闇伝 外道対外道16


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アポカリプス・ネクスターが擁する地下施設最奥、統合司令室へ向かう最後の関門に突入した
苓、杷羽、タマ&武御雷の二名+一本+一匹は、次々とシリンダーをぶち破り襲い来る異形を
次々と撃退しながら先を急いでいた・・・のだが、
「なにこれ!? あっちに曲がったら入る前の部屋に出るんじゃないの!?」
「となると、隠し部屋か、あるいは翠が入ったあの部屋か・・・?」
「むー! むずかしいことはぜんぶおねーちゃんたちにまかせるの!」

ここまで来た中で見てきた壁面は全てシリンダーで覆われており、隠し部屋を仕掛けるような余裕など
有りそうには見えなかったが・・・足音にも気を配っていたが、空洞がありそうな反響音が響いてはいない。
だとすれば、この部屋自体がフェイクか・・・?
だが思考は、吼え猛る異形の群れの出現により中断される。
「ちぃ! どれだけいるってんだ!」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ちょっと、辛いかも・・・」

苓の愛銃ヴァンデッタの咆哮は鳴り止むところを知らず、タマの呪術と武御雷のコンビネーションも多くの敵を
屠ってはいるが、如何せん閉所狭所では"イーター"との共振を図ることも出来ず、身体能力は一般的な
女子中学生を多少なりと上回る程度の杷羽の体力は、蓮鳳から受けたダメージもあり、既に限界に達していた。
異形と化したとはいえ、その母体には野生の猛獣や魔性の生命を多く用いられている個体が多いだけに、
その鋭敏な嗅覚は最も弱っている個体を見逃すことはありえない。
「おねーちゃん! タケ、おねーちゃんのところにいくの!」
グルゥアアアアアアアアアアア!!!!!!!
タマの命令を受け、武御雷が雷光疾駆にて駆け寄るも、多勢に無勢、物量という名の波に飲まれるのは
もはや目にも明らかになって

いたそのとき、壁が横からぶち抜かれ、襲い来る波の第一波が漏れなく潰れ果てる。
「ふぅ、やっと貫通したわ。分厚いにも程ってもんがあるだろうか、ったく・・・どう思うよ芽瑠」
「兄君様って・・・そうじゃないかとはおもってましたけど、やっぱり御馬鹿なんですのね・・・」

「はっは、よく言われるぞ。っと、おうおうなんか変なのがいっぱいいんじゃんか。ちょっと分けてくれよ」
「別に要らん。好きなだけ持って行け翠」
「おう、サンキュー! おらっしゃあぁああ! ミンチになりてぇ奴からかかってこいやぁ!」
獅子奮迅、一騎当千とはこの事かとばかりに、メルヒェンカッツェ専用ルームの壁をぶち抜いた翠は
異形の群れを拳と蹴撃で叩き潰す。

杷羽・芽瑠・タマの三人を中央に、前後にて翠と苓が迎撃するフォーメーションを瞬時に編成。
こうなれば後ろを気にする必要が無い。翠と苓は、前方より押し寄せる異形の波を、微塵の迷いも無く
討ち果たすことに専念する。
「ふぃ~、おつかれさまなの。おちゃがおいしいの」ワォン!
「・・・緊張感ってもんがないの、アンタには?」
「むぃ? だってあるじさまががんばっちゃったら、もうたまちゃんにはやることがないんだもん」

「確かにそりゃそうだけど・・・でももうちょっとやりようってモンがあるでしょうに」
「おねーちゃんはあたまがかたいの。りらっくすだよ」
「アンタがユルすぎるのよ・・・で、そこのゴスロリのアンタは何者」
「私ですの? 私は芽瑠と申しますの」
「・・・また拾ってきたのね、バカ兄・・・」

少女たちが和やかに歓談するその両脇で、異形の断末魔が響き渡る。
もはや波も絶え、異形の衆は血肉の塊の山と化していた。
「いやはや、やっと終わったわ」
「しかし、壁を突き破ってくるとは思わなかったぞ」
「ま、そりゃ一番近いしな。それに不自然に分厚かったんでブチ抜いてみたってのもある」
「で、収穫は?」
「さすがは秘密基地。入る仕掛けは分からんが小部屋発見」

翠と芽瑠が通ってきた亀裂を戻れば、確かにそこには地下に通ずる通路が一本。
「な?」
「ふみ、まほーちっくなこじんにんしょうてんそうじゅつしきなの。しらないひとははいれないんだよ?」
「成程な。仕組みは分からんが合点は入った」
「んじゃ、とっとと行くか」

