十六聖天外伝 クリスマスの章 第三話


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デスメタルの心臓は、これまでにないほど早い鼓動を立てていた
十六聖天ほぼ全員が、“デスメタル”と知らずに、自分の素顔を見ているのだ
それにしても何と広い家、そして何という数の客人だろうか
この日のためだけに、余った金で作られた
バッキンガム宮殿も真っ青と言った様子の、パイソンとブロウのパーティー会場は
余りに広大で、デスメタルは人ごみに流され、迷子になってしまっていた

もみくちゃにされ、目を回したデスメタルは、ふらふらと頼りない足取りで
何とか、知り合いであるブロウかパイソンを探そうと努力していた
そんな矢先

「いてぇ!」
「!?」

大きな声に驚いてしまったが、どうやら
うっかり男の人の足を踏んでしまったらしい
謝るためにその人物の顔を見上げ
デスメタルは二度、驚いてしまう。その人物は

「あれ?確かハロウィンの時の…」
「そうだ、ブロウとパイソンの近所に住んでる、近所のこどもメタルちゃんだ」
「ど、どうも…」

恋焦がれている佐藤次郎がに正体を隠している事は、少し胸が痛むものの
こうやって頭を撫ぜてもらえるのも、正体を隠しているからこそだろう
そう思うと、ウソをついているのも、悪いものではないな、とデスメタルは思った

「足、だいじょうぶ?」
「あー。ツバでもつけてりゃ治るよ、こんなもん」
「ごめんなさい」
「気にすんな。それより、こどもメタルちゃんは一人なのかい?」
「うん。ブロウとパイソンとはぐれちゃって」
「仕方ねー連中だなぁ。よし。俺が一緒に探してやるよ」

思いがけない申し出を受け、デスメタルは心の中で、本日三度目の驚きの声をあげた
正直、次郎と二人になる事を想像していなかったと言えば嘘になるが
まさかそれが実現するとは…

「あ、ありがとう」
「パイソンとブロウには世話になってるしな。あいつの友達は俺の友達みたいなもんだ
 それに子供一人、見捨てて遊ぶってのも寝ざめ悪ぃしな」

豪快に笑う次郎を見て、デスメタルは目を細める
異性の友人などそうはいないが、それを差し引いてもいい男だなぁと思う

「あら次郎さん。来てらしたんですね」
「あぁ、シルヴィアじゃねーか。さっきの賛美歌、なかなか良かったぜ」

先ほど、ステージで教会の子供たち達とうたっていた賛美歌を褒められ
シルヴィアは嬉しそうに微笑んだ
そして心の中でも1ポイントゲット!と笑ったが、これは心の中なので
誰にも気づかれることはなかった

「ありがとう。子供たちも喜びます。あら…そちらのお嬢さんは?」
「あぁ。こどもメタルちゃんだ。パイソンとブロウの友達でな。あの二人とはぐれたらしい」
「まぁ。それで次郎さんも一緒に探しているんですね。流石です…主の祝福があらんことを」

そう言いながら、次郎の前で手のひらを合わせ小さく祈るシルヴィアを見て
デスメタルは素直にきれいな人だなぁ、と思った
それと同時に恐らく自分のような死霊使いは最も嫌いなタイプなんだろうな、と思うと
少し悲しくなる

「よし!じゃあ私もお手伝いしちゃいますよ、次郎さん」
「ん?良いのか?」
「はい。正直言いますと、少しその…殿方がしつこくて困っていたのです
 なので次郎さんと一緒の方が安心できるというか…」
「そういう事ならお願いしようかな。ありがとよ」
「ありがとう」
「いえいえ。こどもメタルちゃん。シルヴィア・フォリナーです。改めてよろしくお願いしますね」

正直、次郎と二人っきりの時間が終わるのは寂しかったが
シルヴィアは良い人そうだし、大勢の方が賑やかで楽しいかもしれない、とデスメタルは気持ちを切り替え
そして、普段では考えられない行動に出た
自分からシルヴィアに話しかけたのである

「あ、あの…。どうすれば歌がうまくなるの?シルヴィアさんは歌がうまかった。いっぱい練習するの?」
「ありがとう、こどもメタルちゃん」

修道院で子供と触れ合う機会が多く、今現在も教会で子供と接することの多いシルヴィアの目には
眼の前の少女が勇気を振り絞って話しかけているのが、手に取るようにわかる
それ故に、少女の目線にしゃがみ込んでニコリと自分に出来る一番の笑顔を浮かべた

「いい?確かに練習は大事な事よ。けどね、それより大事なのは気持ちなの」
「きもち?」
「ええ。そうよ。聞いている人に元気になってもらいたい、幸せになってもらいたい、楽しんでもらいたい…
 そんな思いやりの心が、歌に力を与えてくれるの。ううん。歌だけじゃないわ。どんな事にでも必要よ」
「思いやりの心…」
「ええ。だから、こどもメタルちゃんも、他者を思いやる気持ちを大事にしてくださいね」
「わかった」
「良い子ですね、子供メタルちゃんは。良かったら今度教会に来てみてくださいね。一緒に歌を歌いましょう」

正体を隠してなら、いってみてもいいかもしれない…
シルヴィアの優しい笑顔を見ていると
教会でこの人と歌を歌うのもいいかもしれない、と思えるのだった

その時である。鎖鎌が!という悲鳴にも似た絶叫が三人の鼓膜を刺激したのは
夜はまだ、始まったばかりである…

十六聖天外伝~クリスマスの章 第三話~
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