聖櫃探索編 第二話 「聖櫃」


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聖櫃探索編 第二話 「聖櫃」

「お待ちしておりました!!皆さん!!」

新北海道、新知床岬に上陸した聖天士達を迎えた
のは、キルリアン家の特派員であり、十二神具
の一つスワンチカの持ち主、グリゴリー・アレグ
だった。

彼の熱烈なハグを受けてしどろもどろする次郎と、
それを呆然と見つめるアルスラーとギデオン。
健吾は両目を輝かせ、エクスカリバーは
何とも言いがたい表情をしている。

見上げるような巨体、逞しい両腕、力強い胸板は
薄茶色の体毛で覆われ、にこやかな笑みを浮か
べる口元からは恐ろしい剣歯が覗く。
グリゴリー・アレグはヒグマなのだ。

「驚いたでしょう?」
リーナは口元を押さえたが、こらえきれずに笑いが
漏れてしまっている。
「リーナさん、ありゃあ非道いよ」
情けない顔で次郎が云ったものだから、つられて
周りも吹き出してしまった。

結局アルスラー他全員がグレゴリーのハグを受けた。
若干、上着がけもの臭い。

「ようこそ皆さん、新北海道へ」
歓迎の言葉もどこか冷たく響く、その声は、
リーナの実兄、ミハイル・キルリアンである。

リーナが兄より先に人懐っこいグリゴリーを聖天士達
に引き合わせたのは、この兄を彼らがあまり好いて
いない事を知っていたからだ。

リーナの八歳年上の兄ミハイルはそろそろ四十歳に
さしかかる頃で、上等のスーツに身を包んだ体は
幾分かふくよかだが、切れ長の目元が油断ならない
光を放っている。

トムや元三位の西園寺には慇懃な態度で接する彼だが、
若い聖天士達を見下すようなところがあり、そういう
事に拘らない次郎でさえ彼をあまりよく思っていない。
キルリアン家を元から嫌っていたエクスカリバーは
なおさらだった。

小休憩の後、キルリアン家の設けた仮設本部
でブリーフィングが行われた。

「そもそも、そのアークってのは」
「聖櫃とは何か、でしょう?」
次郎の質問を遮ってミハイルが答えた。彼の
こういう所が、よく思われない。

聖櫃とは?

約3000年前、預言者モーセは神に授けられた
十戒を二枚の石版に刻んだ。
聖櫃はそれが納められた箱の事で、契約の箱、
掟の箱、証の箱とも呼ばれる。

神の啓示を受けたモーセがベツァルエルに命じて
造らせたその箱は、素材や、大きさ、設計まで全て
神によって選ばれた物であり、縦幅は2.5アンマ
(約130センチ)横幅と高さは1.5アンマ(約80
センチ)、箱が地面に触れぬよう底面には脚があり、
また前後には持ち運びのための二対の担ぎ手が
伸びている。

アカシア材で拵え金箔で覆われ、上部には二対の
ケルヴィム像が鎮座している。

ソロモン王時代までエルサレム神殿の至聖所で
安置されていたが、紀元前900年以降、歴史から
姿を消すことになる・・・・

「神の言葉を記した石版に、神の設計した箱、
聖櫃は他の聖遺物とは一線を画す秘宝中の
秘宝なのです」

失われた後も信仰を注がれ、信者の生き霊とも
言える莫大な霊的エネルギーを蓄えた続けた
結果、物理的世界でその存在が安定しない聖櫃
は、別の次元への転移を繰り返す『彷徨える神具』
となった。

「我々キルリアン家は何百年にも渡って聖櫃の
調査を進めてきましたが、近年、約五年周期
でこの地球上のランダムな場所に転移する事
が確認されました」

しんと冷え切った夜の空気を、一筋の閃光が
切り裂く。

それは銀色に輝く蛇だった。

銀色の蛇はキルリアン家の車両を格納した大型
ガレージのひとつに滑り込んでゆく。
明朝から再開される聖櫃発掘作業のための重機や、
数台のトラックが並ぶ中に、何やらゴソゴソ
と蠢く影があった。

「!?」

蛇の気配に気付いた影はガレージの端に積ま
れたダンボールの山を蛇の方へ押し倒して
逃走した

蛇は落下するダンボールに進路を塞がれたかに見えたが
蛇の胴体にダンボールが触れるや次々と両断されていく。
まるで進路に何も無いかのようにスルスルと前進し、
見る間に逃走者に追いついてしまった。

逃走者は蛇に右足の安全靴を切り裂かれ、足がもつれて
全力疾走の勢いそのままに転倒する。
もはやこれまでと懐から拳銃を取り出し、こめかみに
当て、
「・・・・・・ハイル・コマンダー!!」
引き金を引いたが、瞬間、親指を切り飛ばされ弾が発射
されることはなかった。

逃走者は作業着姿の中年男で、キルリアン家に仕える
作業員の詰め所で見た顔だが、その手には赤青黄のコード
が数本伸びた金属の箱を抱えている。
「・・・・・時限爆弾とはな、みみっちい真似をする」
銀色の蛇はアルスラー・ナッシュの魔剣、ミストの
刀身であった。

「アルスラー、こいつらもじゃねーかなー」
氷点下の屋外で、裸足に胴着姿の岩淵健吾の両腕は
万力の如く二人の作業員の首を締め付けている。
「わかるのか?」
「体臭からビールとソーセージの匂いがするぜ」
鼻をヒクつかせて自慢げな健吾にアルスラーは
閉口した。

三人の破壊工作員をキルリアンの兄妹に突き出しに
行く途中、

「アルスラー・・・リーナさんの・・こと・・・」
いつもは男みたいに胸を張って話す健吾らしくない、
おずおずとした小声の問い掛けに
「昔の事だ」
アルスラーはそっけなく応える。

「だっだだだだーよーなーッ!!」
「気になるか」
「馬ッ鹿!オメーオレがそんな事気にするかよ!
えぇ?気にしないしないだッはははーッ!!」
わかりやすく大声で笑ってみせるが、直後に

「はぁ・・・・・・・・」

肩を落とし、ため息をひとつ。

小脇に抱えた二人の破壊工作員に
「お嬢ちゃん・・・・・・男を振り向かせたかったら」
「もっと女らしく振る舞わなきゃいけねぇぜ・・・・」
「あと色気もな」
「うむ、不可欠といえよう」
ムッとした健吾に力の限りそっ首締め上げられ、
鶏ような声を上げて二人は気を失った。

明朝、予定通り発掘作業が開始された。
発掘作業はキルリアン家の人間の他、半数は
新北海道在住の動物たちだった。

前足や蹄を器用に扱い自動車や重機を難なく操る
知能の高さに聖天士達も驚くばかりである。
人間と動物たちが力を合わせてひとつの仕事に
打ち込む姿はメルヘンでちょっといい光景だ。

「汚らわしい」
顔にハンカチを当ててミハイルが云う。

「あのけだものどもに人類並の知能があると思う
と吐き気がしてくる」
「兄さん、そんなことを言うものではないわ」
船の艦橋でキルリアンの兄妹は作業を眺めていた。

「昨日の夜、格納庫に賊が入ったそうだな」
「・・・三人、アルスラーと健吾さんが捉えて
くれたわ」
「いい犬だな、働いてくれる」

アルスラーは百年以上の時を生きる「魔術師」
であり、親交のあるキルリアン家もそのことは
知っているのだが、ミハイルはそのアルスラー
に対してもこの調子である。

「本格的な妨害工作が始まったようだな」
「ナチス第三帝国・・・・・」
「アポカリプス・ナウ」
                  続く
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