刀幻郷の神剣4


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「ほう・・・これがあの駄剣どもの村か。つか刃むき出しで飛び跳ねてるとか、どこのしびれだんびらだ。
 迷惑極まりない土地だなここは」
「むらのひとたちは、と~げん、きょ~?、ってよんでるの」
「桃源郷、ねぇ・・・ま、屑どもの掃き溜めにゃ丁度いい名前だな。そこに行けば幸せになれる、ってか」
「むずかしくてよくわかんないね、タケ」
アォン! ワウワウ
「はっはっは、おまいみたなちびっこやわんこにゃ分からんだろうさ。とりあえず努力もしないで
 手に入るもの何ざ、怠惰と慢心と驕りくらいなもんだ。まさにその塊だな、ここは」
「むぅ。なまけものはよくないの」
「全くだな。でだ、せめてここの屑鉄どもに生き甲斐でも与えて、折られに来て欲しいと思うのだが」
「あるじさま、あのひとたちにおしごとあげるの?」
「馬鹿言え。今のご時勢、あんな資格も職歴も根気もネタもないようなヤツラに出来る仕事があるものかよ」

「なら、なにをしてあげるの?」
「ま、簡単なことだ。で、そこでオマエが必要になってくるわけだが」
「ふみゅ、せきにんじゅうだい、なの」
「で、聞きたいんだが」
「なになに? なんでもきくの。でもすり~さいずはだめ、っておねえちゃんがいってるの」
「そんな何処をとっても同じ数字しか並ばなさそうな、寸胴というか丸太な体型に興味あるかよ。
 つか姉って誰だ。似たようなのがまだ居るのか」
「ちがうの。あるじさまが、えと、あだるてぃ? ってよんでるほうなの」
「おうアッチのことか。アレも体型というかそれ以前のレベルだと思うが、そんなことじゃなくてだな。
 オマエはあそこの屑共とは一緒に居なかったのか?」
「あそんでくれないんだもん。つまんないんだもん。あそびにいってもみんなへーこらするだけなんだもん」
「情操教育には非常によろしくないところだな・・・いっそ潰すか」

さてさて、そんな一人と一本と一匹による作戦は、というと・・・単に煽るだけなのだが。

「な、何だぁ!?」
「ひ・・・姫神様がいらっしゃったぞぉぉぉぉ!!!」
「む、よきにはからえ、なの」
「して・・・姫神様、その男は一体・・・」
「このひと? あるじさまだよ。こんどね、あるじさまがひとごろしをしにいくから、ついていくことにしたの。

 こんなちっぽけなむらにいるよりはたのしそうだなーはっはっは、なの」
棒読みである。大根もいいところである。
(ちっ、やっぱアッチに出張ってもらったほうがやりやすかったかな・・・)
作戦は早期に瓦解しそうであった。

「な・・・な、何だってぇぇぇっぇぇぇぇっぇぇぇぇぇえぇえーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
こうかは ばつぐんだ!
刀幻郷は即座に混乱と騒然の渦に巻き込まれる。

「・・・すげぇな、おまえの大根芝居」
「えっへん! せんりょう・・・やくしゃ? ってやつなの!」
「そんなでもないけどな」
「むー、そこはほめちぎるところなの」

騒然とする刀幻郷に、まるでそのタイミングを計ったかのように、社に向っていたブルートガングが
今だにノビたままのリジルを引きずって戻ってくる。
「騙されるなみんな! 姫神様はその人間に騙されているんだ!」

(・・・計 画 通 り 。あとはあの屑鉄が適当に騒いでくれりゃ半分は為ったも同然)

「騙されている、だと・・・?」
「馬鹿を言え! あの姫神様が人間風情に騙されるなど有り得ぬよ!」
「嘘じゃない! 姫神様がこんな屑みたいな人間風情を主に据えるはずがないだろう! そう考えれば
 この人間が純粋で純朴で穢れを知らない姫神様をだまくらかしたというのも納得できるだろう!」

