闇伝 外道対外道

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日本某所にある、とある高校・・・便宜上A高校としておこう。 終業を告げる鐘が鳴り響く。学生のほぼ全てが待望する、放課後の訪れだ。 校門を潜り、放課後を校外で過ごす者、即帰宅する者。 その波の中に、彼・・・中村回答もいた。 「じゃあな、いっけい、華京院さん」 「ああ、また明日な回答」 「御機嫌よう、中村さん」 学友と別れ学び舎を後にする回答が目指すのは、もちろん家路・・・ではない。 人通りのない、否、人払いがされた道に、黒塗りの外車が停められている。 「お待ちしておりました、社長。今日はどちらへ」 「『奴ら』にコンタクトを取る。出してくれ」 「御意に」 この瞬間、回答は一介の高校生から、殺人公社「ダンタリオン」社長に『戻る』。 彼の真の姿は、プロの殺人屋にして、社会の闇に生きる者を束ねる若き長。 父であり先代社長である問答を亡くしてよりその職を引き継いだわけだが、 問題が何もないわけではない・・・、よくある先代派と当代派の争いである。 回答を支持する当代派は、殺人屋にあるまじき、偽善と言われても仕方のない、 時に殺害対象をあえて生かすようなやり口を容認している。 だが、先代問答のように手法など問わず殺人を冷徹かつ確実に遂行することを 至上とする者、或いは単に殺しができればそれでよいと言う輩とは相容れない。 回答のような行いをするものは過去にもいたが、それらは全て『粛清』の名の元に 問答あるいはその懐刀により例外なく殺害されてきた。 だが、今回はその当代が偽善行為に手を染めている。これを是とするか非とするかで 「ダンタリオン」は割れているのである。 回答は考える。 「ダンタリオン」は当代である自分が統べるべき物。逆らう者など許す必要はない。 だがしかし、如何せん味方=手駒は自分を頭数に入れても、先代派に対し圧倒的に 少ない事実は覆しようもない。鮮血の吹き出す様を見る、首をねじ切る音を聞く、 それによりギリギリの正気を保っているような殺人狂の集団にあって、自分のように 仕事に不条理を感じるものなど、そう多くはない。 ・・・毒を以って毒を制する。足りないものは足せばいい。 そう考えた回答が行き着いた結論、そして、黒塗り外車の目的地。そこに辿り着く。 回答は、何処にでもある普通のスーパーに立ち寄る。 自動ドアを潜れば、そこはすでに夕食のために少しでも安い食材を求める近所の オバちゃんたちの戦場と化していた。 そんな光景には目も繰れず、回答は店内を歩き回り、店員を探す。 「あの、すいません」 「いらっしゃいませ! どうされましたか?」 若い店員・・・バイトだろうか。呼び止めて、名札を確認した上で、用件を伝える。 「『ダンタリオン』の中村が来た、と伝えてもらおう」 「・・・畏まりました。少々お待ち下さい」 店員はバックヤードに戻り、しばし回答を待たせた後戻ってくる。 「お待たせいたしました。こちらへ」 おいそこのバイト! 聞いているのか! 勝手に客をバックヤードに入れるな! そんな声が聞こえてくるが、バイトも回答もお構いなしにバックヤードを進む。 目指すはバックヤード最奥の立入り禁止区域。ここには、限られた人員しか 立ち入りは許されない。一介のバイト風情はおろか、場所によっては店長ですら 存在すら知らされない場所である。 事務室からバイトと少年がバックヤードの奥に入っていくのを見かけた副店長は その行為を諌めるべく席を立とうとする。 「まったく何なんだあのバイト! 追いかけてとめさせないと・・・」 「待ちなさい・・・私が行かせました」 「店長、何言ってるんですか! バイトはともかく客を入れるのは」 「私が行かせた、と言いました。・・・聞こえませんでしたか?」 「い、いえ・・・それなら、いいんですが・・・」 店長と、回答を先導するバイトのネームプレートには、担当フロア・役職の脇に 小さく『征』の字が入れられている。 その意味を知るものは、社内のあらゆる人材の中でも、極少数に限られている・・・。 うって変わって所変わって、ここはとある女学校の正門前。 