黄金の瞳の少女 ⑩


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戦いは終った
ワンダーワールドは解除され
いつの間にかノイシュヴァンシュタイン桜子城は元の森の中へと戻っていた
「ナナちゃん・・・」
ナナエルを守りたかった
ナナエルを助けたかった
ナナエルを死なせたくなかった
なのに今ギデオンの腕に抱きしめられるものは
糸の切れた操り人形のように静かに横たわるナナエル・リキテンシュタインの成れの果てだった
「俺は・・・俺は・・・」
傷だらけの体でギデオンはナナエルの体を強く強く抱きしめた
その体は十六聖天七位と言う強さから普段想像もしなかった程か細く、弱々しく
しっかりと抱きとめておかなければ今にも崩れてしまいそうに儚かった
「俺は!何のために戦っているんだーーーー!!!」
ギデオンの絶叫が森に木霊した時
ドバァアア ゴバァァァン!
突然の閃光と爆風がギデオンを襲った
「ぐわっ!な、何だ一体!?」
突然の爆発と土埃の中から伸びた正体不明の手は
まるで機械のように精密な動きで爆風を避けるため緩んだギデオンの手から突然ナナエルを奪って行った
「ナナエル!」
ギデオンが奪われた先をとっさに見る
すると土煙の中に見えたのは銀の髪に銀の瞳、雪のように真っ白い肌を持つ女の姿だった
「目標確保 これより撤退行動に入ります」
感情の起伏に乏しい抑揚の無いその声はギデオンに一瞥をくれた後土煙の中に消えて行く
「ま、待て!お前何者だ!ナナエルを返せーーー!!!」
未だ立ち込める催涙ガスも混ざった煙の中、ギデオンは謎の敵が消えた先に手探りで突っ込んで行ったが
「ナナちゃん!どこだナナちゃーーーん!!」
すると突然ジェットエンジンの様な甲高く低く響く轟音と共に土煙が晴れ
ナナエルをさらった何者かは追いつく暇も無く飛行機雲の彼方へと消えて行ったのだった

彼女は無機質な暗い廊下を歩いていた
ブースターユニットで焦げた軍服を気にもしようとしない白銀の女性
いや、魔の科学者ファウストによって創造された戦うための機械人形は
ナナエルをお姫様抱っこの形で抱えながら任務完了の帰路に着いていたのだ
プシュ-
「「無感動」のブリュンヒルデ ただいま帰投しました」
「ご苦労」
そう言って振り向いたのはアポカリプス・ナウ直属のコマンダー
クリフォトの十大悪の一人、魔の科学者「貪欲」のファウストその人だった
ここはクリフォトの十大悪拠点にあるファウスト専用の研究室の一角
小奇麗に整理された入り口付近とは対照的に安っぽい研究机の周りは何かのディスクやデータ用紙で散らかっていた
「10番培養液に浸けて置いてくれ」
「はい」
そう言ってブリュンヒルデが進んだ先は奇妙な物体が浮かぶ幾つもの円柱型の水槽と計測機器の数々が
規則正しく配置された薄暗い部屋の奥だった
命令を受け必要最小限の動きでナナエルを培養液で満たされた水槽に入れ終り再び無表情で横に控えるブリュンヒ
ルデ
その様子を見てファウストは悩ましげに溜息を吐き殆ど独り言のように言うのだった
「その娘はお前の数世代前の姉にあたる個体だ。と言っても思考回路はお前より数段上だがな
 ボディの強度はお前と比べ物にならないが生体部品の採用で老化現象まで再現して・・・フゥ
 こんな事をお前に言っても何も感じたりしないか」
「・・・」
ブリュンヒルデは生みの親であるファウストの皮肉を聞いても顔色一つ眉一つ動かさず
ただ静かに微動だにせず直立して聴くだけである
「これは魔術回路を頭脳ユニットに使っていてね。この方式による一つの到達点的完成品なのだが
 やれやれ、壊れてしまったか。これではウェルドバング家にあの事がバレてしまったな」
ファウストの考える事は分からない
と言うよりもファウストの価値基準が普通の人間と違いすぎているために分からなく感じるのだが
この時、ブリュンヒルデは珍しくファウストに質問を投げかけた
「お父様、あの事とは?」
その反応に満足したのか少し機嫌を直した様に
ファウストは未だ置物のように微動だにしない彼女に向って深く椅子に腰掛けたまま話を始めた
「ふむ、お前の思考回路も少しは成長してきたかな
 まぁいい、お前にも少しは事情と言う物を教えておくとするか」

「昔の話だ・・・」

ある日、ウェルドバングに一人の少女が生まれた
彼女は生まれて間も無く才覚を表し、その黄金の瞳はまさにウェルドバング家の伝承にある
かつて神魔如しと謳われたと言う金色の魔眼そのものであった
成長を期待された彼女であったが8歳の時彼女を不幸が襲った
何者かに誘拐される事件が起こったのだ
ウェルドバング家の力と恭光庁の協力で無事ナナエルは救出され元の生活に戻ったと思われたのだが
「その後の彼女は威力が高いだけの金色の魔眼と一族の失望の念に晒されただろうね」
「・・・」
「何故なら彼女は私が金色の魔眼を手に入れるために入れ替わらせた偽物だったのだから
 まぁ、そこの娘がその時の個体なのだが、なかなか上手く出来たものでね
 信号が途切れたので回収したと言うわけだ」
「お父様は今、金色の魔眼を所有されているのですか?」
「いや、すり替えた直後ある男に奪われてしまってね
 その男が容易に手が出せない組織の者なのだよ
 しかしその後の動きを見ていると、どうやらその組織も金色の魔眼を逃してしまったようだがね」
そこまで話し終えるとファウストは椅子を立ち上がってナナエルの浮かぶ10番培養液の方へと歩いて行った
「早速このコピーナナエル、いや、ヒルドの技術をお前にフィードバックするか」
生体部品と機械部品、そして魔術式による擬似魂回路が使われた人造人間ナナエル
彼女は今はただ培養液の中に浸かり意識の海の中を当ても無く彷徨うだけであった
ツールボックス

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