悲しみの瞳の少女①


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「だ、誰なんだ!?お前は一体何者なんだ!!?何故私を狙う!」
ゲルマニアの夜の街並み
レンガ造りの歴史を感じさせる数々の建物と入り組んだ街並み
夜道を照らすガス灯の灯りが建物の間から見える星々の輝きを曇らせる静かな路地裏で
一人の男が軍服を着た何者かに今まさに追い詰められていた
「はっ!そ、そのマークは・・・そのマークはまさか」
薄暗がりからガス灯が作り出すスポットライトの下に現れたその姿を見て
男は全てのゲルマンが魂の底に刻まれた忌まわしい記憶を呼び起こされる
「ヒッ!?たったすけ―」
男の悲鳴はそこで終わった
「流石ですね、姉さん」
消し炭と化した男の煙がまだ燻る中、背後の建物の陰からもう一人の軍服姿の人物が現れた
「全く気配が無いと言うのも気持ちの悪いものね」
自分を誉めた相手にすぐさま毒舌を吐く軍服を着た女は振り返り
長く美しい金髪の髪をなびかせながら新しく現れた軍服の女の横を通り過ぎる
「それで何?お父様から監視にでも来させられたの?」
自分を姉と呼ぶ女に振り返りもせず尋ねながら待ち合わせの場所まで歩き出すその女に
もう一人の女は何も言わず静かに着いて行く
薄暗かった裏路地を抜け照らし出されたその姿
夜遅くたまたま通りかかった何名かの若者達がその姿を見て一目散に逃げて行く
「見られましたが」
寡黙だったもう一人の女が金髪の女に再び話しかける
「見せたのよ。だからわざわざこんな所に待たせてあるんじゃない」
「理解しかねます」
「じゃあ後でお父様にでも聞いてごらんなさい」
冷たくあしらい停めてあった組織の車に乗り込むその姿は
ハーケンクロイツの軍服に身を包んだ黄金の髪に黄金の瞳のまだうら若き乙女
―ガシャン
対するもう一人の女は銀色の髪に銀色の瞳、ハーケンクロイツの軍服に身を包む寡黙と無表情の乙女
「・・・あなたもうちょっとダイエットしなさい。車が傾いてるわよ」
「耐圧加重内です。走行に支障ありません」
「ふぅ、それで?次の任務は?」
「重要任務です。優先順位はAA(ダブルエー)」
「ふ~ん、今度はちまちまと力を使わずに済みそうね」
そんなやり取りをしつつ誰の趣味なのか運転手付きのいささか古い型のワーゲンは夜の街へと消えて行った

「既に兄からも連絡が行っていると思うが、この作戦の重要性、貴女ならば充分理解できるはず」
十六聖天本部奥にある執務室でハワワイザーに会いに来ていた人物がいた
「はわわ、勿論わかりますけどドバイってとっても遠い所ですよねぇ」
「ドバイまでの移送は我がキルリアン家で手配します
 当家所有の音速ジェット機ならば10時間かかりません」
そう言っていつも通り及び腰のハワワイザーに詰め寄るのはキルリアン家の若き令嬢
騎士姿に身を固めたマグダリーナ・キルリアンその人である
「ヴァジュランダとは古代インド神話時代に神々から与えられた神の武器
 雷の牙とも言われる槍は人の精神力をエネルギーに変換する
 言わば無限大のエネルギーを持った武具なのです。これが万一奴等の手に渡れば・・・」
そこまで言われ横で控えていたメカシバイがハワワイザーの態度に業を煮やしたのか勝手に返事をしてしまう
「承知した。今回の任務、我々からも協力させて頂く」
「は、はわわ!メカシバさんそんな勝手に」
慌てるハワワイザーをよそに参加メンバーの話をし始める二人に
ハワワイザーは置いていかれまいと一生懸命口を挟もうとする
「―かなりの戦力を投入してくるはず。やはりここはじ、次郎殿に」
「いや、彼はああ見えて意外とデリケートだ。向こうの水が合わずお腹を壊してしまうかも」
「そ、そうか・・・なら相応の頭数を揃えて頂きたい所だが」
「おやつにバナナは含まれないと言う条件ならばこちらも人数の確保が容易になる」
「なるほど。ならば水筒にはカルピスが入っていても怒らない条件も追加しよう」
これほどの優遇措置を講じられてはかなりの希望参加者が集まってしまう
確かにヴァジュランダのような特A級の神具は優先度が高いと言っても
本部の守りをこれ以上手薄にする訳には行かない
ハワワイザーは勇気を出してここぞとばかりに会話に割り込んでいった
「はわわ。そんなにいっぱい連れてっちゃうともしもの時に大変ですよ」
その一言で参加メンバーは決まった

