闇伝 外道対外道10


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「・・・それにしても、居心地がいいとは言えんな」
「そうですね・・・なんと言うか、町なのに学校に居るみたいな、そんな感じです」
苓と杷羽は、タクラマカン砂漠のど真ん中で出会った、天子教騎士団の少女フレアリンに連れられて
(というか迷ったところをフォローして)、空を巡ってやってきたのはヴァチカン市国。

ヴァチカン市国。
世界最大規模の大聖堂そのものが国土という、世界で最も小さいながら、世界でも最大級の影響力を持つ国。
静謐にして荘厳なる地上部分の大聖堂こそがその国土の全てであるこの国は、天子教の、天子教による、
天子教のためだけの管理運営がなされている。
ある意味で、最も効率的に管理運営されている国家といえる。極端すぎて他国にノウハウを流用できないのだが。


基本的に天子教の信徒にしか門戸は開かれないこの国を抱える、イタリアの首都ローマに苓と杷羽は来ていた。

「どうですか、我らがヴァチカンは! この壮大で荘厳で優美な大聖堂をご覧下さいませ! こんなに間近で
 見られる機会なんて、そうそうないですよ! これは帰ったらお友達に自慢できますよぉ~!」
「生憎と、こんなところに来たところで羨ましがるほど信心深い知り合いは居ないものでね」
「右に同じく。たかだかローマの中心区に来ただけじゃないですか。これなら『ローマに行ってきた』って
 言ったほうがよっぽど羨ましがられるますよ」
「がっでむ! なんでそんなに信心が足りなんですか日本の方々は! まるで天子教を信仰するのは
 クリスマスだけとでも言いたげですね!」
「というより、昨今の日本には信仰というものへの執着がない」
「私の通ってる学校はミッション系だけど、本気で信徒なのって神学の先生のほかは学年に数人居る程度だし」
「・・・ううぅ、我らが天子様のご意向も大陸の向こう、海を越えた先までは行き渡らなかったのですね・・・」

日本人のあまりの無信教ぶりに、嘆かざるをえないフレアリンであった。

フレアリンを先頭に、ヴァチカンを見聞する二人だが、
「で、だ。俺たちはこんな黴臭い聖堂を観光するために来たわけではないのだが」
「私達、ドイツに行きたいんだけど」
「あ、そういえばそんなこと言ってましたね。でもでも、なんでドイツなんですか? あそこは少し前に、
 え~・・・っと、確か・・・ジューダイ? セイテンとか言う人たちと、ドイツのキちゃってる人たちが
 大ゲンカをして、戦災処理で大変な状況ですよぉ。そんなところにどうして行きたいんですか?」
「十六聖天とアポカリプス・ナウだ・・・端的に言えば、目的は仕事だ。それに、友との約束もある」
「なるほど・・・つまり、ボランティア活動に勤しむわけですね! それはいい心がけなのです!
 それでは私が上に頼んで、なんとか足を確保してもらえるように頼んでみましょう!」
「というか、この辺り一晩泊まれるところだけ確保できればいいのだがな。さすがにこの時間に
 移動するのは酷だし、市外に出てしまえば移動手段は幾らでもある」
こんな所で天子教に痛くない腹を無駄に探られる必要もないし、必要以上に借りを作りたくもない

それに、せっかくヴァチカンに来たのだから、例の場所にも寄っておきたい。となると自分一人が好ましい。
「それなら私の家で、って訳にはいきませんよねぇ・・・さすがに、殿方を乙女の家には入れられないです!」
「杷羽ちゃんの安全と寝床さえ確保してくれればいい。俺はどうとでもなる」
「・・・あのでっかい銃は、出しちゃダメですよ! だめなんですよ! だめですからね!」

