闇伝 外道対外道2


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「・・・本当に、あんな者たちで大丈夫なのでしょうか」
「それを言ったら私はどうなるのかね、殺人(あやと)」
「いえ、決してそういう意味では・・・」
側役の殺人の危惧も分かる。見た目はどう見ても普通の高校生2人と中学生1人だ。
だが・・・少なくとも男二人は、「龍迅雀苛」と名を馳せたレディ・ボスのお墨付きだ。
恐らくは心配などするだけ無駄というものだろう。
それに、殺人は別れ際に遠巻きに見ただけだから気付かなかったのであろう。
3人とも、闇に生きる者であれば隠せようもない、血の臭いと死の臭いが染み付いていることに。
僅かな時間の付き合いでも、嫌と言うほどに感じさせられた。
「闇というのは、かくまで深いのか、親父・・・」
彼らと同等か、それ以上の死を演出してきた者たちと闘わなければならないことに、
回答は戦慄を隠すことが出来なかった・・・。


「さて、と。どうするよ苓。要するにあのお坊ちゃんの尻拭い手伝えってことだろ?」
「そういうことだな。同業者の戦力を殺ぐのは相対的にウチの利益に繋がる。
 ボスなら、この好機を逃さない手はないと判断するのは当然だろう」
「だったら自分で殺れよなぁ、ったく。まぁバイト代は弾むみたいだからいいけどよ」
「・・・随分と嬉しそうね、バカ兄」
「当たり前だろう? だって金が手に入るんだぜ?」
「お金なんかのために、殺し合いをして、楽しいの?」
「そう言ってやるな、杷羽ちゃん。学費や食費はコイツの稼ぎから出してるんだ」
「・・・ええっ!? ホントなの?」
「当然だろう? あんな年中寝転んで過ごしてる親父に労働収入があるわけないだろう」
親父殿は株やらなんやらで巨万の富を築いているので生活には困らないのだが、使い道は
飲む打つ買うと杷羽への莫大なおこづかいだけである。翠への小遣いは打ち切られた。

「さて我が妹よ、晩飯は何がいい?」
「・・・何でもいい」
「よしじゃあピーマンとセロリとレバ刺しだな」
「この間パパさんが食べさせてくれた、グラタン、っていうのがいい」
「だったら最初からそう言えっての。じゃ帰りにスーパー寄ってくぞ。もちろん西友な。
 でないと俺らの命が危い。で、苓はどうする? ウチで食ってくか?」
「いや、多分今日は帰らないとオフクロが本気で泣き出しかねん。今日は家で食う」
「そっか・・・オマエのかーちゃん子煩悩だもんな」
「全く・・・いい加減子離れして欲しいものだが」
「それ言ったらウチの親父も似たようなもんだけどな! はっはっは!」
「全くだな・・・杷羽ちゃんが来てからは余計にな」
朗らかな会話と共に家路に着く三人。
「あいつらですかい・・・?」
「ああ、そうだ。アレがあのガキ社長が引き入れたっていうヤツらだ」
「あんなガキどもがですかい? ダディの後釜な糞坊主ならともかく、あれはどう見てもガキだぜ?」
「だがな、十六聖天やらこの前滅んだっていう十大聖天とかいうのにも、あれくらいの歳のガキが
 混じってたって話だ。見た目だけでは判断できん」
「ま、とりあえずかかってみりゃ分かるってもんですね・・・行きますかい?」

「おい、どうした? ってオイ? 何処行ったんだ? つかここは何処だぁ!?」
「おじさんたち、ウザい。これからおにいちゃんが作ってくれる晩御飯なの。邪魔しないで。ね?」
さわやか、まぶしい、かわいらしい、天真爛漫という言葉を具現化したならきっとこんなだろう、
10人中10人の男性がそう答えるに違いない、少女の笑顔。

少女が男に背を向けた瞬間、男はもう一人同様に、世界に『還元』されていく。
爆ぜるでもなく、裂けるでもなく、少女の幻想に溶け込んでゆく。そう、溶けて亡くなっていく

「何やってんだ! とっとと行くぞワンワン!」
「ワンワンって言うな! 死ね! 今すぐ死ね! 殺してやるバカ兄!」
何事もなかったかのように、杷羽は兄とその友人の後を追う。

世はこともなし。平穏が保たれたまま、刺客は失せ去る。
兄達には敵わぬこの力でも、手助けくらいはできるはず。だから付いてきた。
自分は一人でないと感じさせてくれた男と同じ体質を持ち、自分を圧倒する力を持ち、
そして、家族という名の得難きものを与えてくれた、その人。
その人の手助けのためなら、この命も、惜しくはな
「つまんねーこと考えてんじゃねぇぞ? 妹は妹らしく兄の背中についてくりゃいいんだよ」
「うっさいバカ兄! 手をどけろ! 髪が乱れる!」