<何それ、気持ち悪いんだけど。吐き気がするわ>

場が凍りつく。

「みぃ? どうかしたの?」
その場に居た全ての剣が安堵する。今のは空耳か・・・姫神様がそんなこというはずないもんな・・・

安堵したのは剣ばかりではない。切れたナイフはタマを引き寄せる。
(くっそ、不穏分子は身内にも居たか・・・! オイこの・・・ああもうタマは使ったからフツノでいいや!
 おいフツノ! 気持ちは痛いほど分かるがオマエは刺激的過ぎるからちょっと引っ込んでろ!)
(<えー、だって気持ち悪いにも限度があるんですもの。今ここで叩き折って頂きたいわ、主様>)
(わかったわかった、あとで適当に何本か見繕って折っとくから今は大人しくしてろ。な?)
(<はいはい、畏まりましたわ、主様・・・それで、ミはどこに行くのかしら?>)
(そんなのはお仲間のコンと信に聞いてくれ)
(<・・・分かる人、居るのかしらね?>)
とりあえずこちら側の交渉は済んだ。これで体制は万全・・・のはず。

「しかし、なぜです姫神様! 突然この地を離れるなどと!」
「どうかこの地に残っていてください!」
「むー、だってあそんでくれないんだもん。つまんないんだもん」
「な、なんですって・・・?」
「だからね、タケともあそんでくれて、わたしともあそんでくれる、あるじさまについていくの!」
「そ、そんなことで・・・」
剣たちは愕然とする。姫神様とてまだまだ幼い身。それなのに我らはただ崇めるだけでお心を
汲み取ってやることが何故出来なかったのか・・・!

ちなみに刀剣達は幼いと思っているが、フツノミタマは最古の刀剣類の一角。同年代や年上の刀剣類は
さほど多くはなかったりするのである。

「ま、そういうわけだ。こんないたいけざかりのかわいい子をただ社に閉じ込めてへーこらしてるような
 ヤツラにゃコイツは任せておけねー! お前らは屑だ! ここは屑の掃き溜めだ! 焼けた鉄臭いんだよ!」
「き・・・貴様ああああああああああ! 言わせておけばあああああああああ!」
「オマエ如きに俺たちの何が分かるって言うんだぁ!」
「畜生! たたっきってやるぅ!」
血気逸る刀剣類どもの殺気を一身に浴びるが、切れたナイフも慣れたもの、魂鋼以下の屑鉄どもの殺気など
物の数ではない。涼しい顔で、見下したような表情で、顔が真っ赤な刀剣類を蔑視する。
「けっ、オマエラ如きナマクラ風情が、どれだけ集ろうとも無駄無駄ァ! うっかり王の宝物庫にたまってようと
 呼び出されることなく隅のほうで埃被って倉庫の肥やしになってるようなヤツラの刃がオレの身体に
 突き立つかよぉ!」
「ならばその身で我らの怒りの刃を受けてみるがいい! 喰らええええええ!」

「くだらねぇ・・・タマ、来い」
「がってんしょうちのすけなの!」<やっと、出番ね>

切れたナイフの手に収まる神剣フツノミタマ。今怒りの刃を差し向けている刀剣類に比べれば刃渡りは
平均の半分程度、短剣に部類されるであろう程度の長さでしかないが、今、間違いなくこの刀幻郷で
最も鋭く、そして強大な力を持つ剣であることには違いはない。
そして、主のない刃と、理想の主の手にある刃では、その差は歴然。

「舞えよ刃、踊れよ刃。その煌きは無尽にして無刃、その切先が見据えるは唯前あるのみ」
<その刃、千して一、万にして一、臨むが限り、無尽の荒野に広がるばかりなり>
「幻に非ず、夢に非ず、故に我が刃、無幻也。無幻一刀流奥義、刕幻兇。狂乱の刃、散れ」

無限とも思える数の闘気の刃が切れたナイフの周囲、そして戦闘空域全体に展開する。
刹那、刃が刃を叩き、砕き、嬲り、折り、貫き・・・意思持つ刃達の阿鼻叫喚が木霊する。

一方的な剣の蹂躙の後には、フツノミタマを手に平然と立つ切れたナイフのみ。
先ほどまで息巻いていた刃たちは、全て撃ち落され、五体満足なものは一本として存在しない。
「やっぱりな。手加減してもこれだ。やっぱり糞の役にもたたねぇじゃねぇか」
<同感。でも手加減は必要なかったのではなくて? せめてバラバラにすれば製鉄場とかで
 安く買い取ってくれないかしら? その程度の社会貢献なら出来ると思うのだけれど・・・
 あらごめんなさい、こんな屑鉄、精製しても使い物になる成分なんて幾許もなさそうね?>
フツノミタマは再び幼女の姿に戻る。
「ぐ、ぐ・・・ひめがみ、さま・・・」
「きたないの。ふくがよごれるからさわらないでほしいの」
「あ・・・あ・・・な、なぜ、こんなことに・・・」

