闇伝 外道対外道3


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ダンタリオン先代派の撃滅(あわよくば全滅)の任務を請け負って早20日。
これまでにも散発的な襲撃はあったものの、特別大きな動きがないままに、
襲ってきたチンピラまがいを生塵に変えながら、征雄の二名とちびっこ一名は
ほぼいつもどおりの日々を過ごしていた。

「さて翠、多分オマエのことだから気づいてないだろうことを話すが、いいか?」
「おうなんだ? おれはこの生意気なチビッコに卍固めをかけるのに忙しいんだが」
「いたいわ! はなせ! しねこのばかにぃ!」
「はっはっは、暴れると余計に極まるぞ~? そろそろギブか? ん?」
「・・・いい加減にしろこの阿呆が」
苓は実に冷静に、かつ正確に、愛銃「ヴァンデッタ」で翠の眉間を打ち抜く。

「いや~すまんかった。で、話って何だ?」
「ああ・・・よくよく考えたら、おかしなことに気付いた」
「おかしなこと・・・とは、何ですか、苓さん」
「うむ、気のせいでなければ、だがな」
「随分もったいぶるなぁ苓。あんなどうでもいいやつらで気にすることなんて」
「バカ兄は黙ってろ。話が進まない」
「ほう・・・後で逆海老でも極めてやろうか」
「次は『斬』で胴体掻っ捌くぞ翠。・・・これまで襲撃してきた雑魚共の中に、
 不思議なことに、何度か同じ顔を見た」
「はっはっは、何かと思えばそんなことか! そんなの」
「ゲームの雑魚敵と同じ、とか言わないでよねバカ兄。普通に考えたら、双子・・・
 以外に、同じ顔なんて、まずありえないわ・・・」
「そう、そこだ。普通に考えたら同じ顔の人間なんて双生児くらいしか考えられない」
「とすると、ヤツらは双子ばっかりの殺し屋集団だとか?」
「うむ、翠は無視したよさそうだ」
「そうね、バカだもん」
「くっそぉ・・・隅っこでいじけるぞ・・・」
「バカ兄はほっといて、と。同じ人間が何人もいるとなると・・・クローン?」
「だろうな。そうだとすれば、これまで無駄に人員をけしかけ続けられていることにも
 合点が行く。いくら何でも、あれだけ構成員を一方的に狩られ続けているにも関わらず
 雑魚をこれだけ排出できるとなると、それこそそこでいじけてるヤツの弁ではないが、
 RPGのザコ敵のようなものだ。経験値も金も皆無だが」
「ふ~ん。でも、殺し屋さんにそんなことできるのかしら・・・」
クローン。人間の培養。複製。能力の移植。人体実験。杷羽の胸中に、苦い思い出が過ぎる・・・
ちがう、わたしはひさきわわ、もうむかしのわたしじゃないの・・・
「どうしたチビッコ。そろそろおかしタイムなのに何も出ないから捻くれてるのか?」
「バカ兄と一緒にしないで。ちょっと・・・思うところがあっただけ」
「とりあえず、向こうはザコ製造機を持ってるってことだろ? あんなの幾らいたって
 変わらんだろうに。へちょくて腕が鈍りそうだけどな」
「問題はそこじゃない。なんでそんなものを持ってるか、だ」
「・・・そっちか。まぁ、たかだか殺し屋風情でそんな装置こさえてるのも不自然だよな」
「ああ、俺たち暗殺家業に求められるのは、量より究極の質(プロフェッショナル)。ザコ大量生産は
 もっと別の意味があると見ていいだろう」
「・・・中村さんの組織の内紛を使って、誰かが装置の実験してる、とか?」
「で、目をつけたのがコレだ」
そう言うと苓は新聞を広げ、テレビをつける。
「お~、新聞なんて見るの何年ぶりだろうな・・・そしてテレビでアニメ以外見るのも
 何日ぶりだろうか」
親父殿の博打が安定生産の軌道に乗ってからは新聞など金の無駄・不要と契約を打ち切った。
そして杷羽が家の子になって以来、アニメ以外の番組がテレビ画面に映ることはなくなった。

