闇伝 外道対外道12


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全身で、あらゆる物事の向こう側を見通す感覚。
ヴェールの向こうへ、静かに刃を付き立て、切り裂き、押し入る感覚。

目を開ければ、そこには全てが灰色の世界があった。

「・・・っ!? が、は、  はぁ、はぁ、はぁ・・・く、そ、まだ、この程度か・・・」
ニシキとの闘いを経て垣間見た「裏殺し」の一端。全てあるようで何もない世界への侵入。
何もない世界に自分だけが確固たる存在として在ることを常に認識し続けるというのは、
回答が当初想像していた以上に過酷なものであった。
(あの世界が、親父が垣間見ていた世界・・・親父、貴方は、本当に凄い人だったんだな・・・)
あらゆる意味で、まだまだ及ばない。そう痛感せざるを得るなかった。

「お、何だよ社長。また特訓か? 目が覚めてからこっち、そればっかじゃねぇか。大丈夫か?」
「キートンか・・・ああ、問題ない。少しでも早く、あの感覚を、この身に覚えさせないとな」
「ま、そこは俺らにゃ絶対に理解できない世界だから、社長がしたいのならとことんやりゃいいさ。
 だがな、一応年長者の意見として言わせて貰うと、根を詰め過ぎるのは毒だぜ?」
「ああ、そうだな・・・」
「そうときまりゃ善は急げだ。メシができてんぜ、ここいらで一休みと行こうや」
「もう、そんな時間か・・・分かった。直に行く」
キートンの弁も尤もだろう。あの世界は、身を置くだけでも相当の気力と精神力を削られる。
疲労と空腹を抱えた状態では、練習にもなりはするまい。

「あ、やっと来ましたね社長。それじゃ、食事にしましょう」
「おー! メシだー! ・・・でもひもじいよぅあやちゃん」

裏社会の御尋ね者の強さのバロメーターとも呼ばれる世界裏社会人賞金首ランクでも、通称Rule Breakerや
他の地下組織の長・大幹部といった超大物レベルには未だ及ばないものの、それなりの賞金首である4人。
たとえお天道様が全力全開フルパワーでオーバーヒートしている日中だろうと、衆人環視の下に身を晒すのは
危険そのものである。故に
「うう・・・そろそろ賞味期限がヤバい缶詰は飽きてきたよぅ・・・思わず言葉に漢字が混じるくらい」
「う~ん、でも、私達4人とも、少なくとも社の皆さんにはそれなりに顔は知られているから、
 表に出れば所在が気付かれる危険性があるし・・・キートンさんの能力で、どうにかなりませんか?」
「オイオイ・・・いくらオレが他人に憑依できるからって、たった三分で買い物して来い、ってか?
 ソイツぁ流石に無理ってもんだぜ殺人」
「そこを頑張れよオメェよー。ったく使えねぇなぁ。いいからとっとと行って来いよ」
「イキナリやさぐれてんなぁ!? だったらお前が行けばいいじゃねぇかよ萩の月!」
「お腹空いた。面倒。嫌。とっとと行って来いよ月詠のおっさん」
「テんメェなぁぁぁぁぁ!!」

ツギとキートンのやりとりを、やれやれといった顔で眺める回答と殺人。
回答の療養と鍛錬を兼ねての隠れ住まいは、至って平穏であった。
                                      こんこん。
はずであった。

鳴る筈のない、ノックの音が、するまでは。

「「「「っ!?」」」」
4人の意志のベクトルが一つに定まる。
窓を蹴破り全力疾そ
「おや『社長』、そんなに慌ててどちらへ行かれるのです?」
蹴破らんとしていたその窓の向こうに、その男の姿が在った。

「何だと!?」
「ちょっと早すぎやしねぇか!」
ノックがした瞬間から窓へ振り返り男の姿を視認するまで、要した時間は10秒にも満たない。
なのに何故
「『こんなに速いのか』、という表情だね、月詠君」
「んなっ!? て、テッメぇ!」
「何の何の。ちなみに種明かしをしよう。ノックをしたのは私じゃない。ヒガシが持ってきた兵隊の一人さ。
 個人的には、あれは好かないのだけれどね。こういうときには役に立つ」
「てっめ、おちょくってんのか!」
「時に落ち着きたまえ、月詠君。私は君らに用事はない。そう・・・『社長』、君だよ回答君」
「次の相手は貴方か、ウエクサさん・・・!」
「はっは、そんなんじゃないよ回答君」
いかにも人のいい、誰からも好まれる印象を与える温和な表情で、ウエクサ・・・三本槍が一人
植草鉄秀が隠れ家に近寄ってくる。