地下へと向かう通路には僅かな明かりのみ。仕掛けの類は無いようだ。
一行はやがて、開けた部屋に出る。
「あらあら、力技でこの部屋に入ってくるなんて、なんと粗暴な」
「うるせぇオカマ、とっととぶっ殺してやるから黙ってろ。つかそろそろ帰らんといい加減やばい気がする」
主に嫁の機嫌的な意味で。
「理由はどうあれ、目的がやっと果たせるな。個人的な恨みは別段無いが、殺らせてもらう」
ヴァンデッタの照準を、首魁ファウスト・フロイラインの眉間に合わせる。

「ふぅん・・・でもね、そうそう簡単に殺られてあげるほど、私は安くは無くってよ?」
「うっせぇオカ・・・うぉあ!?」
ファウストFの両脇から、爪先から頭頂部まで完全に黒のボディスーツに身を包んだ人型が二つ、現れる。
彼らを部屋に残し、ファウストFはさらに奥へと向かう。
「・・・へぇ、ようやっと楽しめそうなのが出てきたな。んじゃ、このストレッチマンズは俺の獲物な。
 オカマは任せた苓。杷羽、芽瑠、部屋から出ろ。邪魔だ」
「ちょ、勝手に仕切んないでよバカ兄ぃ!」
「・・・いや、状況的にはそれが一番妥当だろうな。杷羽ちゃん、芽瑠ちゃんを連れてこの施設から出るんだ」
「いやでも」
「兄君様がそうせよというのなら、従うのが妹のあるべき姿でしょう?」
「・・・わかった。じゃ、また後で」

「へぇ・・・待っててくれるのな、ストレッチマンズ。なかなか道理を弁えてるな」

部屋に残る4人。最初に動いたのは
「んじゃお相手願おうかねぇ、Mr.蹴撃王にMr.剣戟王さんよォ!」
翠が蹴撃王と呼称するストレッチマンへ吶喊、迎撃する蹴撃王、挟撃を目論む剣戟王、三人を尻目に
奥を目指す苓、奥にて待ち構えるファウストF。
最後の戦いが、その幕を開ける。

「あるじさま、がんばれ~」
「オマエも来んだよタマ!」
<あらあら、剣使いが荒いのねぇ、全く・・・>
タマはその身を神剣韴霊へと変え、翠の左手に収まる。
蹴撃王の烈火の蹴撃と剣戟王の雷光の斬撃、どちらも神の領域に達する程の技である。
<主様、流石にこの二人を同時に、というのは荷が重いのではなくて?>
「・・・ちょっとばっかし、欲目が過ぎたか、な?」

幾合かの競合いの末、蹴撃王と剣戟王の絶妙なるコンビネーションは、確実に翠を追い詰めていた。
「ったく、とんでもねぇモンの複製とってやがんなぁ・・・何でもアリかよ」
蹴撃王も剣戟王も、その素材は共に想像通りの奴等であろう。
複製に伴う劣化を何らかの形で補ったのだろうが、どちらのオリジナルとも交戦暦のない翠には、
どの程度の差異があるのかは推し量るべくもない。
唯一つよく分かっているのは、この二人は間違いなくこの施設でトップ2の個体であることだけだ。

物言わぬ二つの黒い影が、翠に絶対の死を与えんと迫り来る。
「ったく、しゃーねーなぁ・・・あんましやりたか無かったんだが、止むを得まい」
今正に襲い掛からんとしていた蹴撃王と剣戟王は、同時に間合いを離し体勢を整える。
相対する翠の、見開かれた瞳は、右はその名の如き翠玉、左は劫火の如き緋玉。
「・・・無幻鬼神流、久鬼 翠、推して参る。覚悟の程は充分か」

改めて身構えた蹴撃王が先に烈火の蹴撃を打ち込み、回避し様の無いタイミングで剣戟王の追撃が迫る。
「所詮は実戦を知らぬ傀儡か。この程度で我が命絶てる気になるか」
韴霊を揮う左手が剣戟王の直刀を横一文字に切り分け、蹴撃王の蹴りは右の肘膝に挟まれ、砕かれる。
「所詮傀儡に揮える力など玩具に過ぎん。それを解せぬとは、愚かな」
蹴撃王と剣戟王は再び間合いを開ける。蹴撃王の砕かれた右足は再生され、剣戟王の斬り折られた刃は
能力を伴う電刃を成す。
「今の一合では、無駄と分からぬか。所詮は殲滅のみに生きる傀儡、意志を求むるなど無意味、か」
瞳を翠緋に染めてから受身を続けた翠が、攻めに転じる。