「オマエの感動するところはいつもピントがずれるな、翠。とりあえず見ろ」
テレビでは、いわゆる新北海道で、土着のペンギンや白熊の群れを蹴散らしながら、
片腕が銃器と化している男と三人の壮年が対峙し超次元的な戦いを繰り広げるという
隠し撮り動画が、スクープとばかりに報じられている。
もう一方、新聞・・・いわゆるゴシップ誌であるが、そこにはドバイで大規模テロが
発生した記事がおもしろおかしい脚色を含めて報じられている。
「ほう・・・なんだよ、エロ記事ねぇのかよ。杷羽に朗読させようかと思ったのに」
「お前はもう出て行け」

「うぉ~いわるかったよぉれい~ おれもまぜてくれよぉ~」
「バカは放っておこう・・・杷羽ちゃん?」
杷羽の顔が険しくなる。スクープ動画に釘付けの目線の先には、ちょっと古めの刀剣商をあたれば
直に見つかりそうな現代刀を構える男、光放つ荘厳な盾を構える男、数多くの『自分』を繰り出す男。

私を認めてくれた人がいた。認めようとはしないけれど共に闘う仲間がいた。もう一人の私がいた。
もうどうしようもないほどにイカれた変態もいた。パパさんと同じくらいに博打好きのやつもいた。
口八丁手八丁を地で行くやつがいた。何を考えているのか分からないやつがいた。
そして・・・頭でっかちと長がいた。
みんなみんな、いなくなってしまった。今や残っているのは、私だけ。
家族でも、仲間でもなく、ただ共通の目的があり寄り集まっただけの集団だった。
でも、それでも悪くはなかった。でも、みんなみんな、ヤツラと闘い散っていった。
アリス・イン・ナイトメアに屈し、心身共に襤褸雑巾同然になった私を救うために、身体をはって
助けてくれたジークを見届けることも出来ず、私は、誰にも見つからないように逃げるしかなかった。
そんな私を、何も言わずに拾ってくれたパパさんとおにいちゃんには、感謝している。
でも、私は、私の中には、まだ、あの時の私が残っている。
忘れようとしても忘れられない。消そうとしても消すことなんて出来ない。

無論、私にも彼らから刃を向けられる道理はある。
彼らと戦い、傷つけ、やつらの仲間2人を殺している。それは紛れもない事実。否定は出来ない。
パパさんやおにいちゃんは言っていた。人を討つことができるのは、討たれる覚悟がある者だけだと。
私には、それがなかったのかもしれない。欲しいから、そうしたいから、それだけで力を揮っていた。
それを為すだけの力があると、資格があると、奢った代償があの別離だというのであろうか。
今でもたまに、あの日のことは夢に見る。どうしようもないほどの悪夢。

初めて久鬼の家を出ようとした日、おにいちゃんに止められた。
復讐なんて下らん、ガキの喧嘩に劣る愚行を兄は許さんとか言っていたのでとりあえず欠けた世界の
補充のために取り込もうかと思ったら、逆に泣かされた。今時尻叩きなんて森羅のエージェントでも
しない行為を私が泣くまでやめなかった。・・・でも、初めて泣くことが出来た気がした。