そこには、出てくる女学生から冷やかな視線を浴びる高校生と、それとは真逆に トキメキ熱視線を浴びまくっている高校生の二人がいた。 「なぁ・・・オレの金髪地毛なんだが、やっぱヤンキーに見えるのかね?  視線が強烈に痛いんだが」 「お前の場合、問題はそこじゃないだろうな。滲み出るオーラが異質すぎるよ、翠」 そんな異質なヤロー二人組に、不機嫌度120%のしかめっ顔で駆け寄ってくる女学生が一人。 「・・・もう来るな、って言ったはず」 「やかましいわワンワン。妹は妹らしく、兄の背中についてくりゃいいんだよ」 「ワンワン言うな。殺す」 「おうやってみろや。また泣かすぞ?」 「それにしても、もうすっかり元気になったな、杷羽(わわ)ちゃん」 「おかげさまで。もう何ともないです」 「おう、我が家の人間は体の丈夫さが取り柄だからな!」 「私、拾われっ子」 「いちいちやかましいわ!」 翠が杷羽の頭をはたくと、真紅のリボンとプラチナブロンドの髪が揺れる。 「・・・殺してやる」 ふと、翠と杷羽の姿が、この世界から消えてなくなる。詳しくは知らないが、杷羽の能力らしい。 「やれやれ、またか・・・どうせ結果は目に見えている。あとで適当に斬で出口を開けておくか」 杷羽が久鬼家に拾われて早数週間。この義兄妹の喧嘩もいつものことである。 義兄妹がこの世界のどこでもない場所へ姿を消して、18分と25秒後。 「ぐずっ、えう、ひっく・・・うわぁぁぁぁん!」 「はっはっは、どうだ! 頭が爆砕してもなお動く、脳みそぶちまけながら動く  血みどろの兄は怖かろう! キモかろう! はあっはっはっはぁ!」 「まったく、オマエは妹泣かせて何が楽しいんだ」 「いやだってこいつ引きこもりモードになるとうぜぇんだもん。四角い兵隊は出るわ、変な生き物は  乱舞するわ、無駄にデカい城構えるわ・・・ああいうファンタジーは絵本だけにしてほしいぜ」 「そのファンタジーを一瞬にしてぶち壊しにする、ゾンビのオマエはどうかと思うがな」 「なにおう!? ゾンビと死なないのは違うんだぜ!?」 「とりあえず謝っとけ。後で親父殿に何されるか分からんぞ」 「ぐぬぬ・・・流石に親父を出されては仕方がない。・・・やりすぎた。許せ、杷羽」 「・・・えぅ、ぐず、うぅ・・・いつか絶対殺してやる・・・」 久鬼杷羽(ひさき わわ)。推定年齢14歳。プラチナブロンドの髪をした、まさに美少女である。 既に彼女が話したように、彼女は襤褸雑巾と見まごうばかりの、血塗れで凄惨な姿で道端に 倒れていたところを、『仕事』帰りに偶然に通りかかった翠によって拾われ、親父殿が 拾った子猫を行き当たりばったりで飼いはじめようとする子供程度の軽いノリで養子にしてしまった。 実は実子だった翠とは違い、正真正銘、掛け値無し、純度100%の養子である。 元々は口は達者だが冷淡冷徹残忍そのものだったが、あまりにバカすぎる翠を兄に持ってしまったため 性格が丸くならざるを得なくなってしまった。 ちなみに本名は全く異なるが、「温和」や「治癒」を花言葉に持つ枇杷の『杷』と、何処までも高く遠く 飛べるようにという願いをこめた『羽』の字を本名の一部に当てて、この名前となった。 拾われた当初はさかんに「仲間の跡を追わせて」「奴らに復讐してやる」などと物騒なことを しょっちゅう言い放っていたが、無駄に豪快極まる親父殿とバカ極まりない上に馴れ馴れしくて ウザい兄に囲まれて、いつの間にやら久鬼家の3人目の家族として馴染んでしまっている。 どうでもいいことだが、翠としては家の中で一番デカくて広い個室が杷羽に宛がわれたことと 小遣いがケタ3つ違う事に翠は大いに不満をもらしたが、親父殿により文字通り、意見も 身体も一蹴されることとなった。何時の世も親父は娘には甘いのである。 閑話休題。 そんなこんなで、半べその杷羽、杷羽を冷やかす翠、翠を嗜める苓といういつもの構図で 街に繰り出そうとしていた・・・そのとき、翠と苓の携帯にメールが着信する。 「何そのダサい着メロ。死ね」 「着メロひとつで酷くね? まぁいいや。で、何々・・・」 「ふむ。どうする、翠。