十六聖天外伝 死神を目指すモノの章 第五話「一周忌・前編」


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年に一度、表裏合わせて32人が集まる日
アリスはこの一年間、周りからの突き刺さるような視線に耐えていた
「裏切り者の仲間殺し」
「こいつのせいで仲間が死んだ」
「最初から裏切っていた」
「また、仲間が死ぬんじゃないか」
そんな他者の悪意のに耐えて、この日を迎えた
まだまだ幼い子供である。俯くアリスの肩に次郎は手を置くと

「お前のせいじゃねぇよ。気にすんな」

と一言呟いた

御影あいかはこの日を待ち望んでいた
認められたい人がいる。その人―ギデオンに認めてもらう
その一心で、この1年死に物狂いで戦って、戦って、戦い抜いた
幸か不幸か、常に上位に食い込む連中は二人の聖天の死が原因なのか
今年度は、大した戦闘を行っていない
故に、あいかは確信していた。今年度の営業成績は自分が1位だと
その期待と、「良くやったな」と褒めてくれるであろうギデオンの大きな手
二つの期待を胸に、彼女は対悪人営業成績が貼り出されたホワイトボードに目を向けた

「…!」

あいかの営業成績は3位であった。それはそれで凄い事なのだが
1位を期待していたあいかには、少しショックだった。
だが、本来なら3位は3位で良しとし喜んで終わる。それだけの話だった
だが、その事情は変わらざる得なかった

1位 十六聖天 12位 デスメタル    討伐数6666
2位 十六聖天  5位 アリス・ザ・ミラー 討伐数3205

と自分が最も嫌う頭陀袋の名前が、自分の上にあるのである
デスメタル自体、聖天内部では一部を除き、避けられる存在なのだが
それに輪をかけて、あいかがデスメタルを嫌う理由は多い

一つ、彼女は実態を持たない霊である。それを使役する存在に嫌悪感を抱く
一つ、死霊使いを軽んじている。何故なら自分はかつて邪神だったのだから
一つ、常に成績も悪く、協調性も何もない彼女より聖天位が低い事が納得できない
一つ、一年前のアリスシリーズ襲撃で、彼女達を助けに行ったギデオンが負傷した
など、挙げればキリがない。
そんなデスメタルに、負けた。そんな事実があいかを激しく苛立たせる
身体は大人の喜びを知っていたとしても、中身は12歳の子供なのだ
更に、昨年二人の聖天の死の原因を作ったアリスまでもが、自分の上なのである
頭陀袋と裏切り者…
こんな連中に…信じられない

「すげーな。普段は下から数えた方が早いのに」
「俺の鎖の上を行くとは…」
「我々上位陣が殆ど戦う事がなかったとはいえ、大したものじゃ」
「どうせよからぬ手を使ったのだろう。裏切り者のやりそうな事だ」
「アイヤー。あのゴミ袋と裏切り者に負けたアルか。悔しいアル」
「デスメタル…って誰だっけ…」
「おい、噂をすればなんとやら、だ」

俯きがちに集会場の中に入ってきたアリスに、他の聖天からの冷たい眼差しが突き刺さる
次郎は西園寺やトムと話があるらしく、今はいない。徳間もまだ戦場にいるのだろうか、この場にはいない
彼女は名実ともこの瞬間、一人ぼっちであった

「どんな卑怯な手を使ったんだ?」
「アイヤー。よくこの場に顔を出せたものアル」
「また裏切るのではあるまいな」

小さな肩を震わせながら、アリスはじっと下を見つめて罵倒に耐えた
少なくとも、ある部分では事実なのだから…
何も言い返さないアリスを見て、あいかは内心イラついていた。こんなのに負けたの?と
その思いは、言葉となってアリスに叩きつけられた

「やっぱり、強いんですねー。仲間を二人殺しただけありますね」
「あ、ごめんなさい。それはアリスじゃなくて、アリスに似た別人でしたか」

俯くアリスの足もとに、雫が一滴、二滴
そんな様子を見て、裏六位、明楽いっけいは止めに入ろうとした
が―その手は凍りついたかのように動かなくなった

そこにいた“それ”は、もうゴミ袋や頭陀袋と呼べない存在だった
何の主張もなかったシンプルな白い面は
見る者に威圧感を与える仮面に変わっており
薄汚れたローブは、重厚な漆黒のローブに変わり
その上から金のエングレービングを施された黒いマント
そこに居たのは、死を操る魔法使いそのものだった
気がつけば、アリスの横に移動していたそれは、アリスの手を引き

「いこう」

と一言呟いた。自分を無視するかのようなデスメタルに、あいかの感情はますます昂る

「すいません、今その子と会話してるんですけど。邪魔しないでくれません?」
「会話っていうのは、お互いが言葉を交わし合うこと。少なくとも今のは会話になってない。それじゃ」
「…ッ!」

元々、デスメタルの事を嫌っていたあいかには、その一言で十分だった
その一言で、抑制していた嫉妬、嫌悪感、怒り、その全てが爆発し、あいかはデスメタルに対して
平手を繰り出した

「余所でやって」

あいかの平手を容易く受け止めたデスメタルは一言
と呟き、背を向ける。以前とは比べ物にならないほど強くなっている
その現実を、直に見せつけられたあいかは、背を向けたデスメタルに対して、叫んでいた

