~ケルヴィム・ケルベロスの挑戦~


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時は十六聖天と十大聖天の決戦の数日前
十大聖天の基地の一番端にある一際寂れた薄暗い部屋の部署、聖天の掃き溜めと呼ばれる総務部庶務二課で、
バン・チャーは意気消沈していた
「十六聖天との戦いが迫っているのに、今だ何の命令も下りてこない。私みたいな無能な落ちこぼれは
どうでもいいってことなのかな…」
聖天正社員ではあったが様々な作戦で失敗ばかりをしでかし、聖天候補生にもなれず、無能の烙印を押され、
この部署に送られたのである
そんなバン・チャーに声を掛ける人物が二人いた
「元気出してくださいバン・チャー様」
「そうですよ、なにか出来ないか、みんなで考えましょうよ」
聖天契約社員のド・ビンとデ・ガラシーである
二人もバン・チャーと同じで無能の落ちこぼれな為でここに配属されたのである
「そうだね、頑張って良い作戦を立てて役に立ちたいね」
二人に励まされバン・チャーは少し元気を取り戻した

「そうは言ったものの何か良いアイデアは…そうだ!確か以前月刊十大聖天に載っていたアレを使えば!!」
「何か閃いたんですかバン・チャー様?」
「うん、ちょっとゲームマスター様の所へ行ってくる」
ド・ビンとデ・ガラシーを残しバン・チャーは部屋を飛び出る

「━━というわけですゲームマスター様。どうでしょうか?」
「よろしい我が子よ、その願い聞き入れよう。計の成就を願う」
「ありがとうございます!早速準備にはいりマス。それでは失礼しマス」
ゲームマスターの所を訪れていたバン・チャーは自分の計画の了承をもらうとすぐにその場を後にした
バン・チャーが去ったのを確認するかのようにストーリーテラーが現れた
「よろしいのですか?あの様な者にジャバオッキーを与えるなどと…それにユニット・キャロルが見つからない
状態では、十分な性能が発揮できぬばかりか暴走の恐れも」
「よい。愛しい子の期待に応えるのも我が望み」
「そうであれば私は何も申しませぬ…」
ストーリーテラーは常々恐ろしく思う。この父がその慈愛で満ちた顔の裏で何を思うのかを。この自分ですら
その思慮を図りかねるということを

「戻ったよ!二人とも~」
バン・チャーは嬉々として部屋に帰ってきた
「嬉しそうですねバン・チャー様」
「何がどうなったのか教えてくださいよ」
ド・ビンとデ・ガラシーが尋ねるとバン・チャーは計画の内容を華々しく説明する
「それでは発表しマス!デデデデデデデ…ジャーン!!なんと━━」
「「なっなんだって~!!」
「にゃはは。三人で力を合わせてがんばろー」
その日、総務部庶務二課からはド・ビンとデ・ガラシーの驚き声とバン・チャーの笑い声が遅くまで
聞こえていたという

そして十六聖天と十大聖天の決戦の当日
激戦の繰り広げられている十大聖天の基地でも晴海埠頭でも無く、北緯11度21分、東経142度12分の
海上に三人はいた
「それにしてもこのジャバオッキーってすごいですね、しっぽだけでもこんなに大きいなんて」
「こんなのを使わせてもらえるなんて頑張りましたねバン・チャー様」
「私もちょっとビックリしているんだ。まさか本当に貸してもらえるとは思っていなかったから…あはは」
バン・チャーの考えた作戦はこうだ