せめて一太刀と願わずにはいられない心と、久鬼の娘でいたいという気持ちが混在していたが、
しばらくぶりに、ヤツラ・・・十六聖天の姿を液晶越しにではあるが目にすることで、ふつふつと
暗い思いが湧き起こってく
「おらっしゃあああああああああああ!!!!・・・ほう、これはまた随分とあだるてぃな」
「きゃああああああああああああ!!!!!!! なにすんのよバカにいいいいいいいいい!!!!」
「・・・妹のスカートめくって楽しいのか? 翠・・・」
「いやだってこいつシケたツラしてんだもん。からかってやるのが兄の義務だ!」
「もうやだこのバカにい! 変態! しね! しんじゃえ! 帰ったらパパさんにいいつけてやる!」
「なんだとう!? やらいでか? どうせならお嫁に行けない身体にしてやろうかぁ?」
「・・・死ね、糞兄。もう生かしておく価値もないわね・・・」
「お兄ちゃんに立て付くとは、なんと愚かな・・・ならば、貴様に妹の何たるかを叩き込んでやるわ!」
「はぁ・・・兄妹揃って表に出ろ。ここが誰の家なのか思い知らせてやろうか」
「えろうすんまそん・・・」「ごめんなさい・・・」
「さて、話を戻すぞ。とりあえずこの動画のこっち側、オッサン勢・・・十六聖天については
 これからの話ではどうでもいい。問題はこっち側、この片腕銃の男だ」
「ほう・・・これはまた漢心をくすぐる武装だな。やっぱり死ぬときはティウンティウンいうんだろうか」
「流石は妹のために早起きして弁当を作ってやる男だ、話が分か・・・ってたまるか馬鹿。
 コイツの服装を見て欲しい・・・つってもどうせ分かりにくいので思いっきり画像加工してみた」
そう言うと苓はノートPCを取り出し、加工済みの画像を見せる。
「前もって言う。翠が期待するような画像も動画も収まってない。見て欲しいのはここだ」
「チッ、つまらん・・・こいつか」
「これは・・・ハーケンクロイツ、でしょうか」
「出来が悪い兄とは違って話が早くて助かる。今時こんなマークつけてお天道様の下にのこのこと
 出てくるような、脳みそのネジ吹っ飛んだような翠のような馬鹿はそうそういやしない」
「今さらっと酷いこと言ったよね、苓?」
「それはどうでもいい。で、こいつらは・・・」


「アポカリプス・ナウ、か」
「恐らくは。彼らの技術力ならば、本人と寸分違わぬクローンを大量生産することも可能かと」
「まったく、人の国を、組織をなんだと思ってるんでしょうねぇ」
「・・・しかし、奴らが先代派のバックに付いているとなると、この闘い、短期決戦しかありえないか」
人数、手駒は明らかにこちらが劣勢。どれほどの質の者が集まろうとも、圧倒的な数の前には
無力でしかないこともある。そして、敵には、質の面で勝る「三本槍」がいる。
こうなると、断つべきは、基か、繋がりか。
回答は思案する。両方を同時に断つほどの数の手駒はない。
しかし、基を断つならば物量戦で勝る敵が圧倒的に優位。繋がりを断つならば2つの組織を僅かな手勢で
同時攻略しなければならなくなる。
アポカリプス・ナウのトップコマンダー「クリフォトの十大悪」は、いっけいや花子ら十六聖天と
同等かそれ以上の戦闘能力を持っていることは、先日の新北海道の乱や「ヴァジュランダ争奪戦」で
実証済みだ。これほどの存在と戦うことなど、今のダンタリオンの状態では不可能に近い。
「止むをえん、が、相当な賭けだな・・・」
結論は出た。あとは、賭けに勝てるか否か。
生命を賭けたゲームに勝つために最大限の努力を為すのみ。
…組織の血を流さず、邪魔者を消す。あわよく共倒れならばなお良し。これも、偽善だろうか。

親父と賭けの真似事に興じたことはあったが、一度たりとも勝てた例がない。
そんな自分があえて打って出る、この大博打。想像を絶するイレギュラーにすら期待したくなる。
「彼らと、レディ・ボスに連絡を。彼らにはドイツで暴れてきてもらおう」
「本気ですか社長! 只でさえ瀬戸際の均衡を保っている状態で彼らに抜けられては・・・」
「社長、アンタ、何を考えている?」
「殺人、月詠、二人にだから話すが、俺には博打の才能はないらしい。そんな俺が打つ、もしかしたら
 生涯最初で最期の大博打・・・乗る気はあるか?」

数少ない当代派の二人、殺人と月詠。彼らの応えは、決まっていた。
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