「…仲間殺し!」
「貴女とアリスのせいで、どれだけの犠牲が出たと思ってるんですか!」

その一言でデスメタルの足が止まる

「あら、少しは悪いと思ってたんですか?けどご愁傷様、死んだ人はもう帰らないの!
 あなたとアリスがヘタ扱いて殺したようなもんじゃないですか。なんとも思ってないの?」

背を向けたデスメタルの肩が小さく震える。アリスからは嗚咽が聞こえてくる。
それを見たあいかは、さらなる口撃を続けた
だが、そんな口撃にもデスメタルは一切反論せずに、黙って耐えていた。次の一言を聞くまでは

「あなたみたいなのを助けて、あの二人はバカじゃないんですか?犬死にですね」

もちろん本心ではない。売り言葉に買い言葉。つい、口に出しただけの事である
だが、それを聞いたデスメタルは、猛烈な勢いで振り返る。仮面の目にあたる部分が金色の軌跡を描く

「…逝け」
「ダメだよデスメタル!やめて!」

何をするのかわからない。だが1年ぶりにあったデスメタルは何かがおかしい。危険な気がする
それを直感で理解したアリスは、デスメタルにしがみついていた
だが、そんなアリスの静止を余所にデスメタルの羽織っているマントから
一本の鎖が凄まじい勢いであいかに絡みつく

「ガハ…ぐ…」
「ダメだよぅ…!やめて!アリスは別に平気だから!気にしてないから!」

首を絞められて、ロクに声を出すこともできない。それにこの鎖は何かおかしい
熱いのだ。異常なまでに熱い。その熱は霊体である、あいかの身体、蝕む熱だという事に
気づくのにはそう時間はかからなかった

「ぐ…ごの…」

力が一切出ない。能力が使えない。動くことも出来ない。霊である自分が恨めしい
自分はこのまま殺されるのだろうか。だがそんな折、他の聖天が争いに割って入ってくる

「おい!お前ら何やってんだ!やめろ!」

裏六位、明楽いっけいがデスメタルを止めに入る

だが、そんないっけいもまた、鎖―ゴシックメタル―に縛りあげられた

「鎖だと…?キャラが被ると言わざる得ない!」

そう叫び鎖を投げた、斉藤の鎖をゴシックメタルは侵食し破壊、更に止めに入った
アルスラー、楽も捕獲。デスメタルの周りに、鎖に拘束された4人の聖天が宙づりになって浮かんでいた

「ぐ…辞めろ…俺たちは仲間だろうが…」
「俺の鎖が…」
「イージスの防御が崩される…」
「アイヤーとしか言いようがないアル…」

あいかに至っては、もう喋る事も叶わない様子で
鎖に縛られた部分からシュウシュウと白煙があがっていた
ヘタに近づけば二の舞になる―。

「俺達がでしゃばるより、すぐにトム辺りに報告する方が妥当だ」
「聖天士同士の戦いとなれば…あのトムさん…黙っていませんね」
「いや、笑ってんじゃね」

他の聖天は遠巻きに、対処を考えているようだが
それではもう、間に合わない
そんな折、パァン―と乾いた音が響いた
デスメタルの仮面が床に転がり、カラカラと音を立てる

「…?」
「馬鹿!デスメタルいったいどうしちゃったの!?こんなの嫌だよ!
 ブロウとパイソンももこんなの喜ばないよぅ!」

デスメタルを平手でぶつと、アリスは叫びながらその場を走り去っていく

一方デスメタルは

「ブロウ、パイソン…」

と、一言呟くと鎖を消し、そのままふらふらと外に出て行ってしまった

「ゴホッゴホッ…」
「大丈夫か?酷い目にあったな」
「あの、助けてくれてありがとうございます」
「いや、別にいいんだ。けど、君も言いすぎだよ。後で謝りにいかないとな」
「…そうですね」
「まぁ、今はゆっくり休むといいよ。おやすみ」

この人は確か、最近、父親の後を継いだんだったか、渋の谷の黒い三連星と最後まで戦い続けて
裏六位になったとかいう、明楽さんだったろうか…
あいかは薄れゆく意識の中で、真っ先に自分を助けてくれた人の事を考えていた

「なんて奴アルか!」
「俺の鎖が…許せん!」
「やはり、裏切り者と死霊使いという訳か。残念だ」
「あれは少しやりすぎね…」

西園寺やトム達、超上位陣との会話を終え次郎がその場にやってきたのは
全てが終わってからだった

何やら、デスメタルやアリスがもめ事を起こし、これ以上無いほどに評価を落としたらしい

「一体…何があったんだ…」
「あ、じろう。わぬんが、見てた」

その光景を見て一人、疑問を口にしていた次郎に
現代最高のシャーマンと呼ばれるワヌンガ・ジャメが
人懐っこい笑顔を向けて話かけてきた

「ししゃのめがみ かがみのめがみ、かばってたたかった」
「かがみのこ それ かなしんででていった」
「ししゃのめがみ、ないてないけど、ないてた。かわいそうね」
「そうか、ありがとよ、ワヌンガ」

いつも自分は肝心な時に…!
次郎は悔恨の念苛まれながら走っていた
彼女達が恐らく向かっているであろう場所に
そして今は亡き、二人の友の墓所へ
そんな次郎の背には、デスメタルとアリスに対する怨嗟の声が突き刺さっていた

クリムゾンブロウ曰く「フナムシって一般的な食材じゃないらしいぜ」
ブラックパイソン曰く「マジで。通りで海の幸にしてはトイレみたいな味するわけだ」

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