ゲームマスターが圧縮してマリアナ海溝にギチギチに詰めこんだジャバオッキーを使って、十六聖天もろとも
地球を真っ二つにし、割れた面を十大聖天の土地として活用するという一石二鳥なものである
しかし実際に使用を許されたのはジャバオッキーのしっぽだけでだったので、少々の修正を行っての作戦行動を
余儀なくされていた。大きさと破壊力が足りなかったからである
それでもしっぽだけでも180km以上はあるのではあるが…
そのしっぽの一部を改造した生体制御室で三人は作戦を開始した
「それでは訂正作戦はっじまるよー。まず古の秘術『High water-absorbent polymer』を使って海水でしっぽを
大きくしマス。長さ40000km以上が目標かな。次に大きくしながらしっぽで海底に穴を掘り続けるよ。しっぽだけ
ではパワーが足りないので、外核まで堀進めたらそのエネルギーを吸収しちゃうんだ。そして最後に地球を
ぐるっと一周して、締付けて真っ二つ。はい出来上がり!!はい簡単でしょ」
「おおーそれはすごいですね」
「すてきすてき…」
バン・チャーの演説を聞きド・ビンとデ・ガラシーはパチパチと拍手する
「いやー照れるじゃないかい。おだだても何もでないよ///それじゃあド・ビンはしっぽの膨張制御等を担当で
デ・ガラシーは掘削とエネルギー吸収担当ね。私はその他雑用をするから、よーいスタート!」
「「アイアイさー」」
こうしてバン・チャー史上最大の作戦の火蓋が切って開かれたのである

同日━晴海埠頭
ホクバツゼッタイオーとの対決に勝利し満足し空に帰って行ったハワワイガーのセンサーに緊急コールが鳴る
「ん?この反応はパターン赤、UMAなのである。場所は…マリアナ海溝付近である。まさかヤツなのであるか?
それにしても巨大なのである」
「はわわ~。忘れていたですぅ。ジャバオッキーというのが動き出していたんですぅ」
「やはりヤツなのであるか。しかしこの疲弊した状態で戦える聖天士はもういないである。まして最終兵器と
なれば…どうするのであるか?」
「はわわ~。大丈夫ですぅ。予測の範囲内なので、策はもう講じているのですぅ」
「真であるか?では無視して早く帰るのである。乾電池が切れそうなのである。プラズマダッシュモーターは
燃費が悪いのである」
「はわわ~。それは想定外ですぅ」

同刻━マリアナ海溝付近の海上、ジャバオッキーとの距離約10km付近
「ババアの奴急すぎるで、わいにも予定っちゅうもんがあるんやで全く…」
背中に小さな羽の生えた尻尾の先が白い黄色いぬいぐるみが空を飛んでいる。大きさは子猫ほどである
「何が『妾は他に行かねばならぬ処があるゆえ、アレは汝に任せる。それに親が童と事を構える様なことは
したくないから楠。末弟の悪事は兄の責任じゃ』や。面倒ごとを押し付けよって、ホンマに」
「ん?あれやな。ここからでも見えるなんてなんて大きさや。何かしっぽだけやし。これはえろう骨が折れそうやで」

十六聖天裏第三位ケルヴィム・ケルベロス。ハワワイザーの策とはこの事であった。
今は擬体だけど・・・

作戦開始数時間後━マリアナ海溝の海上、ジャバオッキーの生体制御室
「しっぽ膨張率2800%を維持、現在約8000kmです」
「掘削完了、外核に到達です。これよりエネルギー吸収に入ります」
ド・ビンとデ・ガラシーが経過状況を説明する
「うんうん、順調だね~」
バン・チャーは作その報告を聞き、笑顔でうなずく。作戦は問題なく進んでいた
その時索敵レーダーが反応する
「レーダーに反応あり」
「合衆国の太平洋第7艦隊です」
「またなの?攻撃してきても無駄なのに…」
突如太平洋上に現れたジャバオッキーに対し、合衆国、ムー・アトランティス、ラ・ピュタ等の組織が
数回攻撃をしかけてきていた
その都度ジャバオッキーの巨体(太さだけでも数百キロ以上ある)を利用した体当たりや、全身から棘を無数に
衝き出したりするなどして、撃退していた
各組織とも攻撃するといってもあまり積極的ではなく、幹部クラスの戦力は投入せず、斥候隊や偵察隊などの
小規模なものであった
バン・チャーがマイクで敵に向かって声をだす
「あーあーテステス…私たちは無益な戦いはしたくありません。あなた達が何もしないなら、こちらもご迷惑を
おかけしません。以上」
その説得が通じたのだろうか接近中の艦隊は暫くすると停止し、引き返していった
「流石ですバン・チャー様。カッコよすぎます」
「むてきむてき…」
「嬉しいね。話せば分かってもらえるものなんだね。ラブ&ピースの勝利だよ」
抱き合って喜び合う
これまで失敗続きであった三人にとって、そんな小さな勝利さえとても大きなものだった

