下され そんなフラストレーションを「名前」のない妹で発散させてきたレミー そんな歪みきったレミーではあるが、馬鹿ではない。先ほどジークフリードが来なければ、 自分が呆気なく斃されていた事を内心自覚している 結局一人では勝てないのか、妹を盾にしないと勝てないのか。彼の劣等感は彼をさらなる狂 気に走らせていた レミーの狂笑で意識を取り戻したエクスカリバーの前で、残ったナンバーズが順番に破裂し ていく 「どうだい、僕のフロッグ・ザ・フットマン…!あの忌々しい女の欠片だけど見事だろう! ?超音波で内部からボンッ!」 一人、また一人で破裂していき、ナンバーズの血が地面に広がるアリスの血と混じり合う 常人なら辺りに充満する、血や内臓、糞便の臭いで良くて失神、悪くすれば精神に異常をき たすであろう そんな地獄絵図に耐えかねてか、ジークフリードを持つ魔剣「グラム」が抗議の声をマスタ ーにあげる <ねーねー、ジーク。いいのぉ?ちょっと趣味悪くなぃ?> 「気に入らん。が、グラムよ、構うな」 そう言うジークフリード、彼の拳は震えていたのを確認したのは 果たしてその場にいたであろうか 「やめぃ…!やめろ…お願いじゃ、もうやめてくれ…!」 「聞こえないなァ…。やめてください、だろう?」 「…やめて…くだ…」 「きこえないよォ!」 敵とは言え、幼い子供。しかも恐らくは道具として利用されていただけの子供 持ち主によって能力の性質を変える聖剣エクスカリバー そんな彼女が、最初のマスターであるアーサー王の「治癒」能力を未だに維持しているのは 彼女が高潔かつ、優しい性格だったからに違いない。そんな彼女には、これ以上この光景を 見る事は我慢できなかった だが、そんなエクスカリバーを嘲笑、降り注ぐ血と涙で濡れた彼女の顔を持ち上げたレミー は エクスカリバーの頭を地面に叩きつけた 「綺麗な押し花の出来上がりだァー!」 だが、エクスカリバーの頭と地面が衝突した音が聞こえない。 そればかりか、何故か腕が軽い レミーの腕は肩から先が綺麗に切断されていた 「ふぅ…間に合った。大丈夫ですか?」 <久しいな…いや。始めましてかな、姉上> エクスカリバーを抱きかかえた騎士がそこに立っていた クリムゾンブロウ曰く「ヘレンの単行本が出るって」 ブラックパイソン曰く「世界は幸せに包まれてる」 十六聖伝外伝 残光 ~ アリス・ザ・ワンダーワールド五章中編~

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