『沙羅と姉様』

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「ただいまぁー……」 鉄錆びた玄関ドアから漏れ出した乾いた空気に、寂しげな少女の声が溶けて消える 「お帰りなさい沙羅 意外と早かったですわね」 「わひゃあっ!? ……も、もう姉様ったら ビックリさせないで下さいな」 背後から掛けられた声に沙羅は小さく跳ね、大げさに驚きを表す くすくす、と品の良い笑いと共に現れたのは、彼女の双子の姉 否、性格には双子の姉を模した、沙羅自身の術式だ 「ふふっ、毎日独りで挨拶も寂しいと思って どうかしら、偶には返事があるのも良いものでしょう?」 するりと沙羅の横をすり抜けると、一足先に暗い廊下に電灯を点ける姉 誰かに触れられる肉体を持たない姉にとって、玄関の沙羅など居ないも同然 胸を刺す痛みを堪えて、沙羅は微笑みの表情を作る 「はい、とっても素敵ですっ ……やっぱり、家族って良いものですねー」 「あぁん沙羅ったら、今頃わたくしの素晴らしさに気づいたんですのねっ でも許すわ! 何故なら姉様は貴女を愛しているからー 」 半透明の体で妹を抱きしめる 力の強さは想いの強さゆえなのだろうか それにしても…… 「ちょっ、ちょっと苦しいです姉様…… サイコキネシス強すぎですってばー」 「あらあら、ふふっ ゴメンね沙羅 ……でも、これも姉妹の愛情表現ですわ 我慢がまん」 「そ、そんな無茶なぁー……」 腕を背中に這わせ、ゆっくりと耳に唇を近づけていく 「……ぺろんっ」 「ふやぁっ……! ね、姉様っ もう、悪ふざけがすぎますよー」 はむはむと耳たぶを甘噛みされなざら、沙羅が小さく抗議の声を上げる 姉はもちろん無視しつつ、しかし表情をわずかに曇らせた 「本当、沙羅が元気になってくれて良かった ……ここに来た始めの頃なんて、言葉も話せなかったのに まぁ、それがあの剣道バカのお陰だっていうのが少々、いえかなり癪に障りますけど!」 「駄目ーっ、次郎様の悪口禁止ー! いくら姉様でもそれは駄目です ノーです 聞いてくれないと怒っちゃいますよー!」 頬を膨らませて怒る妹にゴメンゴメンと謝って、ふわふわの髪を撫でてあげる 「そんな顔しないの 明日はその『次郎様』とデートなんでしょう? 怒りジワが付いた顔じゃ嫌われちゃいますわよ」 「でででででっ、デートだなんて……っ そんな、ほら……アリスちゃんやデスメタルさんも一緒ですし 次郎様も特別に愛とか恋 とか…… でも、やっぱりどちらかと言えば……で、デートな気もしなくは無いんじゃないかなー、とか」 顔を真っ赤にして狼狽える沙羅 あぁ、なんて愛らしい! これが妹萌えというものですの? 悶絶しつつも、心の「いつか死なすリスト」に優柔不断朴念仁剣道バカと書いておく 油性の太ペンで 「では、今夜は姉様が可愛い妹の為にデートのABCを教えてさしあげますわ」 「えっ、姉様はで、デートの経験があるんですかー!?」 「もちろん、ありませんわ! ……でも、逢引きだって人と人との関係ですもの、相手を不快にさせない為の最低限の礼節がありますわ 例えば、『ベソをかいて殿方を困らせない』とか」 「はぅ……っ」 愛しくか弱い妹を、胸元で優しく包む 「安心なさいな 貴女の姉様は、何時だって貴女の側にいて、大切な妹を守っているのですから」 その夜、オンボロ四畳半からは深夜まで明るい蛍光灯の光と姉妹の声がこぼれていた 『沙羅と姉様』fin

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