十六聖天外伝 残光 ~第五章 アリス・ザ・ワンダーワールド五章前編~


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「で、お主らは何者じゃ?何故次郎達をつけまわす?」
「…所詮私達は出来そこないだっていうの…」
「何の話じゃ。ワシはそんな事は言うておらん。それにお主ら、出来そこないという程弱く
もあるまい」

目の前で泣きだしそうな顔をしたため、つい彼女は敵を慰めてしまう
元々彼女は、恋仇であるはずのアリスやデスメタル、マキナ等の十六聖天の幼子達に
フィンランドサンタ郵便局の「サンタさんからの手紙」などを、実費で申し込むような、優
しく面倒見の良い女性なのである

「…敵である私達を慰めるなんてバカじゃないの…」
「そうかもしれんのぅ。損な性分じゃて」

そう言いながらニコリと微笑む剣精に、アリスに似た少女は呆れ笑いを浮かべ、口を開く

「私達はナンバーズ。アナタのお仲間の出来そこない。私達を倒したからって安心しない方
がいいよ」
「そう、名前を許された他の兄妹や、他にもクリフォトとかいう連中だってアナタ達を狙っ
てるんだから」
「ほぅ…よく話してくれたの。礼をいうぞ」
「別に…」

唯一気を失っていない、額に8と書かれた少女は頬を染めながら、顔を俯ける
とりあえず、この子達は敵の先兵に過ぎず、より強力な連中が爪を研いでいるという事は確
認できた

「ふむ。ワシはもう行くぞ。お主ら、もし行くところが無ければ、我らの守護する地に庇護
を求めて来るがいい
どうせ良い扱いは受けておるまい」

剣を一度交えれば、ある程度相手の事は察しがつく。この少女達はおおよそ人と呼ばれる暮
らしなどしてはいまい
だからこそ、エクスカリバーは無視して去っていくなど出来なかった。彼女は十六聖天であ
り、聖なる剣なのだ
「…かんがえとく」

まさかそんな事を言われるとは、夢にも思っていなかったのだろう。8と書かれた少女は少
し驚いた様子だった

『ありがとう。そんな出来損ないの妹に気を使って頂いて』
「…!」

次の瞬間、8と書かれた少女の身体は内側から爆ぜていた
8と書かれた少女の内蔵や血がエクスカリバーに降り注ぐ。彼女の砕け散った骨の欠片が血
だまりにピシャリと落ちる
ここまで破壊されてしまっては、彼女の力では癒しようもない…

「な…お主何を… 自分が妹と呼んだものを殺したのか…?」
「ん?そうだよ。ダメかい。妹ってのは兄の所持品みたいなもんなんだろ?兄のために生き
て兄の為に死ぬんだ」
「さぁ、ボクの妹たち。早く立たないと8みたいに死んじゃうよ?ホラ、頑張って」

そういいながらエクスカリバーの前に降り立つ少年は、地に伏せる他の少女に向けて、静か
に囁く
気を失ってたはずの少女達が、ヨロヨロと立ちあがる。意識も戦う力も失った少女達に、意
識を取り戻させるほどの
恐怖が、その瞳に色濃く浮かんでいた

「…よせ。ワシはお主らとはなるべく戦いとうない…」
「なら、大人しく倒されてやってくれないかなぁ!?じゃないとボクの妹たちが死んじゃう
よー?」
「く…っ」

エクスカリバーの欠点。それは優しすぎる事だった。甘さと取られても仕方がないかもしれ
ない
人を殺すために作られた剣にあるまじき優しさ。それ故の癒しの力だったかもしれない。だ
がこの場合、それは完全に裏目に出た

戦えぬ…この子供らを傷つけるような真似はワシにはできん…。どうすればいいのじゃ…ジ
ロウ、アレクサー…)

マスターさえいれば、片方が引きつけ、片方が目の前の少年を倒すと言ったことも可能だろ

あるいは、彼女が完全な状況ならそれも可能だったかもしれない。
だが彼女にはマスターがおらず、そしてまた、力は擦り減っていく一方である。
倒すだけならば造作もない、だがこの少女達、そして目の前の少年の攻撃を無傷で避け続け
ることは今の彼女には難しかった

「ハハ!良い格好だねぇ!余所行きのドレスだったんじゃないのかい!」
「く… 外道め…」
「さぁやってしまうんだ!ボクの妹たち!」

久しぶりに逢う次郎に見せようと思い粧し込んだ服も、スカートの裾がちぎれ、胸元も大き
く肌蹴てしまっている
くやしい。なんとかして隙を見出さねば。そんな矢先、ナンバーズの一人が叫び、少年に飛
びかかっていた

「もうイヤァ!こんなヤツの言うことなんて聞くのはイヤ!」
「8は優しかったのに!私のお姉ちゃんだったのに!」

それを皮切りに、数名の少女達が少年に飛びかかる
動揺した少年は、一瞬エクスカリバーから眼を離す。ほんの一瞬である
だがその一瞬で十分だった。少年が攻撃したエクスカリバーは実態を持たぬ残像であった


「取ったぞ!この外道。地獄で虐げたものに詫びるがよい!」
「流石は聖剣。一瞬の隙から勝利を見出すか。見事」

すさまじい衝撃がエクスカリバーを襲う。本来なら即死であったであろう一撃を凌いだのは

即座に自身に治癒を施していたからに相違ない
反逆したナンバーズは即座に内側から爆ぜた
少年に逆らわなかった少女は、瞳に涙を浮かべその様子を震えて見ている

「た、助かったよジークフリード! こいつめ!たかが剣無勢がボクに!人間様に!」
「貴様を助けたわけじゃない。勘違いするなレミー」

ジークフリード…?
レミーと呼ばれた少年に蹴られながらも、彼女は自分を吹き飛ばした巨躯男を見上げる
何処かで聞き覚えのある名前。そう、あれは確かアレクサーが言っていた…

「お主が…ジークフリード、か…」
「ほう。まだ意識があるのか。流石は聖剣エクスカリバー。そうでなくてはな。レミー、い
い加減にやめろ。殺すぞ」
「あ…あはは。冗談だよ。もう辞めるからそんな眼で見ないでよジークフリード」
「時間をやる。身を癒せ。そして万全な状態で俺と死合え」
「…その言葉、後悔するでないぞ…」

虚勢だ。自分一人でこの男に勝つことはできない。だかエクスカリバーも聖剣の中の聖剣

少なくとも剣を使う相手に背を向けるようなことはできなかったのだ

クリムゾンブロウ曰く「同じ四葉でも流石に、よつばとのよつばは無理だよ」
ブラックパイソン曰く「そこまで堕ちちゃいねぇ。誇り高き十六の戦士の一人だ」

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