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「十六聖天外伝 残光~二章・後篇~」(2008/10/11 (土) 23:34:46) の最新版変更点
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あらすじ
田中茂が去り、一人浜辺を散策する次郎
そんな彼の胸中に一つの戦いの記憶がよみがえっていた
十六聖天2位、剣皇アレクサー・リーンヴォード…
クリムゾンブロウ曰く「練乳うめぇ」
ブラックパイソン曰く「麻薬と何一つ変わらねぇ」
アレクサーとの激しい戦いを思い返していると、不意に次郎の横から声が聞こえてきた
「好い天気じゃのう、今日は」
横に現れた自分に驚く次郎を見ながら、悪戯好きの子供のような表情を浮かべる少女
一見すると10にも満たない年齢に見受けられるこの少女こそ
伝説の剣、エクスカリバーの剣精である
「なんだ婆さん、来てたのかよ…」
「ワシとて女子じゃ。たまには思い出に浸りたくもなる」
驚かせるな、と悪態をつく次郎を無視し、彼女の眼差しは遠くを見つめていた
その眼が見ているのは、恐らく次郎と同じ景色なのだろう
エクスカリバーは、静かに呟く
「…のぅ?次郎。少なくともお前には何の非もないのじゃ。自分を責めるでないぞ」
「心でも読めんのかよ、アンタ」
えへん、と胸を張りながらエクスカリバーは自慢気に言う
「たわけ。何年生きておると思う。心など読めずとも若像の思考くらい手に取るようにわかるわ
それに良い女は、男の気持ちに敏感なものじゃ」
「いい女は若作りなんてしねぇよ」
子供のような彼女の反応に、次郎は苦笑していた
「見事だジロウ」
致命傷を受け、本来ならば苦痛により、声を発する事すらままならぬであろうに、その男の声には一切の淀みがなかった
そう、そこに立っていたのは狂える剣皇ではなく、十六聖天2位、剣皇アレクサーその人だった
「エクスカリバー、お前にも済まない事をしたね」
憑きモノが落ちたかのように、澄んだ顔で彼は、その手に持つ聖剣の封印を解除する
「アレクサー!アレクサー…! ジロウ、お主何をしておるか!ワシの鞘を持て!急げ、早くするのじゃ!」
解放されるや否や、エクスカリバーは叫んでいた。本体は封印されど、精神体となり次郎をサポートしていた
彼女は一部始終を見ていたのだ。故に、鞘を使わぬ限りアレクサーは助からない事も知っていた
「無駄だ、エクスカリバー」
「何を言う、うつけ!ワシの鞘ならば、この程度の傷たちどころに治してみせるわ!じゃから早く」
「違う、違うんだよエクスカリバー。鞘はここにはない」
「何をいう。お主先ほどまで持っていたではないか!そこらに転がっているはずじゃ!
早くせい次郎!何をボケっと立っておるのじゃ!」
そんなエクスカリバーが眼に入っていないかのように、次郎は叫んでいた
「…操られても鞘捨てる程の覚悟があるなら…操られてんじゃねぇよ…!剣皇だろうが…!」
「なん…じゃと…?」
「酷いな、ジロウ。もともと剣が専門だからね。ややこしいのは嫌いなんだよ」
全身を朱に染めながら、剣皇は笑う。彼はエクスカリバーを封印した後に最後の力で
鞘を投げ捨て、そして偽の鞘を自身の力で偽装していたのだ
SSS級の魔導の力を持つ彼にとっては封印されたエクスカリバーを出し抜くなど容易い
地に伏せ、エクスカリバーは泣き咽ぶ。こんな形でマスターを失うのは彼女にとっても初めてなのだ
「お主はうつけじゃ!阿呆じゃ!大うつけじゃ!阿呆…」
遥かに年長者であるエクスカリバーをあやすように、アレクサーは笑う
「君の長い人生の中で、私など一瞬の煌きにすぎない。さぁ顔をあげてくれ、我が姫、そして我が剣よ」
口調に一切のよどみがないものの、彼の顔からは先ほど以上に血の気が失せていた。生きているのが奇蹟と思えるほどに
「さて、ジロウ。お別れだ」
「…馬鹿野郎が」
手厳しいな、と死にゆく剣皇は笑う
「ジロウ、タルタロスには、冥王には気をつけろ。…後は任せた」
「あぁ…いい旅を」
「アレクサーが逝って、もう随分経つというに、まるで昨日の事のようじゃのう…」
アレクサーが眠る海を見て、エクスカリバーは寂しげに笑った
「あやつは良いマスターじゃった。ワシの長い人生の中でもあれほどのマスターはそうはおらぬ」
アレクサーは最後まで、高知を滅ぼした事を謝らなかった。恐らく謝って済む問題ではないと考えていたのであろう
そして狂行に走った自分の犠牲になった者への、せめてもの償いに、最後の力で鞘を捨てたのだろう
高知を滅ぼしたのは、次郎を怒らせ、その次郎に自分を止めて貰いたかったなのかもしれない
「そうだな…。大した男だったよ」
本当に、そう思う。強さ、品格、人格、何を取っても十六聖天屈指の男だった
「…で、お主、いつ二代目剣皇になるのじゃ?いつワシを貰ってくれるのじゃ?」
次郎の隣で、エクスカリバーが悪戯をする子供のような笑みを浮かべていた
クリムゾンブロウ曰く「ネタがねぇ」
ブラックパイソン曰く「いいから早くAIRやろう」
十六聖伝外伝 残光~二章後編~ 完