邂逅  ギデオン・トリプルプレイ・グランドスラム

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大きな紙袋を抱えて、ギデオンは枯れ葉の 絨毯を踏みしめながら歩いていた。 黄色い紙袋には赤い幾何学模様と子供騙しな 動物の絵がプリントされていて、ほのかに 甘い香りを漂わせる。 向かう先にはこぢんまりした託児所があった。 青い屋根の平屋と小さな庭があり、中心に 大きな栗の木が木陰を作っていた 「先生は留守だぞ」 ギデオンの足下で声がする。 「クールじゃねぇ!コイツの格好全然 クールじゃねぇよぉぉぉ!!」 「変質者だな」「間違いない」「確保だな」 ギデオンの膝の高さほどのところに顔が 集まった。縁側で拾った栗を数えていた こども達だった。 「お前らコレの匂いに釣られて来やがったな」 年長組の女の子が、ピンときたようで、 「園長先生のお知り合いなの?」と聞いた。 こども達の胸には、花の形に切り抜かれた ビニール製の名札が光っている。 下の名前は男女それぞれ様々だったが、奇妙 なことに姓が皆そろって『木下』なのだ。 「・・・・・・ショウちゃん?」 品のいい老婦人が、ギデオンに話しかけた。 手にはギデオンと同じ袋を抱えていた。 「木下先生、ご無沙汰しています」 門には『おおきなくりの木の下園』とあった ギデオンこと木下正一と木下園長は縁側に座り、 昔話に花を咲かせていた。 木下ミヅエ園長は、この 『おおきなくりの木の下園』で40年間、 身よりのないこども達を引き取り育てている。 ここで暮らすこども達は、引き取り手が 現れるまで皆、園長の名字である木下を 名乗っていた。 ギデオンは10歳までをここで過ごした。 「ベビーカステラ、憶えてくれてたのね」 「俺らにとっちゃ、母の味ッスから」 二人が抱えていた袋の中身はベビーカステラだった。 木下園長は外出した帰り、必ずベビーカステラ を買って帰った。こども達は、内心、ベビーカステラ をそれほど好きではなかったが、園長先生不在の 寂しさから解放される喜びがそれに勝っていた。 以来、園のこども達はベビーカステラを心待ちに するようになった。 「あの子とは連絡取ってるの?ホラ、兄弟みたいに 仲良かったじゃない、ええと・・・」 その問いに、ギデオンの顔が張り詰める。 「・・・・園長先生もご存知ありませんか、 アイツの行方・・・・」 「えぇ・・・・何も・・・・」 「そうスか・・・・」 表情にただならぬものを感じた木下園長は それ以上聞かなかった。 こども達はベビーカステラをすっかり平らげ 庭を走り回っていた。 鬼ごっこと称したイガ栗投げ攻撃を這う這うの 体で振りきって、ギデオンは園を後にした。 十六聖天となった時から、危険が及ぶまい と名を偽り、ここには二度と足を踏み入れない であろうと思っていた。 しかし、カイザーの言葉に、同じ時を分かち合った 『友』の影を見出したギデオンは、恩師に 問わずにはおけなかった。 一週間前・・・・・ 「メガネザル」 「いい加減名前で呼んで下さいカイザー『兄さん』!!」 エース・ザ・フォーカードとの死闘から生還した際、 介抱と称してナナエルの太股を執拗に撫で回して以来、 ギデオンは兄カイザーに睨まれていた。 「我々が対峙した憎き男・・・・・・奴の 能力は私の眼をもってしても捉えられなかった」 どんな小さな「前触れ」も逃さぬはずのカイザーの 絶殺視が、ナナエルに伸びる縛鎖を捉えなかった。 鎖が出現した瞬間も、大気は波一つ立てず静止していた。 電子、微粒子、量子変位の痕跡すら無かった。 「奴の能力は空間転移ではなく次元移送、つまりお前の 能力と同じではないのか?」 ギデオンの背中を冷たいものが伝う。 「・・・・・心当たりがあるんだな」 「どなたをお探しかしら?」 白スーツの男が、陽炎のように現れた。 「・・・・変わったわねショウちゃん、 なぁにその格好、全然似合わないわよ」 その男は、ウェルドバングの兄妹を痛めつけ、 次郎の一刀に伏した男。 「カマ野郎の知り合いはいないと思ってたんだがな」 その男は、エース・ザ・フォーカード。 邂逅  ギデオン・トリプルプレイ・グランドスラム 後編に続く

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