「うん、相手にすらならないんだから、相手にする必要もないよね」

キートンは強烈な一撃で腹を打ち据えられ悶絶
殺人は電光石火の一撃で首筋を強打され昏倒
ツギハギは踏み込みの勢いのまま繰り出されたケンカキックを顔面に受け壁に激突
回答はいわゆるベアクローの要領で顔面を掴まれ、片腕でその身を持ち上げられている。

「ニシキ君が今刈り取るのを諦めたのも、分かる気がするよ。瞬殺じゃないか。お父上なら、ここまで
 踏み込まれる前に、僕の命を奪いにかかってるね。そうでなくとも、あれだけ前口上があったんだ。
 馬鹿正直に聞いていることもなかったろうに」
「ぐ、あ、が、ああああああ!?」
「うん、頭蓋骨が軋む音がしているね、回答君。もう少し緊迫感というか、生死の境界という物を
 身近に感じないと駄目だよ。そこで無様に転がっている君達もだ。己の立場をもっと理解なさい」
そう言うと、無造作に回答の顔面を掴んでいた手を離す。
「が、ぐぅぅぅ・・・どういう、つもりですか、ウエクサさん」
「何、ちょっと君らの尻を叩きに来ただけさ。君らが余りにも不甲斐無いからね。まぁ既に我々の目的は
 果たせたようなものだし、あとに残るのは私情だけさ」
「目的、だと・・・?」
「そう、目的があってのことだ。それは君には決して言えないし、言わないが」
「目的が何かは知らないが、親父の『ダンタリオン』を、人体改造にクローニングまでやるような
 外道集団に売り渡すことも、その目的を果たすための一要因とでも言うのか?」
「僕には分からないけど、ヒガシとしては目的を果たすための手段であったことは間違いないね。
 その上で彼は、最終的には君と相見えることを望んでいる」
「俺、と・・・?」
「そう。でも、今の君じゃ彼の望みは叶えられない。そこで、だ。僕が協力しよう」
「ぐは、うう・・・つつ、ど、どういうつもりだよテメぇ・・・? アンタら先代派は、社長や俺たちを、
 打倒したいんじゃ・・・なかったのか?」
それは、回答も疑問に思っていたところだ。確かに、彼の言うとおり、我々を殺ることなど彼にとっては
造作もないことだろう。
なのに何故力を貸すなどと言うのか。それは目的とは真逆ではないのか。

「はっは、こんなことを申し出る自分が信じられない、という顔だね。まぁいいさ。とりあえず、
 君ら、特に『社長』にはもっと強くなってもらわないといけないのさ」
「・・・信じて、いいのか?」
「さぁどうだろうね。もしかしたら、特訓にかこつけて、君らをバッサリ   

                                        かも知れないよ?」
「ちっ・・・冗談きっついぜ」
「だが、助かる。正直、一人で出来る鍛錬にも限界があると感じていたところだ」
「まったく、君らは気楽なものですね。まぁいいでしょう。とはいえ時間は少ない。さっさと始めますよ」
「・・・それは、貴方のいう『目的』に適う、とでもいうのか?」
「そう、とも言える。でも、そうでない、とも言えるかな。さぁ、とっとと起きるんだ、少年少女」

その日から、ウエクサによる厳しい鍛錬が始まる。
肉体的な鍛錬と、精神的な鍛錬。
諭すように、託すように、ウエクサは4人を指導する。
4人はウエクサが提供するメニューを黙々と、只管にこなす。

少年少女らの肉体に、僅かずつではあるが、確実に、着実に、闇に生きる者の力が、精神が、宿る。

一方その頃。
ルクセンブルグ大公国。
フランスとドイツに挟まれた、独立を標語に掲げる小国。
騒乱とは関係なさそうなこの国の郊外に、ちびっこ連れの金髪男と、不自然なほどに巨大な腕を持つ男が
睨み合いを始めていた

「ほう、貴様がコルベッキを殺った男か。とてもそうには見えないが」
「これはこれは、また何ともパワーファイターな髭面オヤジじゃねぇか。分かりやすくて助かるぜ」
「大した余裕だな、小僧。まぁいい、直に分かることだ。我が名はバンテッド。貴様を破壊する男の名だ。
 その身が砕かれるその間際まででも覚えておくがいい」
「・・・ふ~ん、そういうのが、きしどーせーしん、とかってヤツなのかね? どう思うよタマ」
「たまちゃんにはむずかしくてよくわかんないの。だいたいこういうときにいきよーよーとなのるひとは
 ふるぼっこにされて、はんなきであじとにかえるのがてっぱんなの」
「ほう、お嬢ちゃんもよく言うねぇ・・・だが、おじさんそんなにヤワじゃないぞぅ?」
「ひげもじゃのぶんざいでにんげんのことばをしゃべらないでほしいの。きもいの」
「だってよオッサン。ま、ここはおとなしくサックリ殺られてくれると助かるんだけどな」
「・・・」

バンテッドは落胆していた。
このような矜持も持たぬ小僧が、道楽がてらに我らに立て付こうと言うのか。
愚かしいにも程がある。嘆かわしいにも程がある。
ならば、この小僧の行く道は、私が破壊してやるべきではないだろうか。
『破壊衝動』を二つ名に持つ、この私が!