                            ・・・ありがとう、おにいちゃん。


「早速、動いているようだな」
「ええ・・・下っ端のようですが、何人か放たれているようです」
「まずは小手調べ、か。彼らなら、問題はないだろうな」
「それほどに信用しても、良いものでしょうか。彼らは雇っているとはいえ、敵対組織の人間。
 いつ裏切られるとも分かりません」
「構わん。それに、彼らはエサがある限りは裏切らん」
「エサ・・・と、申しますと?」
「金・・・と、そう、エサ、活餌さ」
親父の傍に付き従い、自分にも殺しのイロハを教えてくれた、親父の懐刀「三本槍」。
彼らの目的は、「三本槍」を、そして我がファミリーの者を少しでも多く狩ることであろう。

「・・・親父、なぜ、死んでしまったんだ・・・」
父は死に、幼き頃の憧憬そのものであった三本槍もいずれは、自分が殺すか、彼らが殺す。
この不条理こそ、回答が最も嫌うものであった。

「・・・社長、こちらにも来たようです」
「そのようだな・・・」
車から降り、刺客と対峙する回答と殺人。敵は・・・こちらも数任せの下っ端か。
「へっへっへ・・・社長さんよぉ、いくらなんでもこの数は、アンタにゃ無理だろう?」
「戦いは数、ってことを教えてやるよ、ヘッヘッヘ」
愚かな。戦いは数、これは正論だが、あくまでも烏合の衆を大量に動員する戦争での理屈だ。
少数同士の戦いにおいて求められるのは、個々人の質、これ以上のものはない。

烏合の衆の一人の、頭が爆ぜ飛ぶ。死鬼堂 殺人の「固定化」した法術によるものである。
無味無臭透明の爆薬の塊を見極めるには、刺客の質は高くはない。
そして、炸裂音に気を取られている烏合の衆は、一人、また一人と息の根を立たれる。
回答が父から遺されたモノの一つ、殺しの秘術「裏殺し」。
どれほどの探知スキルを持とうとも、それすら上回る絶対的な気配遮断にて、確実に目標に
近づき、そして目標の命を刈り取る。

「お見事です、社長」
「いや、まだまだだ・・・あの程度の数、親父なら一人で殺れたはずだ」
自分は未だ未熟。「裏殺し」の真髄を垣間見せることもなく、親父は自分の前から逝ってしまった。
未完成の「裏殺し」は、親父のように思う限りに扱えるものではなく、時間制限がある。
その時間制限を克服するために様々なアプローチをしているが、まだまだである。
たかだか烏合の衆程度でも、数が居ては殺人の爆破能力という目くらましを使わない限り倒しきれない。

親父が互角と認めた「三本槍」、この手で打ち倒すことなど出来るのだろうか。
『征雄』の者を雇いはしたが、「三本槍」は自らが狩らねばならない。「ダンタリオン」の社長が
中村回答であると知らしめるには、問答と同等である「三本槍」を狩り尽し、力を示さねばならない。
そのためにも、最低限、親父の「裏殺し」の真髄を見極める必要がある。その切欠はどこにある・・・?


「よし、と・・・オヤジもいいかげん手伝え! メシ抜くぞ!」
「メシ抜きはバカ兄だけで充分だ。とっとと並べろバカ」
「ついに兄が抜けただとぉ!? てんめ、今からオマエの分だけレバーまみれにしてやろうか!」
「翠、いいから黙れ。カワイイ杷羽にメシがあるのは当然だが、オマエが食うメシはない。去ね」
「こんの、クソオヤジ・・・! ちっ、おらよ、食え。リクエストどおりのグラタンだ」
「ほう・・・オマエ、メシ作れたのか」
「テメェ! 今の今まで食ってたメシは誰が作ってたと思ってんだぁ!」
「てっきりコンビニ弁当だとばかり」
「殺してやろうか、このクソオヤジ・・・」
「おうやらいでか! たとえ貴様に無幻の悟りの極を教授したとて、まだ貴様に劣るとは思わんわ!」
「食べようパパさん。おなかいっぱいになってから、このバカ殺そう」
「そうだな~さすがかわいい杷羽はワシの味方じゃのぉ~」
賑やかな夕餉の食卓。今日の久鬼家も平穏安泰そのものである。
…庭に闖入者で出来た奇妙な形のオブジェが幾つもあることを除けば、であるが。
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