「このまま行けば作戦は成功ですね!」
「まるで夢みたいです…」
「二人の協力があったおかげだよ。これからは三人で夢みていこう」
三人とも作戦の大成功を疑わなかった
「どうしようかな~?出世しちゃうかな~?キャー聖天候補生になれちゃったりして!もしかして幹部クラスに
さえ大抜擢されちゃうかも!!」
バン・チャーは嬉しさのあまりくるくると踊りだす
その様子を見てド・ビンとデ・ガラシーはチクリと胸が痛くなり、心に不安が過ぎる
「バン・チャー様が出世して、自分達より優秀な聖天社員が沢山部下になったら」
「私達落ちこぼれ聖天契約社員なんて相手にしてもらえなくなってしまうんじゃないかな…」
そんな心配をする二人に、上司であるバン・チャーはこう答える
「何を言っていの?。三人で良い夢みていこうと言ったじゃないかい。それにこんな私が言うのも何だけど、
この不況の中私以外に誰が二人みたいな落ちこぼれ契約社員を使ってくれると言うんだい。」
バン・チャーはなんだか申し訳なさそうに、そして恥ずかしそうにもじもじしながら優しい言葉をかける
「バ、バン・チャー様ぁ~」
「うえーん」
涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっているのも関係なく泣きながら抱き合う
ここに至り、三人は上下関係を越えた堅い友情で結ばれたのである
しかしまるで余韻に浸る三人に水を差すかのように再び索敵レーダーが反応する

「もーこんなときに誰だよぅ」
「グス…パターン青、じゅ、十六聖天です!」
「ズズ…猛スピードで急接近中、接触まであと30」
「まさか!?今まで何の動きを見せてなかったのに」
「決戦で手一杯じゃなかったの?」
「ぴんちぴんち…」
一瞬にして制御室に緊張が走る
迫り来るは十六聖天裏三位ケルヴィム・ケルベロス。海上でもう一つの兄弟喧嘩が始まろうとしていた

ジャバオッキーとの接触30秒前━海上を飛行中のケルベロス
「うーん、近う寄ってみたものの本体が見えへんな…見えるのはしっぽだけやな。
ホンマえろう大きいで。こんなでかかったんかいな?まるで海竜やで…」
対象があまりに巨大すぎて遠近感や大きさがはっきりしない
この時ジャバオッキーのしっぽ(以下しっぽオッキー)は全長16000km、太さ8000mに達していた
「こりゃ久しぶりに力入れへんとあかんな~」
ケルベロスはぬいぐるみのような擬体を解除し本来の姿に戻る
緑色の体毛、長い牙、朱色の翼を持つ巨体が現れる
飛行速度を上げ一瞬にして相手との距離を詰る

再びしっぽオッキーの生体制御室
「敵接触します!」
「データ照合…十六聖天のケルヴィム・ケルベロスです」
「え?最上級聖天でしょ。マジか!」
「落ち着け!火を消せ、ドア開け」
「大槍の尻を(ry」
予期せぬ相手が上位聖天だと分かり緊張を通り越して軽いパニック状態になる
「今回の決戦には十六聖天の幹部クラスは参加していないって業務報告があったのに…」
「それがそうでもないようですよ」
「この実況板を見てください」
ド・ビンとデ・ガラシーがPCの画面を指す

とあるサイトの、とある実況スレッドが開かれている

ネス子キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
ババア結婚してくれ!
ネス子は俺の嫁
ネス子は俺の嫁
屋上スペリオルスコットランド粒子
S・L・R!S・L・R!!

