十六聖天外伝 雪月華の章 第七幕


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―1ヶ月前 十大聖天本部
十大聖天五位…確かにあの人は、私にそういった
だけど実際にはクリステル・キャロルというアリスの作られた姉妹が五位だった
だから、私は西園寺さんに無理を言って、本部防衛任務から、十大聖天本部攻撃メンバーに加えてもらった
姉さんを狂気から解放するために、助けだすために
そして今、私は十大聖天の本拠地である塔を駆けのぼってる
凄まじい戦闘音が下からも上からも聞こえる
みんな、戦っているのだ…命をかけて
すでに田中さんが倒れたと聞く。これ以上犠牲が出なければいいのに…
もし、その犠牲を生み出しているのが、姉さんなら私は…
一緒に上を目指している次郎さんが、私を気遣ってそんな事を言ってくれてる
素直にうれしい。この人の側にいると、自信と安心感が湧いてくるから不思議だ
そんな時である

「!!」
「おい、どうした花子」
「…いない」

断続的に続いた階下の戦闘音が消えた。恐らく下の戦いは決着がついたのだろう
そのおかげ、私は辺り一帯の音を全て聞き取ることが出来た
それ故に、気づいてしまった
ここに、姉さんはいない。姉の呼吸音や気配を一切感じないのだ

「姉様、ここにはいないッス…」
「けどお前の姉さんは十大聖天5位なんじゃねェのか?」
「その筈ッス。ワタシは確かにそう姉から聞いたッス…」
「5位っていや序列的に考えりゃ上位だよな。そんな奴が本部が襲われてるのに出てこない…?どういうこった」


全く同感だ。一体姉は何を考えているのだろう…
だが、どうやら考えている時間はなさそうだ

「…次郎さん、先に進んでほしいッス」
「ん?」
「階下から凄い数の兵士が向かってるッス。ここはワタシが足止めするから、早く」
「オイオイ、無茶言うなよ。女を残して先にいけってか?」

本当は今すぐにでも上に駆け上がりたいだろうに
次郎さんは私を気遣って笑ってくれてる。この人はこんな所で時間をと費やしている場合じゃない
一刻も早く、上にいかないといけないのだ
だから私は少し真面目に、次郎さんに話かけた

「次郎さん」
「…何だ」
「お願いします」
「何をだ?」
「アリスを、これから起こりうる全てを」
「こいつは、手厳しいな」
「そうですよ。私はズルイ女なんです。厳しい事を貴方に押し付けているんですから」

槍や剣、さまざまな刃物が頭上から降り注ぐ
これはきっとアリスナンバーズの…。なるほど、追手はすべてこの類か…
なら、尚更次郎さんはこんな所で時間を食う訳にはいかない

「さぁ行って!」
「死ぬんじゃねーぞ、花子!」

遠ざかる次郎さんの足音を耳に、私は階下に殺到したアリスナンバーズに向けて
三味線を弾く。戦うのも、傷つけるのも本当は好きじゃないけど

「華京院が三女にして、華京院家次期当主、華京院華子と申します。ここから先は家名にかけ、一歩も通しません」

そしてあの戦いから一か月
雪が深々と降るある日、西園寺さんに招かれ、私は彼の屋敷に足を運んでいた
客間に招かれると、既にそこには次郎さんをはじめとした十六聖天が揃っている
デスメタルやアリスの姿がないのは、恐らく先の戦いで激しい戦いをした彼女たちを気遣ってのことだろう
どうやら私が最後だったらしい。部屋に入って5分ほどたった頃だろうか

「あ~ 新年会で顔合わせた人が殆どやろけど、今年初めての人もおるみたいやから
 先に言わせて貰います。あけましておめでとございます」

いつからその場所にいたのだろうか。気がつけば西園寺さんが笑いながら
深々と礼をしていた。

「あぁ、あと、わざわざこんな京都まで来てもろて、悪いですなぁ」
「そんな事より、何故京都に呼び出されたのかを聞いてみたいものじゃのぅ」

カリ婆さんは少し不機嫌そうな顔で、西園寺さんを見ていた
(後で聞いた話だが、ハードディスクレコーダーを買ったはいいものの、録画方法が理解できず、怒っていたらしい)

各々の感情はともかく、みんな何故呼び出されたのかを知りたいという気持ちでは同じだった
重苦しい沈黙が部屋を包む。なんだろう、この嫌な感じは。息苦しさを覚え、私は部屋の外に目を向ける
雪はまだ、降り続いていた。

「十大聖天はまだ滅んでないみたいですなぁ」

半ばそんな気はしていた。だが、改めてそう言われると、なんだか現実味がない
だけど、普段ニコニコしてる西園寺さんが、真剣な眼差しを私たちに向けている
それはきっと間違いのない事なのだろう

「次郎さんの前で突如姿を消したゲームマスター。そして現在でも遺体が発見されていない一部幹部
 そして花子さんの姉である雪子さんの、十大聖天5位という発言…実際その地位にいたのはクリステル…そして、
その雪子さんは」
「本拠地にもいなかった」

月子姉さんの凛とした声が、部屋に響いた。
西園寺さんと同じく、音もなく現れた姉さんは
西園寺さんに一礼すると、一言

「西園寺様、連中の動向がつかめました。敵の名は」

最後までそれを言い終えるに、姉さんの顔色が変わる
その理由は私にもわかる。この呼吸音、心拍数、息使い、間違いない…!

ガラスの砕け散る音と共に、何か大きなものが部屋に転がり込んでくる
シルヴィアさんが息を飲んだのがわかる
その大きなもの、それは田中さんだった。田中さんだけじゃない。斎藤さんまで…
そして、田中さん達をこんな姿にした人物
―深々と降り積もる雪の中、雪子姉さんは微笑んでいた

「真・十大聖天といいますの。覚えておいてくださいましね」

それは雪の降る日の出来事
私たち十六聖天と、真・十大聖天の長い長い戦いの幕開けだった

クリムゾンブロウ曰く「爪楊枝は、無理かな」
ブラックパイソン曰く「痛いのはダメだよ。泣いてしまう」
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