黄金の瞳の少女 ⑧


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激しい戦いの音が城から聞こえてきて数分が経つ
ギデオンは新たな手がかりを得ようと城へと戻って来ていた
「完全に分断されちまったな・・・しっかし一体何が起こってるんだ?」
戻ってきた城は森に呑み込まれたような異様な姿へと変貌していた
ワンダーワールドの能力が予想より遥かに大規模だったとは言え十六聖天高位の自分達がこうも躍らされ
拠点の一つであるノイシュヴァンシュタイン桜子城をこんなにされてしまうとは・・・
十六聖天は強大な力を持った個人の集まりである
だが個人が強力な力を持ち過ぎているが為に逆に大人数での連携はとり難いと言う欠点がある事も事実だ
それをまとめて居られるのは一重にハワワイザーやメカシバイの尋常ならざる頭脳あってのものだろう
「中庭の方か!」
個人が強力な力を持ちすぎている
それは十大聖天にしても同じ事が言える筈である
ならば彼らをまとめ、運用している者もまた尋常ならざる頭脳の持ち主と言う事なのか
「ナ、ナナちゃん!?」
ギデオンが中庭へ向って森と化した城内を疾走している途中
通り過ぎた医務室の中にずっと探し続けていたナナエルの姿があった
「ナナちゃん!」
森と化した元医務室であった所に一人うずくまって居るナナエル
こんな状況だ、普通なら敵の罠かもしれないと警戒しつつ接近するのが常識なのだろう
しかしギデオンは一瞬の躊躇も無く近づいた
「無事だったんだね。良かった~おじさん心配してたんだよマジで」
いつもの軽口でナナエルに話しかけるギデオンであったがすぐにナナエルが普通の状態で無い事に気付く
「・・・ナナちゃん?」
重くどんよりとした表情に綺麗な黄金の瞳を不安げに曇らせギデオンに向けてくる
「ギデオンさん・・・」
「ど、どーしたのよ?俺が来たからにはもう安心だぜ。早く他の奴等の所に戻ろうぜ」
そこまで言って突然言葉を遮られるように目の前に差し出される深く傷ついた手
「怪我してるじゃないか!綺麗な手が傷でも残ったら大―」
手をとって傷の具合を見たギデオンは我が目を疑った
傷の中に見えたのはコードやホース、金属の部品。肉のように見えた物はシリコン材のようだった
「義手じゃありません。本物みたいなんです」
下の方を向いたままナナエルが話しかけてくる
「わ、私の記憶も・・・思い出も何かおかしいんです。思い出すと自分の姿も居るんです」
「・・・」
「子供の頃の記憶も写真しか思い出せなくて・・・ギデオンさん、どう思いますか?」
ギデオンは自分が恐ろしい想像をしている事に気づき必死で他の答えを探そうとした
しかしどう答えれば良い?
上手い答えも、誤魔化し方も、今目の前のチープで残酷な現実の前にはあまりにも無力だ
「私って人間じゃなかったんでしょうか?機械だったんでしょうか?」
「いや、それは・・・」
答えなんか見つからない
誤魔化しや慰めなど考えた自分が愚かだったんだ
「私は誰かの偽物だったんでしょうか?私は―」
今にも崩れそうなナナエルをギデオンは強く抱きしめた
「ギ、ギデオンさん!?」
今、目の前に居るナナエルが自分が探していた本物のナナエルだ
理屈など無くとも判る
だったらナナエルが本当は何者であろうと守るし、掛け替えの無い仲間である事に変わりは無い
「お前は本物だ。俺が探してたナナエル・リキテンシュタインだ」
「で、でも・・・」
保健室の外からは今も激しい戦いの音が聞こえてくる
なおも不安そうな瞳を向けてくるナナエルをギデオンはただ強く抱きしめてやるしかなかった
もう二度とどこかへ行ってしまわない様に・・・

「頭が・・・頭の中を無理矢理覗かれているような感覚が・・・」
ガックリと膝を突き頭を抱えるジョンはいまだかつて味わった事の無い奇妙な感覚に襲われていた
「だ、大丈夫かランスロット?」
あれからドロシーは攻撃を仕掛けていなかった
カイザーは防御に入ったドロシーのOZの前には無力に近かったしランスロットもこの通りである
「案山子は封印された記憶でも見る事が出来る」
広がった森がそこに居る者達の知識、記憶、意識、心、全てを探り出す
「ネス子・・・ママ・・・スコットランド・・・兄弟・・・」
「やめろ・・・僕の頭の中を見るな・・・」
「主!我が主よ!しっかりしろ!気をしっかり持て!」
依然として動けないジョン
案山子を介してジョンの記憶、思考、感情を読み続けるドロシーであったが
「ん?これは―」
ブン― ガキィン!
何かを見つけたようなドロシーに振り下ろされた剣は獅子によって苦も無く防がれた
「無駄な事を」
OZによって無力化されたカイザーが落ちていたサーベルを拾いドロシーを切りつけたのだ
勿論届くなどとは思っていない
それでも尚OZの結界内に入った為カトウのロンギヌスの槍が消え傷口から痛ましく血を流しても
カイザーはドロシーを止めようと剣を振りかざしたのだ
「戦友の為に血を流すのは・・・無駄な事ではないぞ」
失血でフラ付くカイザーと、その彼の姿を見て立ち上がろうとするジョンの姿を見てドロシーは
「少しだけ解った。解った気がする」
そう良い踵を返した
「な、何故引く?今がチャンスのはずだ・・・」
「・・・お父様のためだ」
「なに?」
ドロシーはここに来て初めて少し疲れたようにフラつきながら
独り言のように真意を測りかねる言葉を残し後退して行く
「シエラ・キャロルは始末して良い。
 ナナエル・リキテンシュタインにはまだ死なれては困る
 少し遊びすぎた・・・次は始めから本気で・・・ブツブツ・・・」
ドロシーの後退と共に魔術師の森は朽ち果てるように消えてゆき残されたジョンとカイザーは暫し茫然としていた
「な、なんだったんだあいつは」
「分かりません・・・ただ不気味な相手でした。何か隠しているようだった」
やっと心を暴かれる呪縛から開放されたジョンはグレイスの様子を見る
「置いて行かれちゃいましたね。この子」
「あぁ・・・」
カイザーは考える。
順位を持たずしてあれ程の力を持つ魔女ドロシー
あっさりと順位を持つ仲間を捨ててゆき、まるで独自の別の目的を持っているかのような言動
「十大聖天・・・これが真の力ではない気がする。しかし今は-」
「おーいカイザーさーん!ジョンー!」
ジョンはグレイスを背中に背負いカイザーは城に入ってきたリーンの方を向き直る
「ナナ姉ちゃんの居場所が分かったよ!それに新たな時空の歪みも」
「仲間と脱出する事が先決、と言いたいのだな?カイザー殿」
「セリフ強奪はジョンの分だけにしてくれ」
「人様にまで迷惑掛けちゃダメだよアロンダイト!ってジョンが言ってましたー」
「そんな事言ってないし!?それよりリーンカイザーさんの手当てしてあげて!」
「ほぅ、ならば奪うのは主のセリフだけにしておこう。さすが我が主は心が広い。一生ついて行くぞマイマスター」
「一生セリフ奪うってさジョン」
「もうボクはどうしたら良いか分からないよママー!」
せっかく助けに来たのに何だか散々なジョンであったが、仲間達と合流し元気を取り戻す十六聖天であった
しかしこの時、聖天士達は知らなかった
これからナナエルとカイザーを待ち受ける過酷な運命のいたずらを

黄金の瞳の少女 ⑧ 終り
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