「このネス子ってネッシーのこと?ジャバオッキーの親でこれまた幹部クラスじゃない!?」
「なんか今回参加しているみたいです」
「びっくりびっくり…」
状況が呑込めたようで三人は少し冷静さを取り戻す
「本社の皆大丈夫でしょうか、バン・チャー様?」
「しんぱいしんぱい…」
「ゲームマスター様やあのワンダーワールド様が負けるわけないよ、大丈夫だよ!」
不安になる二人をバン・チャーは元気づける
「それより例え幹部クラスでも、このジャバオッキーに掛かれば相手じゃないはずだよ!!
だから一刻も早く敵を倒し作戦を成功させよう!!!」
その言葉が二人を励ます為のものなのか、自分の不安を取除く為のものなのかは分からなかったが、三人の士気
を上げるのには十分だった
「は、はい!頑張りましょう!!」
「りょうかいりょうかい…」
「よし、対空防御!とげとげ発射後、体当たりでやっつける!!」

間合いを詰めたケルベロスに、しっぽオッキーから無数の棘が伸びる
やや内角をねらい、えぐりこむように打ち込まれる。打つべし、打つべし。明日のために打つべし
攻撃をかわそうとするが、それらは触手のごとく自在に曲がりケルベロスの動きを封じようとする
拳で破壊するが巨体全体から発生し向けられるのでキリがない
しかも一発一発に島をも破壊するほどの威力が込められている。大きさは大事だね。おっぱいも大きい方がいい
態勢を取るために一旦距離をとったケルベロスにしっぽオッキーの強烈なボディプレスが送り込まれる
叩き潰す
両腕で防御するように受止めるが、例えるならその衝撃は日本列島の質量を受けるようなものだ。ケルベロスは
しっぽオッキーの巨体ごと海面に叩きつけられ、そのまま海底へ押し潰される
1000m級の水飛沫が上がり、巨大な虹が発生する

「やったー!やっつけた」
「流石はバン・チャー様」
「すごいすごい…」
「邪魔者はいなくなったので作戦を続行しよう」
三人が勝利を確信したとき制御室がゆれる
「ど、どうしたの?」
「押し潰したはずですが、下から押し上げられています!」
「敵生存を確認、浮上中」

攻撃を受け海底としっぽオッキーに挟まれていたケルベロスだったが、その巨体を持ち上げいっきに水上へと
駆け上がる
海上に出ると持ち上げたしっぽオッキーを投げる
再び水飛沫と虹が発生する

「虹とは美しいものだな…」
ずぶ濡れのケルベロスが呟く
「全体がわからぬのであれば面倒だ。一度確認しておくか。
宇宙(そら)で躍れ、我が弟よ!!」
しっぽオッキーを掴むとケルベロスは天へと投げ飛ばす
轟音が響き渡る
大量の海水と共にしっぽオッキーの全身が現れ宙に吹き飛ぶ
熱圏を越え、ヴァン・アレン帯の外帯をも越えた先、宇宙まで飛ばされる

「え?宇宙?」
「あ、まずいです!」
「まずいって何が?」
「このままでは宇宙空間を彷徨うことになるんです!」
「どうして?」
「どうしてって物理法則的にですよ」
「・・・よくわかんないけど、それってやばくない?」
「やばいです」
「ストップしてぇぇぇえっぇ!!!」
「きけんきけん…緊急停止に入ります」
慣性の法則で地球から離れてしまうのを止める為しっぽの断面から蓄えたエネルギーを放つ
結果、上空301655.722kmのところで停止する

「地球って丸いんだ…青くてキラキラしてる」
「きれいきれい…」
三人の前には青と黒のコントラストが広がっていた
「でも宇宙って黒かったんだ…青だと思ってた…」
「青って何でです?」
「だってマリオンが…」
「EXAMEXAM…」
急な状況展開で緊張感のなくなる三人であった

しっぽオッキーを放り投げたケルベロスは天を見上げ状態を確認する
「やはり本体は無しか…規模から見て蜥蜴の尻尾切りでもありえぬ。ならば加減なく滅する」
後を追うように上昇を始める

