朝のご挨拶


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冷たい海風が道士服を翻す夜明け前の大空の下、私は有明国際展示場の空中回廊より蒼白に霞む世界を一望する
眼前の海原は広大無辺にして終得る所を知らず、眼下の大地は矮小窮まる東端の島だと知っていても尚
(大なるかな……大なるかな……)
国の果て……否、街の果てさえ、我が双の眼には捉えきれない
対し省みる己が一身の、何とも小さき事か
感慨深く思い、それを有り難い事と感じる
(天へ伸びる楼閣の群……街を彩る灯火……潮騒のさざめき……路傍の花……人の営みの熱……
何もかもが皆、何と有り難い事か……)
その全ては、永劫の流転に消え去る刹那の存在
(……しかし、故にこそ……)
その全てが、悠久の世界を廻す掛け替え無い歯車たち
有り難いと重ねて思い、そして知らず声に出していた
「……謝謝(ありがとう)
謝謝(ありがとう)、私の世界よ
これ程までに素晴らしく有り難いものであってくれて……」
見据える東の空と海、未明の黒と薄明の白が交錯する蓋天の境界線
そこへ向け、私は深々と頭を下げる
それは天地を奉拝し己を祓い清める、まさに払暁の礼
やがて面を上げると、そこには眼を灼くような旭日昇天の目映い輝き
大地も大海も大空も、全てのものが黄金に煌めいて私を包み込んでいた
(……あぁ、私の感謝に世界が応えている)
流石は私の世界
私の礼拝に対し、全身全霊の礼賛を以て返すとは
(今、私の世界こそが、他の誰が見る世界より素晴らしく偉大であるに違い無い……)
私はこの偉大な世界に合一すべく、天を仰いで調息する
清冽な空気を吸い込むと天地の気が丹田を満たし、吐き出す事で生まれる空虚が則天去私の境地へと誘う
二度三度と繰り返せば、風と波が大地を慰撫する感触すら伝わってくる気がした
(……まさに天地との融和
今、私こそが世界の全てとなり、世界の全てが私となっているのだ)
全能感を上回る絶対感
五感を超越し八識を凌駕する完全無欠
そう、今の私は鬼の怪も神の妙も真の理も届かぬ聖の通天にこそ在る
ならば……
(……――勝てる)
否、もはや勝つまでも無いだろう
何故ならば、世界が私ならば敵は初めから存在し得ないのだから
(ならば征こうか
我が戦場へ……)
私は死地へと赴く一歩を踏み出そうとし――
「――そこの人っ、一般参加者の入場は10時からですよ!!」
「……は?」
突如、背後の搬入口から響いた鋭い叫び
声の主は派手なジャケットを身に着けた若い女性で
「レイヤーの方ですね
……全く、一体いつから入り込んでたんですか……」
彼女は呆れから溜息を一つ零すと、『眼前で深呼吸していた道士服の青年』の腕を掴んで連行を開始した
「い、いや……私は別にコスプレなどでは無くだな……」
「ハイハイ、言い訳なら本部に着いてからじっくり聞かせて貰いますから……」

………

……


こうして、十六聖天の裏十二位たる蓮鳳は同人即売会のスタッフにこってりと絞られ
ラ・ピュタとの総力戦へ遅刻する羽目に陥ってしまったのだった……
……ちなみにこの後、大慌てで戦場へと駆けつけた彼を迎えたのは
「……あれ、いなかったっけ……?」
という、明楽いっけいの心無い一言だったとか

朝のご挨拶 fin
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