ガーリィトーク&チョコレート 第一夜

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「ようやく、三人揃った…」 小楢の大円卓を撫でた呟きは、愛らしくも何処か冷たい少女のもの ビスクドールじみた静かな美貌を白妙のドレスで飾った声の主、その名はアリス 十六聖天の五位にして、かつて十聖天に造られた救世の聖女 彼女は豊かな暁光色の髪を掻き上げると、切れ長なアイスブルーの瞳を卓の右奥に向ける アリスの視線の先に在るのは、眩しいほどの議場の最中で不条理にわだかまる深淵の闇 否、それは闇に見紛うほどの黒いローブで身を包んだ矮躯の怪人、デスメタル 「……」 聖天でありながら死人を操る外法使い、その黒衣の影に囁きが木霊する 怪人は爛々と燃える金銀妖眼で自身の右を見定めた 丁度アリスとデスメタルの席と三角を描く位置、二人の眼差しを受けたのは第三の人物 聖女と怪人を前にするのは陽炎を思わせる儚げな少女 科学と錬金術の融合たる聖天の戦闘服を纏う番外位、沙羅であった 前髪に隠されて表情こそ読めないが、彼女の様子は遙か格上の相手と対峙しているとは思えぬ程に落ち着いている 「あああああのっ、勤務時間中なので出来れば簡単なご用件をお願いひましゅ…じゃない、お願いしまふ! …で、でも無理なら良いです長くても大丈夫…たぶんきっと」 訂正、どうやら沙羅は単に緊張のあまり動けないだけだったようだ もっとも極度の人見知りである彼女は、常に誰にでもこのような態度なのだが パニック寸前の沙羅に溜息をひとつこぼすと、アリスは改めて二人に向き直す 「…二人に、大事な話がある とても大事な話が…」 これが後に一人の哀れな犠牲者を生んだ悲しい事件 その発端であった事を 今は誰ひとり知る由も無い (第二夜に続く)

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