聖櫃探索編 第一話 「アルスラー・ナッシュとキルリアン家」


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

灰色の空が、どこまでも続いていた。
海も深い灰色で、色彩に乏しい風景は訪れる者を
拒むようにそっけない。

アルスラーは無味乾燥な光景をぼんやりと眺めていた。
諸国を放浪していた頃は、こんな風景ばかりだった気がする。

「アルスラー」
彼を呼び止めたマグダリーナ・キルリアンの燃える
赤髪は、灰色の風景に真っ赤な華が咲いたように映る。

「久しぶりね、アルスラー・ナッシュ」
「リーナか」

「十六聖天の方とは兄さん伝いに連絡を取り合って
いたから、もう少し会う機会があると思ってたわ」
「リーナ・・・・・・・・俺はもう」

「戻ってきてアルスラー」

黒々と濃い眉も、情熱的な視線をアルスラーに浴びせる
瞳も、炎のように熱い。

「アンタや、アンタの兄貴には感謝してる、イージスや
ミストを譲ってくれたことも・・・だからアンタの
お家の手伝いもした」
リーナはかぶりをふって
「別に、恩に着せようって話をしてるんじゃ・・・」

「それはわかる、わかるが、俺がキルリアン家を
出ていった理由も知ってるだろう」
「それ・・・・は・・・・・」

十六聖天となる以前の「魔術師」アルスラーは、ロシアの
名家にして世界各地の秘宝、神秘具を代々守護してきた
キルリアン家と昵懇の仲であり、先代であるリーナの父
がまだ年若い頃から親交があった。

アルスラーが最後にキルリアン家を訪れたのは5、6年ほど前。
モスクワ大氷結に巻き込まれ先代が命を落とした後であった。

その頃キルリアン家を仕切っていたのは、リーナの兄、
ミハイル・キルリアン。
彼はモスクワ大氷結によって国家としての機能を失った
ロシアを自らの手腕で復興し、世界にその名を轟かせて
いた。


「だが、先代以前の崇高な理念は、モスクワ大氷結
とともに失われたままだったよ・・・」
リーナはアルスラーの視線を逸らし、黙って聞く。

「秘宝の真価を喧伝し、利権を得るための道具として
扱うアンタの兄貴のやり方に、俺は虚しさを覚えた」
「・・・・・兄さんを非難する人は多いわ、それでも、
国を失い、寄る辺無い多くの人たちを兄は救ったのよ」

「だから、アンタ達のやり方に口は出さない、十六聖天
の義務も果たす」
「・・・・・・一緒にはいられないのね・・・・・・」
目線は会わせない。リーナの肩が震えている。

「ぐぬぬ・・・」
二人の会話を、柱の影で歯噛みして見守る者がいた。

岩淵健吾
アルスラーを想う少女の強靱な両腕が鉄柱を
掻き抱いて、大きく彎曲させた。

「アルの野郎、ああ見えて以外とスミに置けませんな」
「人の痴話事を盗み見るのは面白いの~」
「ごわあああああッ!!??」

二人を盗み見る健吾をさらに後ろから盗み見る二人に
気付き、健吾は絶叫した。

「先生、どう見ますか」
「奴め、よもや女にああいう事を云わせる男だったとはのぅ」

「ききききき木下ッ!!それにエクスカリ婆さん!!」
「今ヘンなところにアクセントつけたじゃろ」

そこには、むやみやたらに着膨れしたサングラス
の男と、この寒空の下Tシャツにオーバーオール
のみの少女が。

「お前らいつからそこにッッッ!?」

「俺は違うよ?健吾ちゃんがタコ部屋で妙ーッに
そわそわしてたのを、婆さんが妙ーッに気に
してて、急に健吾ちゃん外に出てっちゃって、
俺が『お花摘みじゃございませんの?』っつった
のに、婆さん健吾ちゃんの後ろ尾けはじめたからよ?
いやいやいや、俺は止めたんだぜぇ~?」

「なッ・・・キサマ儂ひとりに罪を着せる
つもりか!!」

三人に気付いたアルスラーとリーナは、ばつが悪そうに、
そそくさとその場を離れてしまった。

「あ~あ、健吾ちゃんがおっきい声出すから」
「空気読めない奴じゃのう」
「キィ・サァ・マァ・らぁ~・・・・・」

今回の任務に、十六聖天の構成員ではない健吾の
同行を提案したのは、トム・ライスであった。

「面白いモノが見られマ~ス」

アルスラーとリーナの関係を知った上で、そんな事を
云うのだから、全く仕方の無い話だ。

「お前らいつまでも遊んでないで、そろそろ到着
すんぞ!!」
保護者然とした次郎の声が響く。

流氷を掻き分けて進む船の行く先に、小さな影が
見える。

近づくにつれ存在感を増すそれは氷壁だった。
氷壁だが、上部は土で覆われ、緑も見える。

流氷の基に造られた新北海道に向かう十六聖天の
目的は、五年ぶりにその存在を確認された秘宝中
の秘宝、『聖櫃(アーク)』の探索である・・・。
                     続く
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。