次郎達の背後で彼らをジッと見つめているモノ
彼女こそ、聖剣エクスカリバーと呼ばれ、その名を広く知られる聖剣の精である
「むぅ…ワシも混ざりたいのじゃ。じゃが流石に今飛び出すと、あまりに空気の読めてない
子じゃしなぁ…あやつらめ~…!」
彼女が一人影からコソコソしている事のあらましはこうだ
「むぅ。ジロウ。ワシは暇じゃ。遊ぶのじゃ。そうじゃな。今日はオセロ等を所望したいぞ
」
「ん?オセロは嫌か?なら七並べでもよいぞ!ババ抜きはすかん。あれは実力など関係ない
からの…ん?」
「おぅバァさん。ジロウなら今出かけたトコだぜ」
「おぉパイソンか。そういえば今日は人がおらんのう。ジロウ達は何処へいったのじゃ」
「同志はお嬢さん方のエスコート。いねぇ連中は大体がその警護ってトコじゃねぇかい?」
「なるほど。例のアレか」
近頃、彼女はマスターのいない身故、消耗するその身体を癒すために、故郷である北欧のと
ある湖に身を癒しに行くことが多くい
その為、当時のアリスの暴走に居合わせておらず、その概要については人づてにしか聞いて
いない
その為、当時のアリスの暴走に居合わせておらず、その概要については人づてにしか聞いて
いない
故に、彼らに聞くまで、そこまで大事になっていたとは思っていなかったのだ
「ふむ。まぁよいわ。今からなら間に合おう。ワシもジロウ達と遊ぶのじゃ」
「おっと待ちなババァ。チョット位気を使ってやれよ」
「そうだぜババァ。ちょっとは年長者らしく振るまいやがれ」
「ババァババァとそれが乙女に対する口の効き方か!えぇい鬱陶しい!そこをどくのじゃ!
ワシは行くのじゃー!」
「傷ついた少女と、次郎と普段あまり接する機会のない、次郎を慕う少女、おまけにゴミ袋
」
「たまには水入らずで過ごさせてやれよ!」
「…うるさい!ワシだって最近ジロウの顔すら見とらんわい!」
駄々をこねながら暴れまわるエクスカリバー。その時彼女の足もとでパキリという音が聞こ
えた
何か重ねてあったゲームを数枚分で割ってしまったらしい
「チョット待てよ!」
「なんです!?」
「今割れたのシスプリじゃないのか…?」
「そんな…嘘でしょう…!?」
すかさず彼女の足もとに転がる、亀裂の入った黒いCDをPSに読み込ませる二人
だが無情にも、モニターにはディスクを入れてくださいという文字が浮かぶ
「ん?何じゃ…?何か壊してしもうたか…?オイ。なんとか言え」
TVに向かい何かブツブツとつぶやいている二人の肩を掴み、こっちを向かせようとするエク
スカリバー
彼女の見たブラックパイソンとクリムゾンブロウの目は、理性を失った獣。それも最も達の
悪い神域の魔獣の眼、そのものであった
「四葉はもう…兄チャマ、チェキ!と笑ってくれない…」
「亞里亞も…兄や…と微笑むことはない…咲耶!春歌も!千影も!花穂も!衛も!白雪も鞠
絵もだ!」
「白雪と鞠絵はいらねぇ」
「ごめん。間違えた。つい」
「とにかくだ!俺の妹達はここに死んだ。無残にも、兄の眼の前で死んだ…!」
「しかも2も!ピュアストーリーズもだ…!おまけにDVDもだ!もう二度と会えない…。二
度と無邪気なチェキを見ることも」
「亞里亞のおリボンも探すこともかなわない」
「許さん…許さんぞババァ…ジワジワと嬲り殺してくれるわァーッ!」
むぅ…悪い事をしたの~…と思いつつも、相手は完璧に理性を失っている
これはもう腹を据えて戦うしかない。気絶させれば元に戻るだろう。そう思い彼女も啖呵を
切る
「ほぅ。貴様ら如きがこの聖剣の中の聖剣であるワシに勝てるつもりか!
大体なんじゃ!いい年して仮想空間に妹等を作りおって。気狂いか!幼女趣味の変質者が
!
相手をしてやるからかかってこい!」
「地獄の底で妹たちに詫び続けろォー!そして俺達の事を兄チャマや兄やと呼べババァーッ
!
」
「だぁれが呼ぶかァーッ!」
と、まぁこんな具合に内輪もめをしていたせいで、すっかりあの輪に入るタイミングを失っ
てしまった彼女は
そんな具合で次郎一行を「羨ましいのう。羨ましいのう」と独り言を言いながら
電柱の影、自販機の影、建物の影と、自身の大きさを生かし、スパイさながら延々と後を付
け回しているのだ
そんな彼女だからかもしれない。魔眼の兄妹が離脱し、警護の手が緩んだ十六聖天に忍び寄
り敵の影に
「ん…?あやつらは何じゃ。アリスに似ておる気がするが、どうにも嫌な気じゃの」
エクスカリバーは名残惜しい気持ちを押し殺し、恐らく敵と思われるそれらをここで迎え撃
つ覚悟をした
次郎達を守るために
クリムゾンブロウ曰く「タカ君ホントうざい。病気になりそう。心の」
ブラックパイソン曰く「けど、メイドロボは可愛い。1480円の価値はある」
十六聖伝外伝 残光 ~ アリス・ザ・ワンダーワールド四章後編~
最終更新:2008年10月31日 21:46