宇宙空間に飛ばされたしっぽオッキーの制御室
「やっはり十六聖天の幹部クラスともなると凄いよね。こんなに大きいジャバオッキーをあっという間に
宇宙まで飛ばしちゃうなんて、信じられないよ…」
「全く非常識ですよ!」
「ありえないありえない…」
「このまま負けて、作戦は失敗してしまうんでしょうか?」
「落ちこぼれは落ちこぼれのままなんですかね…」
ド・ビンとデ・ガラシーは俯き、力なく呟いた
「そんなことない、まだ負けたわけじゃない!あきらめたらそこで試合は終了だよ!!
あきらめない限りまだ手はあるさ。勇気と希望で立ち向かわなくっちゃ。頑張ろうよ!」
落胆し心が折れそうな二人をバン・チャーは励また
「そうか…そうですねっ!まだ終わりじゃないですよね!!」
「がんばるがんばる…!」
「その意気、その意気。それじゃあ作戦を続行しよう!」
再びやる気を取り戻した三人は倒すべき相手のいる地球に顔を向ける
「でもこれからどうしましょう?」
「ぎもんぎもん…」
「大丈夫、作戦内容を変更することになるけど、成功はさせるよ。ここからジャバオッキーを地球に
ぶつけるんだ。この大きさだったら地球を貫通して大穴を開けるくらいの破壊力にはなるはずだよ。ちょっと
危険だけどそれだったらその穴から罅が入ってそこから真っ二つさ!アラレちゃんでも出来るんだから、
私たちにもきっと出来るよ」

「それは凄い考えですね。じゃあ早速実行します!スラスター噴射」
「軌道修正、突入角度0.3マイナス。進路クリア」
「目標地球、最終作戦スタート!!」
バン・チャーが声を上げるとしっぽオッキーは地球に向けて降下を始める
地球を分かつ巨大な矛の一撃が今、放たれる

上空80km中間圏、上昇中のケルベロスは向かってくるしっぽオッキーを発見する
「あの形状に速度、この大地を穿つ魂胆か…」
このときのしっぽオッキーは、自身の加速と重力落下を合わせた速度とその巨大な自重により、地球を真っ二つに
するどころか、粉砕するに十分たる威力を有していた
「滅びの刃、通すわけには行かぬ」
ケルベロスは上昇を止め空中に座すると念じ始めた

「衝突まであと45、速度、角度共に問題なしです」
「進路上に敵発見、ケルヴィム・ケルベロスです…」
「もう、じたばたしない。敵ごとぶつかっちゃって!」
人事は尽くした、あとは天命を待つという心境でバン・チャー達はいた

大気圏突入の摩擦熱で真っ赤な炎に包まれたしっぽオッキーがケルベロスに直撃する、その刹那
「石、石、獣」
ケルベロスの前に巨大な獣の形をした盾が現れる
Guard━
それがしっぽオッキーの渾身の一撃を受け止める。しかし威力に圧され地上まで急降下してしまう
海上数十メートルのところでしっぽオッキーの進行が止まり、その巨体が海に落ちる
しっぽオッキーは摩擦熱で吸収した水分が蒸発してしまい、大きさが5000kmほどになっていた

「まさかこの攻撃が防がれるなんて…」
「そんな、ありえませんよ」
「よそうがいよそうがい…」
起死回生、奥の手の攻撃を防がれたバン・チャー達は呆然となる
しっぽオッキーを制御することを忘れ、動きが一瞬止まる

その隙をケルベロスは見逃さなかった
手にはいつの間にか炎の剣が握られてる
「斬る、払う、けさ斬り、斬る」
三つの弧を描くように剣が振るわれる
しっぽオッキーの長距離の胴体が二つに切断される

ケルベロスは間髪入れず次の攻撃を送り込む
「これはアレクセイに殺されたニーナおばさんの痛み。
精霊の力を借りて、今、必殺の、カルナックバーストアタック!」
口から物体を急速に磨耗、風化させる一撃が放たれた
切断されたしっぽオッキーの半身が一瞬にして塵と化す
『黄金神獣の息吹(カルナック・バースト)』、その気になれば星々を、星系をもすら消去る威力を持つ必殺の
一撃である

