聖剣と王様

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「お前がこの剣山に封印されてもうどれくらい経ったかのう…」 十六聖天の一人聖剣エクスカリバーは徳島に来ていた。 世界に名立たる聖剣の前には一人の少女。 名をソロ・アナスタシアという。 「まだお主の封印を解かれるわけにはゆかん……」 遠い昔の話、彼女と、彼女の率いる72の魔王の軍団は世界の脅威として討伐されようとしていた。 たった一人の少女を殺すために、全世界が蜂起した。 少女は嘆き、ただ生きていたい為に地獄の軍団を配下にし、その武力を持って世界と戦った。 「許してくれとは言わないが……せめてお主が目覚めるまでこの地は守って見せようぞ」 「あの時の私にはお主を守る力も仲間も無かった……だが、今度こそは……」 脳裏によぎるのは頼もしい仲間の姿。 少女の指にはめられたリングを狙うものは大勢いる。 世界の全てとは言わないが、それでも敵は少なくない。 彼女の指にはめられたリングを狙い、世界中の組織が彼女を探している。 だが、エクスカリバーの心には何者をも寄せ付けない確固たる意思があった。 「それではな。またくる……何、お主が寂しくて泣き出す前には来てやるわ。」 エクスカリバーとアナスタシアは最初は敵同士であった。 だが掲げる正義と、指輪を持っただけの何もない少女を殺す行為。 二つの矛盾に耐え切れず、ついには戦場を逃げ出した。 「心配せずとも、私は強いからのう。それに頼れる仲間もいる。若干目が死んでおる者もおるがの」 黒いドレスを翻してエクスカリバーは立ち去る。 幼い少女を残して……幼い少女を残していかなければならない自分に苛立ちを感じながら。 「………ぃ」 「む?」 振り返り、少女の顔を見る。 その顔には笑顔が、そして頬には涙が光っていた。 「アナスタシア……」 幻聴かもしれない。 空耳かもしれない。 それでもエクスカリバーは少女からのメッセージを確かに受け取っていた。 「行ってくる……」 彼女の封印が解けかかっているのかと聖剣は危惧する。 だが、彼女の目覚めを心待ちにしている自分が心のどこかに存在していた。 (まさか……だが確かに聞こえた) (行ってらっしゃい……お姉ちゃん……) 「お姉ちゃんとはのう…いやはや、なんともむず痒い」 敵同士で戦った二人が、ゆっくりと会話するときが来ようとは思いもしなかった。 「さて、では気合を入れないとのう」 エクスカリバーの顔は晴れやかで、聖剣の名に恥じぬ輝きを放っていた。

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