復活の焔 貞本秋水 前編

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大阪某所。 日本最大のドヤ街であった場所は、戦災を逃れた 人々が身を寄せて暮らす場所となっていた。 その中に学生服姿の男が一人。 いまだ少年の面影を残すも顔には憔悴のシワが 刻まれ年相応には見えない。 かつては十六聖天に匹敵する力を振るい、京都奈良を 火炎地獄に変えた彼だが、敗北ののちその力を失い 心折られ今、浮浪者のグループから食料を盗み取り リンチにあっていた。 叩きつけられる拳足に痛みは自覚するもその目には 怒りも悲しみも憎悪も映さない。 貞本秋水の目には絶望の暗黒が広がるのみだった。 懐にわずかに残った食料をもそものと口に運びながら、 貞本秋水はただ無心であるように心がけた。 何か考えを巡らせようモノなら、脳裏に浮かぶのは 恐怖の記憶。 片や、圧倒的、絶対的、絶望的、神具の力すら遠く 寄せ付けない最強最悪の相手。 片や、只人の剣技が神具の一撃を、払う、受ける、断つ。 レヴァンテインの力を持ってして勝ち得ぬ強者の深淵を 体感した彼の心は簡単に押し潰された。 「もうなにもしない・・・なにもいらない・・・ こわい・・・こわい・・・」 これのみだった。 この食料を食い尽くしたら、今日はもう眠ろう。 まだ日が暮れかけた程度の時刻だったが、もはや 生きる気力枯れ果てた秋水は食うことと寝ることのみ、 齧歯類の如き生活を続けている。否、この世界なら 齧歯類の方が遙かに強い。 最後の缶詰に手が伸びたが、無い。最後のシーチキンが、 無い。「?」 見ると、草むらにはうごめく影、コーヒー豆の麻袋が シーチキンを貪っている。 視線を察知した麻袋は逃げるでもなく、その場に 身を縮めてなにやら呻いている。 虚ろな目でそれを眺めていた秋水は、不意にその正体に 興味を持った。 袋の口をめくると、中にはすす汚れた小さな子供が 詰まっていた。大きな瞳に恐怖と困惑を浮かべている。 衣服の類は一切纏わぬ裸体だった。 秋水はこの麻袋の中身を哀れに思い、洗ってやることに した。同情とか憐憫とか、そういう感情が自分に残っている ことに少々驚いたが、今更こんな事で救われようとも 思わぬ、と自嘲した。 公園の水道で湯の出る場所があり、拾ったタオルで全身の 汚れを落とした。 その「少女」は、輝くように美しかった。 洗ってみてはじめて少女だとわかった。それほど 全身汚れきっていた。 あらわになった真白い素肌には痛々しいミミズ腫れや青痣 が見受けられ、不埒者に乱暴を受けたであろうことは 目に見えていた。そういう場所だ。仕方ない。 「お前・・・・名前は」 自分自身、久々に言葉を発した気がした。まともに会話を したのはいつ以来だろう、遠い昔のように思える。 「じゃ・・・・・・・じゃばおっきぃ」 屈託のない笑顔を浮かべ、彼女は答えた。 「じゃばおっきー まなこらんらん」 復活の焔  貞本秋水 後編に続く

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