杷羽ちゃん送ってからでも構わないとは思うが」 「帰ってからまた行くのも面倒だし、連れてかね? どうせコイツは囲まれたって何とかなるだろ」 「そこで『兄が守ってやる』とかいうと妹ポイントがアップするところだと判断したが」 「なんだとう!? それはマジカ!?」 「そんなものはない。バカ兄。いいから死ね」 「まぁいい。さて杷羽、お兄ちゃん達はちょいとばっかり危険なところに行ってくるが、  ここで帰ってゲームでもしてるか? それとも・・・来るか?」 西なんとか赤羽店の地下深く。上に居る店員や事務職員でもほんの数人しか知らない場所にある、 地上部分よりも広大な施設のある一室に、中村回答は通されていた。 「・・・モニター越しで失礼。久しぶり、と言えばいいのかしら? 中村『社長』」 「こちらこそ、連絡も入れず急な訪問をしてすまなかった、レディ・『ボス』」 「それで・・・貴方がここに来るなんて、何の御用かしら」 「・・・依頼だ。それも、貴女方にしか頼めない類の、な」 「あら、殺人屋が殺人屋に依頼だなんて、面白い事言うようになったのね、貴方も」 「・・・」 「まぁいいわ。大方、あの素敵なダディが亡くなられたから、ということでしょう?」 親父の懐刀を試し切りの藁人形としか思っていないのだろうか。まぁいい。 現役の頃親父も恐れたというレディ・ボス率いる『征雄』のエージェントの実力、見せてもらおう。 「ホントにここで合ってんのかよ、苓?」 「間違いない。中には客人がいる、粗相がないようにお前は引っ込んでろ、翠」 「そうね、バカ兄は引っ込んでいたほうがいいわね。礼儀なんてものを知らなさそうだし」 「なんだとう!? また泣かされたいのか杷羽!」 騒がしい・・・声から察するに、自分と同じくらいの年だ。 「お、これはまた随分と若い依頼人だな。翠・レングラント。よろしゅうな」 「これは・・・『ダンタリオン』の中村 回答殿とお見受けします。森東 苓、お見知り置きを」 「・・・久鬼 杷羽です。御機嫌よう」 「中村 回答と申します。今回は、よろしくお願いいたします」 ここに、外道集団と外道集団の、血で血を洗う抗争が始まる。
日本某所にある、とある高校・・・便宜上A高校としておこう。 終業を告げる鐘が鳴り響く。学生のほぼ全てが待望する、放課後の訪れだ。 校門を潜り、放課後を校外で過ごす者、即帰宅する者。 その波の中に、彼・・・中村回答もいた。 「じゃあな、いっけい、華京院さん」 「ああ、また明日な回答」 「御機嫌よう、中村さん」 学友と別れ学び舎を後にする回答が目指すのは、もちろん家路・・・ではない。 人通りのない、否、人払いがされた道に、黒塗りの外車が停められている。 「お待ちしておりました、社長。今日はどちらへ」 「『奴ら』にコンタクトを取る。出してくれ」 「御意に」 この瞬間、回答は一介の高校生から、殺人公社「ダンタリオン」社長に『戻る』。 彼の真の姿は、プロの殺人屋にして、社会の闇に生きる者を束ねる若き長。 父であり先代社長である問答を亡くしてよりその職を引き継いだわけだが、 問題が何もないわけではない・・・、よくある先代派と当代派の争いである。 回答を支持する当代派は、殺人屋にあるまじき、偽善と言われても仕方のない、 時に殺害対象をあえて生かすようなやり口を容認している。 だが、先代問答のように手法など問わず殺人を冷徹かつ確実に遂行することを 至上とする者、或いは単に殺しができればそれでよいと言う輩とは相容れない。 回答のような行いをするものは過去にもいたが、それらは全て『粛清』の名の元に 問答あるいはその懐刀により例外なく殺害されてきた。 だが、今回はその当代が偽善行為に手を染めている。これを是とするか非とするかで 「ダンタリオン」は割れているのである。 回答は考える。 「ダンタリオン」は当代である自分が統べるべき物。逆らう者など許す必要はない。 だがしかし、如何せん味方=手駒は自分を頭数に入れても、先代派に対し圧倒的に 少ない事実は覆しようもない。鮮血の吹き出す様を見る、首をねじ切る音を聞く、 それによりギリギリの正気を保っているような殺人狂の集団にあって、自分のように 仕事に不条理を感じるものなど、そう多くはない。 …毒を以って毒を制する。足りないものは足せばいい。 そう考えた回答が行き着いた結論、そして、黒塗り外車の目的地。そこに辿り着く。 回答は、何処にでもある普通のスーパーに立ち寄る。 自動ドアを潜れば、そこはすでに夕食のために少しでも安い食材を求める近所の オバちゃんたちの戦場と化していた。 そんな光景には目も繰れず、回答は店内を歩き回り、店員を探す。 「あの、すいません」 「いらっしゃいませ! どうされましたか?」 若い店員・・・バイトだろうか。呼び止めて、名札を確認した上で、用件を伝える。 「『ダンタリオン』の中村が来た、と伝えてもらおう」 「・・・畏まりました。少々お待ち下さい」 店員はバックヤードに戻り、しばし回答を待たせた後戻ってくる。 「お待たせいたしました。こちらへ」 おいそこのバイト! 聞いているのか! 勝手に客をバックヤードに入れるな! そんな声が聞こえてくるが、バイトも回答もお構いなしにバックヤードを進む。 目指すはバックヤード最奥の立入り禁止区域。ここには、限られた人員しか 立ち入りは許されない。一介のバイト風情はおろか、場所によっては店長ですら 存在すら知らされない場所である。 事務室からバイトと少年がバックヤードの奥に入っていくのを見かけた副店長は その行為を諌めるべく席を立とうとする。 「まったく何なんだあのバイト! 追いかけてとめさせないと・・・」 「待ちなさい・・・私が行かせました」 「店長、何言ってるんですか! バイトはともかく客を入れるのは」 「私が行かせた、と言いました。・・・聞こえませんでしたか?」 「い、いえ・・・それなら、いいんですが・・・」 店長と、回答を先導するバイトのネームプレートには、担当フロア・役職の脇に 小さく『征』の字が入れられている。 その意味を知るものは、社内のあらゆる人材の中でも、極少数に限られている・・・。 うって変わって所変わって、ここはとある女学校の正門前。 そこには、出てくる女学生から冷やかな視線を浴びる高校生と、それとは真逆に トキメキ熱視線を浴びまくっている高校生の二人がいた。 「なぁ・・・オレの金髪地毛なんだが、やっぱヤンキーに見えるのかね?  視線が強烈に痛いんだが」 「お前の場合、問題はそこじゃないだろうな。滲み出るオーラが異質すぎるよ、翠」 そんな異質なヤロー二人組に、不機嫌度120%のしかめっ顔で駆け寄ってくる女学生が一人。 「・・・もう来るな、って言ったはず」 「やかましいわワンワン。妹は妹らしく、兄の背中についてくりゃいいんだよ」 「ワンワン言うな。殺す」 「おうやってみろや。また泣かすぞ?」 「それにしても、もうすっかり元気になったな、杷羽(わわ)ちゃん」 「おかげさまで。もう何ともないです」 「おう、我が家の人間は体の丈夫さが取り柄だからな!」 「私、拾われっ子」 「いちいちやかましいわ!」 翠が杷羽の頭をはたくと、真紅のリボンとプラチナブロンドの髪が揺れる。 「・・・殺してやる」 ふと、翠と杷羽の姿が、この世界から消えてなくなる。詳しくは知らないが、杷羽の能力らしい。 「やれやれ、またか・・・どうせ結果は目に見えている。あとで適当に斬で出口を開けておくか」 杷羽が久鬼家に拾われて早数週間。この義兄妹の喧嘩もいつものことである。 義兄妹がこの世界のどこでもない場所へ姿を消して、18分と25秒後。 「ぐずっ、えう、ひっく・・・うわぁぁぁぁん!」 「はっはっは、どうだ! 頭が爆砕してもなお動く、脳みそぶちまけながら動く  血みどろの兄は怖かろう! キモかろう! はあっはっはっはぁ!」 「まったく、オマエは妹泣かせて何が楽しいんだ」 「いやだってこいつ引きこもりモードになるとうぜぇんだもん。四角い兵隊は出るわ、変な生き物は  乱舞するわ、無駄にデカい城構えるわ・・・ああいうファンタジーは絵本だけにしてほしいぜ」 「そのファンタジーを一瞬にしてぶち壊しにする、ゾンビのオマエはどうかと思うがな」 「なにおう!? ゾンビと死なないのは違うんだぜ!?」 「とりあえず謝っとけ。後で親父殿に何されるか分からんぞ」 「ぐぬぬ・・・流石に親父を出されては仕方がない。・・・やりすぎた。