そんなこんながありつつ、ローマ夜も更けゆく。
杷羽をフレアリンに預けた苓。大聖堂の中、禁忌区画の先にある、信徒すら知らぬ地下空間を一人散策する。
偉大なるカテドラルの地下に広がる、真なる神が座する、神々しくも禍々しき空間。
どうせヴァチカンに来たのなら、ということで、裏社会の魔境の一つである地下渓谷に苓は踏み込んでいた。
(ここが俗に言う「神人の揺籠」・・・神ならざる神のおわします座の袂に、悪魔の子が一人、か・・・)
一人物思いに耽る苓・・・だが
「・・・! 流石は神の座、そうそう余所者が歩き回らせては、くれないか!」
苓が先ほどまで立っていた場所まで、一直線に「腐敗」が駆け抜ける。

「腐敗」の先に立つのは、美しく流れる蜂蜜色の、天使の翼を思わせるが如く美しくはためく長髪。
雄々しく重厚にして堅牢なる鈍色の重鎧、そして禍々しくも神々しい猪の面。

「ああ、なんと臭いことでしょう。悪魔の臭いがします。神の座に踏み込みし、恐れを知らぬ悪魔がいますね」
「これはこれは・・・其方様は、どちらの天使様であらせられますかな?」
「悪魔に名乗る名など持ち合わせてはいませんが、しかして私は寛容。悪魔にも寸分の慈悲を与えましょう。
 我は第十皇帝“暴食”グラ。その穢れた悪魔の血肉が我らが神の座を汚すのは不本意なれど、我が携えし
 撃退の鎚アイムールにて、貴様を、滅して差し上げましょう!」
グラと名乗る相手は、仮面越しで篭ってはいるが、声からすれば歳派同じくらいの少女だろうか。
重厚な全身鎧が、その姿からは想像しがたい疾風の如きスピードで、夜の石畳を疾走する!

「ちぃ! よもやとは思ったが、本当に『七頭十角』が出てくるとはな!」
「あらまぁ銃ですか? なんと大きな・・・ですが、無粋なものはこの場には相応しくありませんわね!」

苓の愛銃ヴァンデッタから放たれる、常人には扱えない異常な口径の徹甲弾が、悉くグラのメイスに砕かれる。
(弾いたのではない・・・砕いたのか! しかも、あの鎧で、あの体躯で、よくここまでの動きが・・・!)
まるでドレスの如く翻る鎧、まるで天使の翼の如くはためく髪、その流麗なる動きは、まさに仮面舞踏。
飛び交う弾丸を全て砕いたグラは、苓に向き直り、アイムールを突き付ける。
「あらあら、どうされまして? 何時までも、人の皮を被っていることもないでしょうに」
「流石は恭光庁が擁する、世に名高き神聖なる闇の仕置人・・・やってくれる!」
左手首に隠し持つ単分子ワイヤーを、幻燈機の灯りに紛れ奔らせる・・・が
「このような小細工、下郎ならば通じるでしょうが、私には無意味! 迸れ、『ベルゼブブ』!」
重厚な鎧にとって数少ない装飾である胸元の宝玉、聖石プリズムを透過して、聖痕「ベルゼブブ」が輝く!

「なるほど、腐食の力か・・・このワイヤー、精製するのは結構面倒なんだがな」
「あらあら、ごめんなさいね。で、次は何が出るのです?」

右掌の証印に気配は感じられない。少なくても今は、その時ではないということか・・・。
「そろそろ、待つのも、追うのも、払うのも、飽きましたわ。いい加減、潰されていただけませんこと?」
そう言われて意気揚々と潰されに行くような奴は、苓の知る限りでは一人しか居ない。
その馬鹿野郎はここにはいない。さらに質の悪いことに、最終最後の相棒は絶賛居留守中。
(やはり、変なところでツキが回ってこないのは、性分なのか・・・?)

