十六聖天外伝 死神を目指すモノの章 第五話「一周忌・後編」


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聖天墓地― 十六聖天として死んだものが眠る場所
そこに、アリスは居た
花子の活けた花や西園寺が備えた和菓子
そして勘違いしたトムが飾り付けたイルミネーション
まさにそれは、生前の二人をイメージさせる賑やかな墓だった

「ねぇ…ブロウ、パイソン。デスメタルはアリスを庇ってくれたのに
 アリスはデスメタル叩いちゃった…。嫌な子だよね、アリス…」

死者は何も語らない。それでもアリスは、喋るのを辞めなかった

「…どうすればいいんだろう。あの子達とは出来るだけ戦いたくないのに
 それでもあの子達は、ブロウとパイソンの仇だし…アリスはどうすればいいんだろぅ…」
「ねぇ、なんとか言ってよ…」
「…また泣いちゃった。ごめんね、お墓汚しちゃって。冷たかったよね」
「あ、けど二人の事だから喜んで食べてるのかな…。一応アリスもまだ“ようじょ”だよね」
「…それじゃ二人が変態みたいだぞ」
「変態だもん…次郎だって知ってるでしょ」
「化けて出てくるぞ」
「出てきてくれるなら、それでも…いいもん…!」
「一年、か…。長いようで短かったな」
「短いようで、長かったよ」

もうすぐクリスマスである。この季節に長時間外にいるのは寒かったのだろう
アリスの肩が震えているのを見て、次郎は自分の着ていた上着を、アリスに被せる

「次郎の服、大きいね」
「あぁ。高知が生んだ自慢の身体だ」
「アリスね、次郎の故郷が、大事なものがなくなったって聞いた時、よくわからなかったの」
「けどね、今ならわかるよ。無くしてからわかるなんて、遅いよね」
「人間、大事なものほど無くしてから気付くのさ…」

今までの戦いで失ったもの
アレクサー…ブロウ…パイソン、そして高知県の笑顔を脳裏に浮かべると、少し目頭が熱くなる

「けどな、失くしたからこそわかるモンもあるだろ?」
「…?」
「もう二度と、こいつ等みたいに失いたくないと思ったろ?」
「…うん」
「その気持ちが大事なんだ。そして俺はあいつらが命がけで守ったお前達を失いたくない」

その言葉は、アリスと、そして次郎の後ろに立つデスメタルに向けられていた

「デスメタル…!」
「背、伸びたな」
「成長期だから」
「デスメタルも来てくれたんだ」
「今日で一年だから」

そういうと、世界中のお菓子を墓前に供えるデスメタル

そんなデスメタルに、アリスは

「凄い…この一年で世界中旅してたの…?」
「旅じゃない。狩り」
「…そうなんだ。あのね、デスメタル。さっきは…ごめんね」
「…?」

そう言うと、アリスはデスメタルに向けて手を差し出していた

「あくしゅ。仲直りのあくしゅ」

優しい笑みを浮かべながら、アリスは少し不安そうに
上目使いでデスメタルを見上げた
不覚にも、デスメタルは自分に対してまで、その様な優しさを見せてくれるアリスに
涙しそうになった。だが、そんな気持ちを押し殺して、デスメタルはアリスに背を向ける

「え…」
「おい、デスメタル」
「勘違いしないで。ここに来たのはお別れを言うため」
「おわかれ…?」
「お前…」
「あなた達の知ってるデスメタルは、そこに置いてきた」
「そんな」

今にも泣きだしそうな顔で、アリスは墓を見て驚いた
よく見れば菓子を盛りつけている皿は、以前使われていた仮面
その下に敷かれている布は、以前使っていたローブ

「俺達の知ってるデスメタルは、“ここ”にいるって訳だ。ならお前は誰なんだよ」
「私に名前なんかいらない」
「やだよデスメタル、アリス達友達だよね…?」
「そう。友達だった。デスメタルとあなたは友達だった」
「けどもうデスメタルなんて何処にもいない」
「うそ!じゃあなんでさっきアリスを助けてくれたのよ」
「さっきまではデスメタルだった。それだけの事」
「馬鹿野郎…」

デスメタルは二人の墓地を見て改めて気持ちを固めたのだ
決してこの気持ちを忘れないでおこう。自分は折れず曲がらずの復讐の刃と化そう

どんな恨みを買ってでも、本懐を遂げるまでは、それ以外の事は考えない
どんな恨みを買うかわからないから、誰も自分に近寄らせない、と
だから

「だから、ここにいるのはあなたの友達じゃない。あなた達なんか知らない」
「…!」

その言葉を聞き、アリスは声をあげて泣き出した
そして次郎は

「それでいいのか」
「それでいい」
「後悔しないのか」
「死ぬほどした。二人が死んだときに」

「お前、変わったな…」
「変わってないよ。最初からこんなの。…私が誰だかわかる?十六聖天一の嫌われ者
 死霊使いのデスメタル!わかる!?私は最初から誰も周りにいない!最初に戻っただけなんだから!」

デスメタルは、別人かと思うほど、激しい言葉を、そして長い言葉を次郎にぶつけていた
それが彼女の気持ちの裏返しだという事に次郎は気付いていた
だが、それを次郎に止める権利も術もなかった
男が一度決めた事を邪魔する訳にはいかないのだ…

「そうか…」
「そう」
「いつでも好きな時に帰ってこいよ」
「…」

次郎は聞こえただろうか。デスメタルは、仮面からこぼれおちた涙と
一言、ありがとうという言葉を残してその場から姿を消した

―同時刻、西園寺邸

「…久しぶりだな、アベル。聖天が集まる日にここにいるとは、本当に聖天を抜けたのだな」

部屋の片隅。影が落ちたその部分から声がする。懐かしい声が

「数百年ぶりか。もう出てこれるのか?」
「まだ現世に形を留めるほどには、な。しかしソロモンに受けた傷はそうそう言えんよ」

「ソロモン、か。アナスタシア…」
「別に彼女を恨んではいない。私が止めるべき事だったのだ」
「古き友よ。君が後悔しているというのなら、ひとつ頼まれてくれないか」

クリムゾンブロウ曰く「フナムシで思い出したけど、海って一つじゃん。幼女の尿とかも含まれてるじゃん」
ブラックパイソン曰く「どうやらまた一人歴史に名を残す天才が現れたようだな…」

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