九話

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「どうしよぅ…どうしよぅ…。ごめん、ごめんね…!」 目も背けたくなるような変わり果てたワンダーワールドに アリスは何度も泣きながら謝った 伝えたいことがあった。伝えなければならない事があったのに 自分がもっと妹を強く止めていれば… どれだけ後悔しても、失われたものは取り戻せない 項垂れ、目を伏せ、もう何度目か分からない謝罪の言葉を口にした時だった 「やって…くれたわ…」 何と発音されたのかは、アリスの耳では聞き取れなかった 聞き取れる人間は果たして存在するのだろうか それほどまでに濁った言葉 だが、ここはアリスの世界。自分以外にいる人間は一人しかいない 顔をあげたアリスの顔が、悲しみから恐怖に変わる 恐らく十六聖天の中でも、それを見れば大半の者が目を背けたであろう それは、それほどおぞましい光景だった 彼女の左目は飛び出て黒い虚ろ 彼女の右目は眼球が砕け、汁が出て濁っていた 見えぬ目で、虚ろにアリスに近づこうとしていた ―ずるりずるり ―ずしゃ 彼女の足はもう足ではなく、かつての半分以下の長さだった 彼女足は短くなった代りに骨と肉の尾が出来ていた。血のマーキングをしながら、不格好に、それでも前進しようとしていた ―ぼたぼた ―ぐしゃ 彼女の背中は裂け、その背中からは背骨がアンテナのように立っていた 彼女の腹は裂け、前進すると身体が大きく揺れて、中身が少し地面に落ちた ―ぽたぽた ―ずっずっ 彼女の右腕は既に無く、血がどろりと流れていた 彼女の左腕はほとんど千切れ、河一枚で腰のあたりから生えて尻尾のようになっていた ―ひゅうひゅう ―ごぼっごぼっ 彼女の頬は裂け、押し出された歯が頬から突き出ていた。息をすると奇妙な音がなった 彼女の顎は左半分が殆どなくなり、肉の塊だけがついていた。呼吸をすると血の泡が口から吹き出ていた 「やって…くれたわね…」 人間には聞き取れない人間の言葉でそれは言った 彼女の銀色の髪の毛は、頭皮ごとずれ落ち、かつて髪の毛のあった場所には 割れた頭骨から飛び出た脳があった。うどん玉のようなそれが、歩くとぶるぶる震えた 彼女は笑った。それを笑みと受け取れる人間がいたかはわからないが 彼女は笑った ―ごぼっごぼっ 血泡が、かつて口だった場所にある穴から吹き出ていた 彼女の名は、ワンダーワールド 十六聖天外伝 ~失楽園の章~  9話

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