グラの一方的な暴力の嵐が、苓をひたすらに、執拗に、狙い続ける。
傍から見ればまるで踊っているかのようにも見えるのだろうが、生憎と観客は一人として居ない。
「ふふふ、逃げ回るのだけは、お上手ですのねぇ? ほらほら、どうしたのかしらぁ?」
「ちぃ!? 流石にやってくれる!」
あらゆるものを腐食させる「ベルゼブブ」の波動と、先端の神鉄に込められた神滅の呪術の力により
触れたものは神でも破砕するアイムール、圧倒的な破壊力を持って迫る腐食と破砕の波状攻撃に、
苓は次第に劣勢に追い込まれる。

だが、こんなところで、友との約束を反故にするわけにもいかない。
不本意ながら、久方ぶりに、真化するしかないか・・・!
「来い、青鴉! 蒼鴉!」
呼びかけるや否や、苓の影から二匹の鴉が飛び出て、黒羽を散らしながら苓の周囲を飛び交う。

「へぇ・・・カラスの霊を影に飼うとは。全く以って、悪魔の趣味は解せませんわねぇ」
「何とでも言え・・・事前に言っておく。ここから先に関しては、身の保障は出来かねる」
「あらあらあらあらぁ? 今まで何も出来なかったというのに、今更何を仰ってらっしゃいまして?
 そんなカラスの霊の一匹や二匹呼び出したところで、今更何が出来るというのですか?」
「それがな、いろいろ出来るんだよ・・・これがな!」
色々と問題があるので使いたくはなかったのだが、「真化」すれば充分渡り合えるはずだ!

「あらあら、何を・・・!?」
「っっっっらっしゃあああ! おおおおおおおおおおおおお!」
苓の頭部、両のこめかみから角が生える。首筋からは、背骨状の尾のようなものが生える。
四肢は鋭く剣のように研ぎ澄まされ、背は翼、否、翼の如き剣の束を生み出す。
双眸は人ならざる輝きを放ち、「真化」、苓の存在定義は、人ならざる魔性に切り替わる。
現世に現れた魔人の身を、二匹の鴉が、宵闇より尚黒い、光すら飲み込む暗黒のコートとなって包み込む。

「ようやく、お出ましですわね・・・ ふふふ、ようやく楽しめそうね。ここからが、始まりと言った所で」
「すらない。終わりだ、あばずれ」
距離にすれば、20mは離れていたはず。苓の右手が一瞬にしてグラの顔面、猪の面を鷲掴みにし、そのまま
「壁にでも張り付いていろ!」
「なぁ!? くぅ・・・放しな、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
グラの身体は遙か後方、渓谷の岩壁に叩きつけられる!

激突し、くぼんだ境界壁から身を乗り出し、次なる反撃のために、アイムールを握る右手に力を籠める。
「が・・・く、う、悪魔め、よもやこれほどとは・・・ですが!」
「張り付いていろと言ったはずだが?」
「悪魔の言うことなんて! いちいち聞いていられませんわねぇ! 黙らせて差し上げますわ!」

華奢な腕から繰り出されたものとは思えない轟音を響かせ、フルスイングのアイムールが苓の頭部目掛け
華麗なる弧を描きながら空を翔け・・・そして
「あいよ、っと・・・いや、重量があるだけに痺れるねぇ・・・」
「なん・・・ですって・・・!? アイムールの神鉄は神をも砕くはず! なのにこんな悪魔一匹の片手すら
 砕けないなんてことが!」
「世の中なんてそんなものだ。絶対なんてものは存在しない」
「だとしても、生者必衰、万物流転の定めまでは変えられはしませんわ! この距離で避けることが出来まして?