苓は細い道を駆ける。その手にはヴァンデッタは無い。
一人馳せ参じた苓を迎えるのは、最終防衛システムと、それを指揮するファウストF。
「あら、お一人? 私のクローン技術の最高傑作も、随分と見くびられ」
「翠と違って、戦闘に享楽を交える趣味は無いのでね。終わりにさせてもらう」

左の掌より抜き放たれた閃光。
刹那、最終防衛システムも、ファウストFも、その背後の各種装置も、部屋にあるあらゆる物が切断される。
苓の背丈の倍はあろうかという鞘が宙を舞い、閃光の刃は鞘に呑まれ、鞘と刃は炎と消える。

「用事があるのはコイツだけなのでね。失礼する」
苓は最終防衛システムのコアシステムが収まっているであろう部位に腕を突き入れ、内部より鈍く輝く
宝玉を引きずり出す。
「それにしても・・・ボスは、こんなものを何に使うつもりだろうか。まぁいい、クライアントの要求に
 ケチをつけるのは後でも出来ることだ」
既に物言わぬ肉塊と化した元ファウストFに一瞥くれて、部屋を後にする。

一瞬で全てが終わったはずのその部屋で、かちりとスイッチの音がした。

「よう苓、ごくろうさん。で、ブツは?」
「これだ。そっちも終わったようだな」
「ああ、いやーひっさびさに熱くなったねーはっはっは」
「ぶるぶる・・・」
苓が背を向け即座に立ち退いた部屋は、戻ってきてみれば、真っ赤に染まりきっていた。
「そういえば、あの二人組はどうした? 肉片すら残ってないようだが」
「言っとくが食ってないぞ!?」
「・・・そうか、カニバリストではなかったのか。初耳だ」
「うぉォい!? オマエ俺を何だと思ってやがる!」
「いや、お前ならそういうこともあるかと思っただけだが・・・とりあえず、早いとこ帰ろう。長居は無用だ」
「そうだな・・・そろそろ帰らんと」
摩璃華に殺されるやも分からん、という言葉は念のため飲み込んでおく。

長い通路を通って、小部屋を抜け、来た道を戻る。
「・・・つかオマエラいたのか」
「居たのか、とは随分な言い草ね、バカ兄!」
「そもそも私、自分の足でこの施設から出たことがありませんもの。兄君様を待つより他ありませんわ」
「やれやれ・・・んじゃ、そろそろ全員集合したところで、そろそろ自爆警告サイレンのお時間かな?」

冗談めかした翠の言葉が終わるのを待っていたかのようなタイミングで、正に施設放棄に伴う自爆警告が
施設内に響き渡る。もはや警告を聞くものなど4人と1本と1匹だけの施設には、その音声は喧し過ぎた。
「まぁああああああああああぁったくもぉおおおおおおおおおおおお! これだからバカ兄はぁああああ!!」
「俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」
まるでどこかの親善大使のように自己弁護を図る翠の抗弁を他所に、自爆勧告のカウントだけは着々と、
淡々と、進んでいくのであった。

「よっしゃ、とりあえず走るか!」
「ふわぁ!? ちょっとどこさわ、ふにゃあ!?」
「わぁ!? 兄君様、いきなり何を、ひゃぁ!?」
「たまちゃんはタケにのるんだよ! さぁタケ、はしるの!」ワォン!!
苓がヴァンデッタ片手に前方を警戒し、翠は両脇に杷羽と芽瑠を抱え、タマと武御雷が殿を務める。
芽瑠が手中にある時点で生命体の兵隊を主とするアポカリプス・ネクスターの兵卒は無力も同然、障害など
無きに等しい・・・と駆ける一行に対し、サイレンに混じり声が響き渡る。

<よくも・・・よくもやってくれたわね・・・よもや、貴方達のような餓鬼風情に、私の野望が、夢が、
 潰されるなんて、ね・・・>
「頼むから、何度でも、なんどでも、な・ん・ど・で・も! 蘇るのは勘弁してくれよ・・・」
挙句ラスボスの前座に成り果てるわけだが。

