~Another World~ ある夏の午後 前編


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「その目は本気なんだね。それでいいの?アリスは…」
「いいの」
「本気、なんだね」
「…ごめんなさい死神さん。貴女には嫌な思いばかりさせるわ」
「どうするかは私が決めるわ」
「…そうね。貴女にお任せするわ。嫌なことを沢山した私にそんな権利ないもの」
「…」
「エステリーゼよ。私の本当の名前。覚えておいて」
「…それがワンダーワールドの本当の名前なんだね」
「アリスが、お姉ちゃんが教えてくれたわ」
「エステルよ」
「え?」
「私の本当の名前。この名前を教えたのは貴女が初めて」
「…ありがとう。決して忘れないわ」
「私も忘れない」
「私と同じ名前だなんてパクりなんです?まぁ許してあげるんです?」

ピンク色の髪の毛をした、一匹の魔物がニヤリと笑い
YES!YES!と奇声を発していた

「う、うわあぁぁあぁぁぁあ!」
<デスメタル様、如何なされましたか!?>

最悪だ。最低すぎる夢をみた。よりによってなんて夢だ
それ以上になんだあの化け物は
私もあの子も、そんな糞溜まりに落ちた隕石みたいな名前じゃない

「ごめん、なんでもないよヘヴィメタル…」

寝汗で体がベトベト。気持ち悪い…
無駄なお金を使いたくないけど、銭湯にいって汗を流そう…
ネグリジェの上からローブを纏う
勿論ローブはクリブラオリジナル。何故ならそれは特別な存在だからです

「お金では買えない価値がある」
<デスメタル様、何か仰いましたか?>
「…なんでもない。留守番お願い」

独り言を聞かれ、少し恥ずかしい
赤い顔を見られたくないので、フードを深々と被り部屋を後にする
外に出ると同時に、ミーンミーンという蝉の鳴き声が、私の耳に飛び込んでくる
ミーンミーンミーン。私は日本の四季が好きだ。時折うるさいが、味わい深い
ミーンミーンミーンズドンズドンズドン
ズドンズドンズドン…?蝉の声に交じって、何か変な音が遥か上、天鏡宮から聞こえてくる
それは、塊であった。白と黒の塊が、階段を転がり落ちてくるのだ
階段から酷く無様な白と黒が転がり落ち私を横切り壁に激突した
私は見ないふりをして“ソレ”に関わらないように銭湯に向かう。向かおうとした

「チョット…待ちなさいよ…」

足を掴まれて先に進めない
「げ」と品のない声が口からこぼれそうになるのを、必死で押し殺して
私は、シンフォニックメタルが変化した看板に一言

『はなせ』

と書き込むと、その物体をなるべく見ないように眼をそらした
白状しよう。私はこの無様な物体が何か、見当がついていた

「お姉ちゃんも私も、貴女の叫び声に心配して飛び出してきたのに、それを無視する気?」
「デスメタル、大丈夫…?」
『大丈夫じゃなきゃ、外出しない』

上に住む姉妹である。ただの姉妹ではなく、私にとって親友ともいえる姉妹である
さらに白状しよう。私はこの二人が大好きだ
だが、今このタイミングで出会いたくはなかった
別に、無様にもつれあって転がった挙句、スカートがめくれあがってるその姿が恥ずかしくて
知り合いに思われたくないとか、そんな理由ではない

「外出?何処に行くの?」

ほら来た。これが嫌だったのだ

『散歩』
「お姉ちゃん、散歩らしいよ」
「今一瞬固まったよね?あやしぃなぁ…」
「あれ?その手に持ってるのは何?」


「まずい」と思い私は、お風呂セットを後ろに隠して、足早にその場を立ち去ろうとするのだが
アリスが先に進ませてはくれない。えぇい、なんだこの勘の良さは
花子みたな年上の人ならまだしも、この子達と今行動を共にするわけにはいかない

「お姉ちゃん、このみすぼらしいプラスティックの桶みたいなのは何かしら」
「あ、それはお風呂で使うんだよ。って事はデスメタルはお風呂にいこうとしてたんだね」
「お風呂?お風呂なら部屋のを使えばいいじゃない」
「違うよ、デスメタルの部屋にはお風呂がないんだよ」
「え!?どの部屋にも大理石風呂ついてるものじゃなかったの…?ジャグジーないの?」
「それはアリスの部屋だけなんだよ」
「そうなんだ。でも、お風呂がないならシャワーを浴びればいいじゃない」
「あのね、デスメタルの部屋にはシャワーとかないんだよ」