 喰らいなさい、『ベルゼブブ』の輝きを! 魂まで腐り果ててしまいなさい!」

胸元の聖痕の輝きが、鎧の胸部に据えられた聖石プリズムにより集束、あるいは拡散。
周囲は神々しき腐食の輝きで多い尽くされ、満たされ、生あるものは腐敗し、崩れ去る・・・。

「・・・で、何が、どう、なるって?」

「・・・そんな・・・嘘、でしょう!? 何も、変化、しないなんて・・・!」
「つまらん。たかだか神の御業如きで対抗しようってのが、そもそも間違っているのだが」
「そんな、何がどうなって」
「そろそろ大道芸に付き合うのも飽きたな。そいじゃ、ちょっとばっかし、別の、楽しみをだな」
「隙だらけでしてよ! 今度こそ、その余裕面に神の鉄槌を叩き込んで差し上げますわぁ!」
再び唸りを上げて揮われるアイムールの破壊の旋風は
「はいはい、こんな物騒なもん振り回してんなって」
苓の額に命中するも、こつんと音がした以外には何事も起こることなく、吹き止む。

「どうして・・・!? こんなこと今までなかったのに!」
「さっきから、そればっかりだな。思考停止してるなよ。さて、それじゃまずは・・・」
距離を離し余裕の笑みで腕組みする苓。背中の剣翼がしゃなりと音を立てると、羽根の如く小剣が舞い散り、
「磔、だな」
小剣は空を舞い、地を翔け、グラへと疾走する!
「こんなモノが通じるとでも、お思いでして? この程度、軽くいなして差し上げましてよ!」
ひたすらにアイムールを薙ぎ、迫り来る小剣の乱舞を次々と撃墜する!

「ほぅ、なら、これはどうだ?」
剣翼が翻る。宙に舞い出でるは、先ほどまでとは違い、長剣の群れ。
「何が来ても、同じですわ! その羽から出るものが無くなるまで、叩き落として差し上げましょう!」

やはり小剣の時と同じく、直線的に迫りくる長剣も、目標に辿り付く事すら出来ず、全て砕け散る。
「なるほど、ね。よくやる」

「これなら、貴方の方がよっぽど大道芸ですわね。お次は大剣、斬馬刀あたりかしら?」
「そうか、ならばリクエストには応えねば、な」
三度剣翼が翻る。苓の背後には、並の大人の背丈もあるような大剣、馬上刀、斬馬刀が旋回する。

「三度目の正直、ですの? 残念、二度あることは三度ある、ですわ! こんな安い芸で私を討てるなどと
 思われては困りますわ!」
やはり次々と撃墜されていく剣の羽。だが苓の表情には、何の変化もない。
「で、こいつはオマケだ。受け取ってくれたまえ」
頭上に翳した平手の先、上空には
「なぁ!? 何ですの、その非常識な大きさは!?」
「さあ、美しき騎士姫に捧げる、せめてもの贈り物だ。受け取ってくれたまえ」
振り下ろした手の動きに呼応し、頭上に掲げられた、剣と呼ぶには余りにも馬鹿馬鹿しい大きさの、
神話に謳われた巨人ですらも持て余すような、巨大な剣が、天より堕ちる。

「ええい、いい加減煩わしいですわ! 輝け、『ベルゼブブ』!」
聖石プリズムにより拡散させられた光が飛来する刃を明るく照らし出し、そして腐らせる。
超巨大な、もはや鋼の塊以外の何物でもない剣の形をした鈍器も、聖痕の輝きに触れた所から腐り果てる。
「ふん、このようなもので私を拘束しようなど」
「何処を見ている」

極自然に、まるでそうである事が必然であるかのように、グラの傍らに立つ苓が手にした光槍が、
グラの右足膝から下を深く抉りこみ、床と縫い付ける。
「がああああああああああああ!!!!!!!!!」
「ふむ、やはり直接内側を叩く方が効く・・・まぁ、その身体なら、当然か」
「な・・・・なぜそれに、が、あ、ああああああああああああああ!?」
苓は突き刺した光槍を揺すり、抉りこみながら、疑問に返答する。
「ここまで濃密度、高精度かつ確固たる存在として確立するほどだ。一目視れば分かる」

現世にあるものに触れることが出来る、身に付けることも出来る、そして一個の存在として自我を持ち、
万人に認識され、人間としての存在を許される。それほどの高次の段階に至れる霊など滅多に
会えるものではないのだが、元を質せば霊であることに変わりはない。
真化した今の状態ならば、霊素体そのものを叩くことにも、何ら不自由はしない。

「ううううううああああああああああああ!!!!」
「これで両足、と」
もう一本の光槍が、グラの左足を具足ごと脹脛側から貫通し、さらに足の甲を貫き地面に食い込む。
「たとえ足が使えずとも・・・この腕が揮えるならばぁぁぁぁ!!!!!」
内側から直接魂を焼く痛みに耐え、両手にアイムールを構え、脚が焼け付くのも厭わぬ決死の覚悟で
フルスイングを打ち込む!