島に、姫神様を誑かす人間への怒りと、己の未熟への怒りと、悲しみが入り混じった慟哭が響く・・・。

「あーうっせ。じゃ、いくぞタマ、タケ」
「はいなの!」ワンワン
刀剣たちは、ただ憎き人間と、愛しき姫神様が、去っていくのを見ていることしか出来ない。

「いや、まだだあああああああああああああああああああああああ!」
社への道中で気絶していたリジルが、魂の叫びと共に、切れたナイフへ一直線へ飛んで行く!
「やめろおおおおおおおおおおおお! リジルうううううううううううううう!」

「貴様あああああああああああ! この俺の、魂の刃を受け」
「うっさいわボケ」
飛来するリジルを二指真空把で受け止めた切れたナイフは、柄と剣先を持ち
「がはぁ!? がぁぁぁぁああああああああああああ・・・が、ぐ、ぐ、ご、・・・げはぁ!?」
圧し折る。

「まったく・・・不意打ちするならせめて絶叫するなよな・・・じゃな。ほれ、いくぞ~」
「ちょっとまっててなの!」

「ああ・・・姫神様、戻ってきてくださったのですね・・・」
「ううん、ちがうの。ばいばいするまえにね、いわなくちゃいけないことがあったの」
「な、何を、ですか・・・?」

「おまえたちはくずだー」
超棒読みである。ここが壇上であれば靴や座布団や飲み物を投げつけられても仕方ないほどの大根である。
だが、ここは残念ながら壇上ではないので何も飛んできやしないのである。
その言葉を聴いた刀剣たちは、己の道に挫折したとき以上の、かつてないほどの深い絶望に突き落とされた。
「じゃね、ばいばいなの」
手を振り替えすだけの気力と体力と精神力が残っている刀剣など、一本として居なかった。

「さて・・・どうやってドイツにいくかなぁ」
「む、てれびでみたことあるの! ひっちはいくでいくの!」
「さて、まず海上で何をヒッチハイクできんのか、説明してもらおうかタマさんや」
「むむ・・・おさかなさんとか?」
「魚類か・・・さっきの馬面みたく、都合よく出てきてくんねぇかなぁ・・・イルカとかシャチとか鯨とか」
のほほんと海上を歩く一人と一本と一匹。目指す地は遙か西、ドイツ。
「つか、間に合うのか・・・?」
非常に前途多難である。

一方、もはや怒りと絶望のみが渦巻く刀幻郷。そこには、かつての穏やかな時は面影もない。
人間風情に姫神様を連れ去られ、仲間を奪われ、カケラのようなプライドすら粉にされ吹き飛ばされた。
彼らの魂は、今再び、刀剣としての何かを取り戻していた。だが、その魂は既に黒く汚れていた。

フツノミタマが島を去り、少し経った頃。傷の癒えた刀剣たちが、怒りの刃を研鑽する復讐の地に、
とある一本の刀剣が舞い降りる。
「へぇ・・・いい具合にカオスが渦巻いているね。適当に洗脳なり何なりしようと思っていたけれど、
 これなら軽く煽動してやるだけで、よさそうだね・・・」
鉄の掟と魂の友情で硬く結ばれた刃の群れに接触する刃、その名はダインスレフ。
ダインスレフに煽動され、復讐すべき相手がいるという日本に向った若き斧が破れたとの報が
島に届いたとき、彼らは決起することを決めた。
我ら、星の如く煌き輝く姫神様のため、そして煌く星を奪い我らの刃を侮辱した人間に復讐するため、
その身を鮮血に染め上げんと立ち上がる凶刃、ブレード オブ ヴェスペリア也!

「やれやれ・・・ここまでやることが少ないと、楽でいいけどつまらないねぇ・・・
 まぁ、いい具合に十六聖天が釣れたし、楽しませてもらおうか。ふふふ・・・」
同じ阿呆なら踊らねば損、とは誰の言葉だろうか。
彼らを適度に煽動してやれば、多少なりとも混乱を引き起こし、主の目覚めの時までの
時間稼ぎと、自分自身としての暇つぶしくらいは出来よう。とりあえず今は、踊っておくとしますか・・・
「さぁ・・・我らの同胞を奪い、見下し、煌く星を奪い去った人間どもに、今こそ復讐の時ぞ!
 今こそ往くぞ! その刃の輝きの前に斬れぬものなどありはしない! 全ての人間を血祭りにあげて
 やろうではないかぁ! 我が名はダインスレフ! 汝らの道を切り開く剣なり!」

それにしてもこのダインスレフ、ノリノリである。
ツールボックス

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