考えられない!何なの?人なの!?といった形相で――。は私を見ている
そうだよ、人だよ、デスメタルだよ。と心の中で返して、風呂桶を奪取し
私はそそくさと、その場を後にする
アリスが余計な一言を言う前に、何としてでも逃げなければ

「まって、アリスも行くー!」
「興味深いから私も行くわ。部屋に風呂もシャワーもない人がどうするのか気になるもの」
「まって、アリスも行くー!」
「興味深いから私も行くわ。部屋に風呂もシャワーもない人がどうするのか気になるもの」

嗚呼、神様…。こうなるのがわかってたから嫌だったんだ
結局、私は押しに弱いからこの姉妹の動向を許してしまう
日本人はNoといえないらしいけど、何もそれは日本人だけに限った話じゃないだろう、と今更ながら思うのだ

「へぇ…。日本には銭湯という公共浴場システムが確立されているのね」
「――。は難しい言葉を知ってるね。そう言う事になるのかな」
「けど、お姉ちゃん。それって汚くないの?」
「え?」
「だって、身体の汚れを落とす場所がお風呂でしょう?みんなが汚れを落としにきたら
 お湯が汚れるじゃない。そんな汚れたお湯で綺麗になるの?」
「え…あ…」
「不潔ね、日本人は」
「あのね、――。家にお風呂がなくて銭湯に行く人だっているんだから、そんな事言っちゃダメだよ」
「どうして?それは言論の統制なの?言語弾圧?黒い服着てるし、お姉ちゃんはファシストなの?」
「え…?ファシ…なに? ごめんね。お姉ちゃんよく言ってる意味がわからないや」
「お風呂の湯は二日も貼り替えずに置くと、大腸菌の数が隅田川を超えるというわ。ますます汚れに行くようなものよ」



ボロクソであった。すいませんね。いつもそんな所で身体を綺麗にしてて
けど、そう言われるほど酷いものじゃないし、お湯だって綺麗だ
反論してやりたくなったけど、上手く口でその事を伝えれる気がしないので、グっと堪えた
ちなみにファシストは黒を象徴色にしていた。彼女はそれを言いたいのだろう

アリス2号よ、ならば何故ついてくる
アリスは苦笑いしながら、こっちに向かって手を合わせてくる。仕方ない。許してやろう
それにしても暑い。四季は好きだが、暑いのはたまらない

「そういえば、なんで夏でもローブなの?」
「それはきっと、正体を隠すためだと思うよ」

ナイスフォロー

「だってもう、みんな知ってるじゃない。いったい誰から隠れるの?それに襲われても
 デスメタルめちゃくちゃ強いじゃない。私とお姉ちゃんが同時にかかっても勝てないくらい。一体そんなの誰が襲
うの」
「えーっと…」
「それに銭湯に行くということは、全裸になるんでしょう?正体も糞もないじゃない。しかも今は夏よ?暑くないの?
マゾなの?」
「えーっと…んーと…」

あれ。おかしいな。マゾは――。の方だったはずなのに
アリスは――。の疑問に答えるために、そして私をフォローするために頭を抱えてくれている

「あ!」
「何?お姉ちゃん」
「ファッション!」
「はぁ?」
「ファッションだよ。――。人の趣味にケチをつけるのはよくないよ」
「ファッション…ねぇ。夏なのに、趣味が悪いわ」

そんなフォローの仕方は無い。それは無い

もう言われたい放題である。言い返さない私も悪いけど、言い返せる自信がない

「待って。デスメタルはそんなに頭の悪い女じゃないわ」
「うん、デスメタルは賢い子だよ」
「と、なると…わかったわ!」」
「何?」
「きっとアレよ。キャラ作り」
「キャラ作り?」
「うん、きっとそうよ。そうに違いないわ。デスメタルったらあざと~い」
「…そうなの?デスメタル」

不安そうな顔でアリスは私の顔を覗き込む
やめて、そんな目で見ないで。なんでこんなにぼろくそなの
アリスの心配そうな視線と、――。のニヤニヤと笑いかける視線、その二つの視線を受け私の中の何かが切れた

「…さまを」
「あ、喋った!デスメタルが喋った!」
「ダメだよ。せっかく喋ったんだからちゃんと聞いてあげないと。どうしたの?デスメタル」
「見るか、星々の砕ける様を…!」

季節は夏、焼けつくような日差しがアスファルトを焦がす中
少女たちは元気に笑っていた

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