「いい加減、無駄だと理解しているものと思ったが・・・さて、もう満足したかな?」
「ああああ・・・うう・・・く、もう、満足でしょう・・・一思いに、殺しなさいな・・・」
「あーあー、すっかりしおらしくなっちゃってまぁ・・・とはいっても、殺りはしないんだけどな」
「・・・ずいぶんと、いいご趣味だことで」
「挑発のつもりか? 形質維持不能による霊素拡散を装って、源体に帰るつもりなのだろう?
 わざわざ霊素の槍で繋ぎ止めたんだ、そんなつまらないことをさせるか」
「ぐ、き、さま、あぐううううううううううううう!?」
先ほどまで手に構えていたアイムールは先端を地に埋め、両の腕は肘と手の二箇所をUの字に曲げられた
光槍に射抜かれ、地と結び付けられている。

「さて、と・・・となると、次に邪魔になるのは・・・これだな」
怪しく煌く苓の視線と右手が向うのは・・・ただ一箇所だけに装飾が施された、胸鎧。
「ふん・・・下衆の考えそうなことですわね・・・慰み者にでも、するつもりかしら・・・」
(好きになさいな・・・どうせこの体は、生身ではないのだから、何をされたところで・・・)

胸鎧を剥ぎ取られ、薄手のドレスにも似たアンダーウェアが露出する。
「ほうほう・・・これは、なんとも・・・貧そ、いや、まぁ嫌いではないな。」
「・・・そう、それはどうも。下衆の好みでは嬉しくはありませんが」
「さて、先ずは、その可愛らしい胸から、楽しませて頂こうかな・・・」
苓の手が、胸に伸びる。

「ふむふむ・・・成程、これはいいものだな・・・」
「・・・そんな行為の、どこが楽しいのかしら・・・? 理解しがたい、ですわね」
むにむにと揉まれる、決して豊満とは言えないまでもお年頃の女性らしい膨らみ。
生身のある普通の女性であれば、この恥辱に塗れた汚らわしい一方的な行為に嫌悪感を抱くのだろうが、
自分にはそんな肉体的感覚を知覚するような肉体がそもそもない。
目の前の悪鬼の行為も、ただの愚かしくも馬鹿らしい一人相撲でしかな
「!? ・・・・っ?」

(何・・・? 今の、かん、か、く、は・・・?)
一瞬、思考に霞がかかったような感覚に襲われる。だが、そもそもそんな感覚に陥ること事態ありえない。
「ふむ、いい表情だ。何が起こっているのか理解できない、どういう感覚なのか理解できない、
 そんなところかな?」
「さぁ、て、なんの、ことかし、ら・・・?」
「まぁすぐに分かるさ。とりあえず、そのご尊顔を拝ませてもらおうじゃないの」
左手で乳房を弄びつつ、右手で荒々しい猪の面に掴みかかり、顔から剥ぎ取る。
「ほう、これは・・・なるほど、オマエが『おねえちゃん』か」
「な・・・っ!? 貴様、あの娘に、何を!」
「な~んも? かわいい娘だとは思うがね。・・・ここで『おねえちゃん』がどうかしちゃったら、
 どうにかなっちまうかも、知れんが、ね?」