<表に出ても、冗談を言う余裕が、貴方たちにあるかしらねぇ・・・それにしても、やってくれたものね。
 地下の非戦闘員まで手にかけるなんて、しかもあんな『時間が止まったような』やり口で、ね・・・!>
そんな事は知らない。そもそも非戦闘員とは一度たりとも交戦していない。
(よもや、俺たちや十六聖天の他に、侵入者が居たとでも言うのか・・・?)
苓はふと思い立つが、今はそんなことは不要と頭を振って、頭からその考えを消し去る。

<おかげで、起動にずいぶんと手間取ってしまったわ・・・せっかくの体も、自信作だったのにあんなに
 細切れにされちゃって・・・おかげで次の体に馴染む余裕すらなかったわ・・・でも、まぁいいわ。
 まずはこの国、穴倉から出てきたモグラ共ごと叩いて差し上げましょう、この偉大なる鋼鉄の巨神、
 ジュラフマーの力でねェ!!!>
「基地自爆にラスボスは巨大ロボ、結局はお約束パターンかよ・・・」
やれやれと悪態をつく翠だが、その顔は僅かに引きつっていた。
(この気配、この感触・・・まさかRBSでも発動するってのか?)

ベルリン上空。
爆砕し大穴が穿たれた博物館島から飛び出した、全高20m級の中型機動兵装ジュ・ゲイムの一団と、
それを指揮する全高40mの超巨大機動兵装ジュラフマーが地上に対し破壊の限りを尽くしていた。
アポカリプス・ナウと十六聖天との死闘の余波が今だ各所に残るベルリンは、その傷をさらに大きな物にする。

「・・・ちっ、とりあえず地上に出てきたはいいが、何ともはや、やりたい放題だな奴さんども」
「どうする? 流石にこの状況下であいつらを相手にするのは厄介極まりないが、尻尾を巻いて逃げるのも
 釈然としないものがある」
「てかあんなの、バカ兄と苓さんでどうにかできるんじゃないの?」
「極フツーの環境なら、喜び勇んで突っ込むところだが・・・流石にRBS下では面倒極まりない」
機的存在に対し絶大な加護を付与すると共に人的存在に対し多大なる負荷をもたらす絶対遵守型の
特殊結界術式であるRobot Battle Strategy が発動されている以上、余程のやり手であろうとも、
機的存在に相対するのは危険極まりない行為に他ならない。

「とりあえず、逃げるっきゃないかねぇ・・・ったく、めんどくせぇ」
鬼装纏鎧を召喚すればRBS下でも普通に活動は出来るが、物量差がこうもあっては時間制限がネックになる。
相当無茶をすれば全滅できるだろうが、黒色権現に至り肉体が概念的に破壊されてしまうと、復元するには
無駄に時間を浪費してしまう。そうなると復元するまでヌイグルミ生活になってしまう・・・それは勘弁だ。

そうこう言っている間にもベルリンを中心とした市街地は、焼夷弾に衝撃波砲、その他火器兵装諸々の被害を
被り、傷つきながらも復興に勤しむ人々に更なる打撃を与えていた。
あるものは炎に捲かれ、あるものは瓦礫の下敷きになり、あるものはジュ・ゲイムのロケットアンカーの
餌食となり、またあるものはジュラフマーが戯れに放つ拡散荷電粒子砲の照射を受け蒸発する。

「・・・ちょっと、あいつら、やりすぎじゃないの? 流石に許せないんだけど」
「正義に燃える熱いハートはいいが、何が出来るっつったら結局逃げるか討ち死にか、ってのは詰らんぜ?」
「うるさいっ! 黙っててバカ兄!」

ベルリンの人々は、天へ祈る。
我々には、神の加護すら許されないのか・・・?
轟炎が渦巻き、立ち上がる爆炎と噴煙、遙かに高き空は閉ざされ、加護の曙光が照らされることは、
もはやこの地には無いのだろうか・・・?

苓の左手が微かに反応する。
「・・・この、反応は」
「ああ、何かが『来る』な・・・さて、お出ましになるのは神か悪魔か、どっちだと思う?」
「ここで悪魔が出るようなら、それこそ世も末だな」

暗雲の空に、突如として、球形の魔方陣が描かれる。
魔方陣が光に満ち、弾けた瞬間、惨劇に抗する力を持たず地に伏した者達は、誰とも無くその言葉を口にする。
halleluyah, hosi ah na  天におわします我らが神よ、どうか我らを救いたまえ と。
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