許せ、杷羽」 「・・・えぅ、ぐず、うぅ・・・いつか絶対殺してやる・・・」 久鬼杷羽(ひさき わわ)。推定年齢14歳。プラチナブロンドの髪をした、まさに美少女である。 既に彼女が話したように、彼女は襤褸雑巾と見まごうばかりの、血塗れで凄惨な姿で道端に 倒れていたところを、『仕事』帰りに偶然に通りかかった翠によって拾われ、親父殿が 拾った子猫を行き当たりばったりで飼いはじめようとする子供程度の軽いノリで養子にしてしまった。 実は実子だった翠とは違い、正真正銘、掛け値無し、純度100%の養子である。 元々は口は達者だが冷淡冷徹残忍そのものだったが、あまりにバカすぎる翠を兄に持ってしまったため 性格が丸くならざるを得なくなってしまった。 ちなみに本名は全く異なるが、「温和」や「治癒」を花言葉に持つ枇杷の『杷』と、何処までも高く遠く 飛べるようにという願いをこめた『羽』の字を本名の一部に当てて、この名前となった。 拾われた当初はさかんに「仲間の跡を追わせて」「奴らに復讐してやる」などと物騒なことを しょっちゅう言い放っていたが、無駄に豪快極まる親父殿とバカ極まりない上に馴れ馴れしくて ウザい兄に囲まれて、いつの間にやら久鬼家の3人目の家族として馴染んでしまっている。 どうでもいいことだが、翠としては家の中で一番デカくて広い個室が杷羽に宛がわれたことと 小遣いがケタ3つ違う事に翠は大いに不満をもらしたが、親父殿により文字通り、意見も 身体も一蹴されることとなった。何時の世も親父は娘には甘いのである。 閑話休題。 そんなこんなで、半べその杷羽、杷羽を冷やかす翠、翠を嗜める苓といういつもの構図で 街に繰り出そうとしていた・・・そのとき、翠と苓の携帯にメールが着信する。 「何そのダサい着メロ。死ね」 「着メロひとつで酷くね? まぁいいや。で、何々・・・」 「ふむ。どうする、翠。杷羽ちゃん送ってからでも構わないとは思うが」 「帰ってからまた行くのも面倒だし、連れてかね? どうせコイツは囲まれたって何とかなるだろ」 「そこで『兄が守ってやる』とかいうと妹ポイントがアップするところだと判断したが」 「なんだとう!? それはマジカ!?」 「そんなものはない。バカ兄。いいから死ね」 「まぁいい。さて杷羽、お兄ちゃん達はちょいとばっかり危険なところに行ってくるが、  ここで帰ってゲームでもしてるか? それとも・・・来るか?」 西なんとか赤羽店の地下深く。上に居る店員や事務職員でもほんの数人しか知らない場所にある、 地上部分よりも広大な施設のある一室に、中村回答は通されていた。 「・・・モニター越しで失礼。久しぶり、と言えばいいのかしら? 中村『社長』」 「こちらこそ、連絡も入れず急な訪問をしてすまなかった、レディ・『ボス』」 「それで・・・貴方がここに来るなんて、何の御用かしら」 「・・・依頼だ。それも、貴女方にしか頼めない類の、な」 「あら、殺人屋が殺人屋に依頼だなんて、面白い事言うようになったのね、貴方も」 「・・・」 「まぁいいわ。大方、あの素敵なダディが亡くなられたから、ということでしょう?」 親父の懐刀を試し切りの藁人形としか思っていないのだろうか。まぁいい。 現役の頃親父も恐れたというレディ・ボス率いる『征雄』のエージェントの実力、見せてもらおう。 「ホントにここで合ってんのかよ、苓?」 「間違いない。中には客人がいる、粗相がないようにお前は引っ込んでろ、翠」 「そうね、バカ兄は引っ込んでいたほうがいいわね。礼儀なんてものを知らなさそうだし」 「なんだとう!? また泣かされたいのか杷羽!」 騒がしい・・・声から察するに、自分と同じくらいの年だ。 「お、これはまた随分と若い依頼人だな。翠・レングラント。よろしゅうな」 「これは・・・『ダンタリオン』の中村 回答殿とお見受けします。森東 苓、お見知り置きを」 「・・・久鬼 杷羽です。御機嫌よう」 「中村 回答と申します。今回は、よろしくお願いいたします」 ここに、外道集団と外道集団の、血で血を洗う抗争が始まる。

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