「・・・うううううううあああああああああ!!! きさまああああああああああああ!!!!」

あらゆる意味で自分の全て、大事な妹のフレアリンに害を為すやも知れんこの悪魔は、たとえこの魂が
砕けようとも、許すわけには・・・決して、存在を、許すわけには、いかない!
たとえ腕が千切れようと、足が裂けようと、この手で、あの悪鬼を・・・!
「おーおー、頑張るねぇ・・・ご自慢のメイスはここ、スティグマは効かない、そして地面に縫い付けられ、
 あとは何が出来るのかなぁ?」
「だとしても、だとしても、だとしても! 貴様を生かして、なるものかああああああああ!!!」
手足から、抵抗する体の律動に合わせ、魂が焼ける硝煙が立ち上り、だがしかし、グラは、前進する事を、
諦めることはない!
「おおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああっ!? もご、が、むぐ、む!?」
「喧しい、黙っていろ」
苓の首筋から伸びる、背骨を引き出して伸ばしたような形状の、尾のようなものが、グラの口を塞ぐ。

「むぐ、む、ぐ、、ぐぐぐぐうううううううう!!!」
「人間の顎の力程度で噛み切れるほど柔ではなくてね。さて、それじゃ、続きを楽しませてもらうとするか」
悠然と歩み寄る苓を睨みつけるグラだが、先ほどから霊素体で出来ている筈の全身を駆け巡る奇妙な感覚を
理解できない困惑を、隠しきることも出来ない。
「まずは、あまり暴れられても困るのでね、ちょっと縛ろうか」
「むぐ、むー、む、ぐぐぐむがもがぁ!?」
抵抗するグラの頭部を押さえつけ、その額の中央に、苓の人差し指が、つぷり、と埋まる。
「もごごごがががががががごごごがああああああああああ!?」
「・・・さて、出来た。とりあえず、楽にしてやろう」
四肢を射抜く光槍が消滅し、喉を侵す頭尾と額を貫く指が抜ける。魂を直接焼く拘束から開放されたグラだが
(な・・・ぁっ!? からだが・・・うごか、ない・・・!? )

為す術なく、膝から崩れ落ちるグラ。
「さて、肉体の支配を奪われた気分はどうかな、ヴェアトリーチェ」
「貴様・・・先ほど、私の記憶を盗み読んだのですか! 恥を知りなさい!」
「まぁ、魂だけの存在なんて珍しいのでね。とりあえず、いろいろと面白いことが分かって何より」
「・・・下衆めが! この身が自由になれば、貴様など」
「さっきまで何も出来なかったのにか? 笑わせる。それでは、先ほどの続きといこうか」
頭尾が器用にヴェアトリーチェの両腕をまとめて縛り上げ、意のままにならない肢体を宙吊りにする。

「くぅ・・・! どうして、どうして動かないの! 私の体、私の魂なのにぃ!」
「ま、その辺を弄る手管については人間風情に比べれば長けていてね。特にお前みたいな霊素体は特に
 手の加え甲斐があるというものでね。さて、それでは、楽しませてもらうとするか・・・」

悪鬼による、狂気の暴虐が、始まる。


【この間の事は見せられないよ!】


「ふわあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ローマ市内、ヴァチカンに程近い所にある、天子教の職員・騎士団員の宿舎の一室。
フレアリンは突如バカでかい叫び声とともに、ベッドから跳ね起きる。
「むぅ~・・・どうか、したんですか、フレアリンさん?」
「な、な、な、なななななんでもナイのデすヨわワちゃン!? 夜中に大声出してごめんなサイ!
 ちょっと、夢見が悪かっただけナのですヨ? ちょっとシャワーでも浴びてから寝なおすことにしますね」
「そうですか・・・それでは、おやすみなさい・・・すぅ、すぅ・・・」

「はぅ・・・なんで、あんな夢、見ちゃったんでしょう・・・? よりにもよって、お知り合いになって
 まだ1日2日の人なのに・・・どうか、してしまったんでしょうかぁ・・・?」

なぜ見てしまったのか良く分からない夢の中身に、動悸の高鳴りと顔の熱りを感じずにはいられなかった。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。