辛くも攻撃を受けなかった方にある制御室でバン・チャーはド・ビンとデ・ガラシーに語りかける
「こんなの信じられないけど、もう作戦は失敗だよ…だから…二人は次の攻撃が来ないうちに早くここから
脱出してちょうだい。ぐずぐずしているとやられちゃう」
「悔しいけどまた失敗してしまったんですね」
「『二人は』ってバン・チャー様はどうするんですか…」
「私は二人の上司だからね、二人の脱出を確認し、作戦を最後まで見届ける責任があるんだ」
「まさか一人で残るつもりなんですか!?そんなの駄目です、それだったら私たちも残ります」
「だめ、ぜったい…」
駄々をこねる子供をあやすかの様にバン・チャーは優しく言う
「これは上司命令だよ、ちゃんと聞いてよ。それに今回また作戦に失敗してしまったけど、生きてさえいれば
次があるの。死んでしまったら本当にもう終わりなんだよ。わかってよ」
「いえ、例え上司命令でもそれだけは従えませんし、わかりたくありません!最後まで三人一緒です!」
「なかまなかま…三人で良い夢を見ましょう…」
ド・ビンとデ・ガラシーは泣きながらバン・チャーに抱きつき、哀願する
「二人とも…もう馬鹿なんだから…別に死のうなんて思っていないのに…わかったよ、三人で頑張ろう」
「はいっ、わかりました!」
「うれしいうれしい…」
三人は晴々とした顔で再び戦いに挑んでいった
「あ、言い忘れたけど、帰ったから減給なんだから覚悟しておいてね」
「そんな~」
「ゆるしてゆるして…」
制御室に笑い声が響く

残ったしっぽオッキーが急激に膨張を始める
強大なエネルギーを暴走させしつつケルベロスに向かい体当りをしかける
「この攻撃は、自爆するつもりか?このままではそれなりの損害が生ずるな。そうはさせぬ」
集まるエネルギーからするにまともに爆発すれば恐らく地球の半分は吹き飛ぶだろうとケルベロスは感じ取った。

ケルベロスが両手を広げると周りの空間が歪む
「開け冥界の門、我が言霊に応え出でよ、因中有果さえ断滅せし焔帝の業炎!!」
ケルベロスの身体を炎が包む
その温度は10GK、超新星爆発と同等のである
高温のため周囲に稲妻(プラズマ)を発生させ、自身も光そのものと化し姿が見えない
「そしてこれは夜の町で散ったコーディの痛みだ。
ケルベロスクラーーッシュ!!」
膨張の臨界に達しようとしている海中のしっぽオッキーと激突する
海水を一瞬にして蒸発させ、水蒸気爆発、さらには水素核融合爆発が生じる
太平洋のど真ん中で大爆発が起きる

残ったのはケルベロスだけで、しっぽオッキーの姿形は痕跡すら残っていなかった
「小尾であれば本体に影響はありえぬか、まあよい我が責はこれで果たした。
いずれまたどこかで相見えることもあるだろう…さらばだ我が弟よ」
ケルベロスは再び擬体に戻ると帰路に着いた

この戦いで海水の約8%が蒸発することとなる
結果、海面水位が下がりキリバスやモルディブ等の海に水没する危険がある国々が助かったり、
大気中の湿度が上昇のためにこの年の花粉症やインフルエンザの発生が緩和されたりするのであった
さらに乾燥した香川に少し潤いが戻ったとか、戻らなかったとか…
当のジャバオッキーはしっぽを失っただけで、マリアナ海溝に絶賛ギチギチ中である。そのしっぽもすぐに
生えなおしてくるのであった

こうして十大聖天の落ちこぼれ達による「第19話 十六聖天ぶった切り作戦」は作戦失敗という形で幕を閉じた
この作戦にかかわった三人がその後どうなったのかはこの記録には残っていない
これはやられ役として生まれ、やられ役として生きた者達の儚い物語である

日本まで約3000km帰り道、海上のケルベロス
「早よう帰ってオクで手に入れた復刻版魔神大集合第五階層BOXを組立なあかん。待ちに待ったゴーストンが
ようやく完成するで。今回はホンマええとこ邪魔されたな。そーら超特急…ってなんや急に腹の調子が…
嘘やろ…こんな所で…まさか今朝食べたスイカと天ぷらが…?そ…んな、ありえへん、迷信なはず…や。
となると、天ぷらのイカが原因…か?それもないはずや…あれは猫だ…けのはずやし。わいは猫やあらへん…
くっ…ここで倒れるわけにはいかへん…これは決して負けられない戦いや。試練といってもええわ…」
脂汗を流しながら飛ぶが、ゴールはまだ遠い

~ケルヴィム・ケルベロスの挑戦 完~
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