『宝石城の魔女』


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「大ニュース! 大ニュースーっ!!」
主の部屋に駆け込んでくる小姓服の男装少女に、傍らの老賢者が苦笑を浮かべた
「ホホッ、相変わらず元気の塊のような娘じゃて」
「……。
『獅子』、君も淑女ならば少しは慎みというものを身につけたらどうなのだ」
「うるさい! 『樵』のクセに生意気、言うな!!」
小言を漏らした甲冑姿の男に「がぁー!」と可愛らしい威嚇を見せてから、少女は寝台の上に身を起こす主に向き直る
「すごい話、聞いてきた!
ネームレスワン、敵から逃げた! しかもザコ二匹相手、傷まで受けてた!」
「何だと……!?」
「ほほぅ、アリスどもが敗北したとは聞いておったが、よもやワンダーワールドまでがのう……」
予想以上の事態に動揺する騎士と古老を手で制し、彼らの主人たる白子の乙女が問う
「それは本当ですか、アタランテ?」
「本当ー! だって『獅子』、ちゃんと包帯巻いてるワン子見た!」
満面の笑みで差し出された少女の頭にか細い手を伸ばし、収まりの悪い髪をそっと梳いてやる
「かふぅ~~♪」
「……如何致しますか、我が主?」
「負傷の末に敗退……。ふふっ、プライドの高いあの娘の事、今頃どんな顔をしているかしら」
普段は穏やかな白面を抑えがたい喜悦で紅潮させ、ほのかに色づく自らの唇に指を這わせる乙女
「そうですね……
せっかくの機会ですし、久しぶりに不出来で可愛い妹分の様子を伺うのも良いでしょうか。
――アタランテ、お願いします」
「がぅっ!」
応えとともに『獅子』の姿が霞み、次の瞬間には名前通りの巨大な獣が主人の膝下に額突いていた
「それでは、後の事はお任せします」
「はっ、御意に。
『案山子』殿、我らは独自の情報収集を」
「そうじゃの。
……主殿、くれぐれも荒事はお控えを……」
獅子の背に横乗りになった女主人が、諫言に微笑で返す
「お見舞いに行って怪我をさせるほど不調法ではありません。
それに……あの娘の『世界』では、私の『虚飾の城』の護りは破れない」
ドロシーの名を継ぐ魔女は、白い髪を揺らしながら暗い地下回廊へ消えていった……

『宝石城の魔女』fin
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