「何で俺なんだよ!もういーからほっといてくれ!」
そう言って女の子二人
花子とムーに両手を持たれ部屋から引きずり出されてきたのはかつてのナイスガイ
ギデオン・トリプルプレイ・グランドスラムこと木下先生その人であった
「まぁまぁ、ギデオンさんあれから部屋に引き篭もりっきりじゃないッスか
 そんなのギデオンさんらしくないッスよ?」
「ドバイでも行ってさーちょっとは気分転換しなよー」
「ホントお前らKYだな!もっと末永く悲しめよ!」
いつもなら両手に花などと言って節操なく喜ぶ所であったが
あの一件以来ギデオンは3ヶ月も引き篭もってひたすらドリキャスでギャルゲをし続ける日々を送っていた
ちなみにソフトは元クリブラの部屋の屋根裏からパクっていた
「そんな如何わしいゲームやっといて悲しんでるとか・・・軽蔑するッス」
「まって花子。これは・・・全て純愛ゲームだ!ギデオンさんの悲しみが伝わってくるラインナップだよ!」
フォローしてるのか自爆してるのか
何にせよフォローしてくれているいっけいに対して当のギデオンたるや
「うるせー!女の子としか口利きたくない!」
「いつもより理不尽かつ最低だこの人!?」
そんな調子で会議室まで連行されてきたギデオンは
どうやらふて腐れて話半分といった様子でリーナの顔も見ずに揺り椅子しながら座っていた
「・・・と言うわけだ。諸君等の活躍に期待する」
話は終り一堂が解散する中、ギデオンは一人揺り椅子したままボーっとしていた
(何だよみんな・・・何でそんなに平気でいられんだよ)
ナナエルが居なくなって3ヶ月
皆悲しみから少しずつ回復しいつもの日常を取り戻しつつあったがギデオンはあの時の事を忘れられずに居た
「・・・残ってるんだ、あの時の感触が」
ちょっと特別だと思っていた娘、結局は守れなかった
ナナエルは自分の事をどんな風に思っていたのか、ちゃんと聞けなかった
モヤモヤとした気持ちばかりが募る日々の中で鮮明に残っているのがあのマーク
ハーケンクロイツのマーク
「・・・アポカリプス・ナウ」
奴等にナナエルの遺体を奪われた。弔ってもやれずに
モヤモヤと同時に強く抱き続けるある種の八つ当たりにも近いような怒りの感情
色々な感情が鬱積する中、それらを一気に打ち砕く言葉が飛び込んできた
「金髪に黄金の瞳の少女を確認した」
「・・・なに?」
入り口に立つリーナが先程の説明では言っていなかった情報を語る
今までのギデオンの死んだような瞳に僅かに炎が宿った
「情報に無い新たなアポカリプス・ナウのコマンダーだ。ゲルマニアでさる要人を消し炭にしたそうだ」
金髪、黄金の瞳、炎による攻撃
ギデオンの中で期待とも願望とも不安とも付かない感情が膨れ上がる
「ドバイに来るそうだぞ。コマンダー数人が」
ガターーーン!!
揺り椅子を勢いよく後ろに弾き飛ばしギデオンが力強く立ち上がった
「出発を早めろ!俺が直接確かめてやる!」
こうしてヴァジュランダ争奪戦への火蓋は切って落とされたのだった
ツールボックス

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