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
バンテッドは一瞬にして翠との間合いを詰め、触れた物体を瞬時に解析、最も効率的な方法で
分解する「デストラクター」を内蔵した豪腕を振り上げ、打ち下ろす!
「おお!? あぶねぇじゃねぇか!」
「無駄に避ける事などない。直に貴様をこの手で破壊してくれよう」
その豪腕は、その丸太のような巨大さからは想像出来ない様な速度で揮われ、その全てが確実に翠を
破壊するのに充分な威力をもって迫り来る!

「よ、ほ、は、っと。いやー、なんつーの? わっかりやすいねー」
「流石に一人で我らを打倒しようとしているだけのことはあるな。だがな、貴様の道はここま」

「これ、なーんだ?」

翠の両手には、肌色をした、先端から赤い液体が垂れ流しになった、棒が握られていた。
「・・・な!? んんだとぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉ!?」
「ざーんねんでした。その無駄にデカい物理破壊能力特化の腕をフェイクにして、こっちの手にある
 振動破砕の能力でこっそりと破壊しようって魂胆だったんだろ? そもそも骨格を改造して無駄に腕を
 足してる時点で歪みが出てるからバレバレだっての。あーつまらん。こんな三流改造人間しかおらんのか。
 こんなんならよっぽど昭和ライダーの敵組織のほうが優秀だっての」
「き、さ、まあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

我々の、ファウスト様の、理想が、夢が、技術が、たかだか子供番組ごときに劣るとでも言うのか!
「否、断じて否ああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「あーやだやだ。とっておきを超速攻でネタバレされて逆ギレかよ。ダメだなこの三流ペテン師。」
「まだ言うか貴様ああああああああああ!!!! 我らが偉大なるファウスト様とぉ! その崇高なる
 理念とぉ! 我らが目指すべき次代(ネクスター)をぉ! 侮辱する貴様は、絶っっっっっっ対に、許さ」

「つまらんもういい。視界から失せろ塵」

神剣フツノミタマに、強大なまでの闘気と擬似SL粒子を纏わせて、巨大な鎚を成し、振り降ろす。
瞬間、バンテッドは、ぱん、と軽い音を立て、ひしゃげ、潰れ、人であったことが分からぬほどに平らになる。
「無幻鬼神流 鎚叛逐撲。塵は塵らしく、潰れていろ」

翠とバンテッドが接敵したのとほぼ同時刻。ドイツ首都ベルリン。
ドイツの芸術を語る上では外せない、世界遺産にも登録されている博物館島(ムゼウムスィンゼル)。
ここには数多くの美術品が納められており、観光名所ともなっている。
その博物館島にある公園、ルストガルデンに立つ二人。
「・・・着いた、な」
「そうですね・・・やっぱりバカ兄遅刻だ」
「元々、待ち合わせの時間は決めてはいないがね。まぁ、その内来るだろう」
「それもそうですね。間に合えばいいけれど」
そういう二人の前に、やや痩せ型の男と、不自然なほどに両腕だけ発達した男が立ちふさがる。
「これはこれは、遠路遥々地獄へおいでませボーイ エーンド ガール? さぁさぁ、楽しませてくれよぉ?」
「極東では、こんな普通の子供までもが殺の世界に狩り出されるか。何と不憫な・・・やはり、この世界は
 偉大なるファウスト様の元に統治されねばならんな」

「何、この人たち・・・?」
「ヤツラの擁するコマンダー、だろうな」
苓と杷羽の前に立ち塞がるのは、アポカリプス・ネクスターのコマンダー、コルベッキとバンテッド。
クローニングなどお手の物。コマンダーすらも使い捨ての駒に過ぎない。
「ひゃアっハァー! たっのしもうぜェー!!」
「許せよ・・・例え童としても、我らの次代の障害となるならば、全力で叩き潰すのみ・・・!」
「我々とて、無碍に始末されるために来たわけではない! 貴様等を討ち、先に進ませてもらう!」
「ふふ・・・いい年こいて子供みたいな夢を追いかけてるなんて・・・潰してやりたくなっちゃう♪」

物理破壊の豪腕に牙を突き立てる、復讐者の弾丸の乱舞
その身に溢れる情報を武器に迫り来る凶刃を舞踏の如くに避け、放たれる鬼道の術

征雄とアポカリプス・ネクスターの血戦、火蓋切られる。
ツールボックス

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