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ルーマニア中部・カルパティア山脈
彼女はそこにいた
ただひたすら、復讐のためだけに力を付け、魂を狩り続けた少女は
世界でも最も有名な魔物である吸血鬼、そしてその中でも最も有名であり巨大であるとされる
ドラキュラと縁深い、この地域に足を運んでいた
流石に吸血鬼はもう居ないとは思うが、それに因んだ強力な魂や、それに由来した呪物があるかもしれない
そんな淡い期待を胸に、彼女は足を進める
どれくらい歩いただろうか。そろそろルーマニア側…もとい、トランシルヴァニア地方に入ったのだろうか
そんな事を考えながら歩いていると、目の前に光る何かが横切った
「…蛍?」
一瞬霊魂の類かと思い、力の糧にしてやろうかと思ったが、どうやら違うらしい
デスメタルを道案内するかのように、蛍はゆっくりと彼女の前を飛んでいる
蛍が道案内してくれてる…?そう思い蛍の後を追おうとしたが、何やら頭も足も重いし
瞼も重い。何もかもが重い…。デスメタルの意識は、黒い闇に沈んでいった
―チュンチュン
鳥…?眩しい…
ここは何処だろう。私は確か蛍を追って…
「おや、お目覚めかね」
「…?」
まだ意識がはっきりしないデスメタルは、目を擦りながら
眼の前に立った人物を見やる
そこには赤い服を着た白いヒゲを蓄えた初老の男性が、人当たりのいい笑顔を浮かべて立っていた
「…サンタさん?」
「はっはっは。そりゃあいい。サンタさんか。ホッホッホー」
自分の赤い服を見て腕をすくめながら、初老の男性は豪快に笑った
そして、デスメタルはその笑い声で、ようやく意識を覚醒させ、恥ずかしさのあまり顔を布団にうずめてしまった
「はっはっは。すまんすまん。顔を出してくれんかのぅ」
申し訳なさそうに頭を掻きながら、笑顔を向けた老人を見て、デスメタルは布団から顔だけを出し一言
「ここどこ?」
「村じゃ」
「村か…」
村らしい。
全く回答になっていないが、まぁいい。地名うんぬんに興味はない
最も気になる事を老人に訪ねよう
「なんで私はここに?」
「ふむ。村の入口で倒れておったんじゃが、覚えておらんかの?」
「ない」
「ふむ…。まぁ、気にせず今は休む事じゃ」
「そんな時間、私にはない」
そう言い、上体を起こしたデスメタルだが、その時彼女のお腹から
ぐ~ という音がなり、顔を再び真っ赤にしたデスメタルを見た老人は
笑いながら食事を持ってくると言い、部屋から出て行った
クリムゾンブロウ曰く「おかわりと…。いや、フユキと向かい合う時がきた」
ブラックパイソン曰く「避けては通れぬ道とは思っていた…。時、満ちたり、か」
十六聖天外伝 死神を目指すモノの章 第六話「名もなき村」