科学者の逝く先は・前編


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その部屋は漆黒に包まれていた
一寸の光も存在しないので部屋の大きさを測ることができない
足音の響きから察するに相当の広さがあることは間違いない
(空気が重い…それに何この感じ?どこかおかしい)
魂や霊子の密度が異常に高いのにそれら全てがはっきりとしていない
輪郭がぼやけている、存在がずれている

中を進むと突然、上から光が差す
テーブルと椅子が二つのみ、照らし出されている
(座れということか…)
手前の椅子に腰掛けると声が聞こえてきた
「お越しくださいまして、まずは感謝の弁を述べさせて頂きます。
そして、本当に来て頂けるとは予測しておりませんでしたので正直驚いているところです」

暗闇の向うから一人の人物が現れ、向かいの椅子に腰掛ける
白のローブを纏い、顔はフードで覆われ見えない
「…力をくれるって本当?」

手紙が届いていた
~新たな力が欲しくはありませんか?それもあなたにとって魅力的な力が
 それではお待ちしております                   ~
差出人は不明で内容はそれだけだった。罠の可能性もある
それでも良かった。どちらにせよ力の糧になる
そんな気持ちで来たのだ

「その点については謝罪しなくてはなりませんね…。
現状は、私の推論と実験段階でして、可能性はありますけれど検証はできていません。
あなたの協力次第といった所でしょうか」

「どういうこと?力にならないなら此処に用はない」
「そんなに焦らずに少し私の話を聞いてくださいませんか?」
話の内容に興味はないが、この人物には自分と似たような力を感る
気になるので、様子を見るためにもう暫く付き合うことにした


十六聖天本部の地下食堂で次郎は定食をパクついていた
社員割引と月刊十六聖天のクーポン券のコンボである。彼の行動には一切の無駄がない
『お昼の放送』で、ワヌンガの精霊術を用いたヒーリングミュージックが流れている
そんな彼のもとに花子が駆け寄って来た
「次郎さん次郎さんもう聞いたっスか?」
「どうした花子、何の話だ?」
「最近、十六聖天のそっくりさんが出没しているっていう話っス。
諜報部の人たちが話してたっス。気にならないっスか?」
「そんな話は聞いたことがないが、確かに気になるな」
「そうっスよね~。もし暇だったら一緒に正体を探りに行かないっスか?」
「そうだな、気分転換ついでに行ってみるか」
この時次郎は中古で買ってきたYU-NOで行き詰っていた。亜由美で先に進めないのだ。
自殺エンドにいけないのであった。そして全てクリアした時、一人涙したのは云うまでもない。
「そうと決まれば早速出発っス!」
そのときナナエルが二人に近づいてきた
「あれ~花ちゃんに次郎さん二人で何を話しているんですか?」
「あっナナエルさん、斯々然々というわけっス」
「それは面白そうね、私もついて行ってもいいかな?」
「もちろんOKっス。多いほうが楽しいに決まってるっス!」
「ナナちゃんが行くのなら、オジサンも当然一緒だよ。
二人は決して離れられない運命だからね~、ネ(はぁと)」
「うわっ!、キデオンさん急に驚かさないでくださいっス」
突然どこからともなくギデオンが現れた
「『ネ(はぁと)』じゃないです!全然可愛くないです。むしろ気持ち悪いです」
「そんなこと言わないでよ~ナナちゃん。両手に花なんだから。花子ちゃんは文字通りね」
「オヤジギャグ…面白くないですよ」
「まぁいいっス。ギデオンさんも一緒に行きましょう」
「そうと決まれば、一部お邪魔虫もいるけどレッツらゴー!」
ギデオンはナナエルと花子の腰に手を廻し、次郎をチラッと見ながら食堂を後にする
「うるせー」
聖天が四人も一緒に行くような用件なのかと疑問に思いながら次郎は三人の後を追った

「ギデオンさんいい加減にしなとセクハラで訴えますよ」
「謝罪と賠償っス」
「御免なさい。反省するから二人とも能力使うの止めてください…
オジサン死んじゃうから…ホント、マジで…」


白いローブの人物は饒舌だった
「私は科学者でして、主にクローンの研究を行っています。クローンはご存知で?」
「クローン…」
言葉は聞いたことがある。敵の中にもそれを得意としている者がいたと聞いたこともあるが
クローン自体は良く分からない。同じ者を作り出すということくらいの認識しかない
「まあ簡単に説明しますと、基になる個体と同一の個体を作ることです。ここでの同一とは
DNA・遺伝子的に同一ということです。そしてこれが重要なことなのです」
「・・・」

「私は現在、同一の個体を作り出したり、過去の人物と同じ個体を作り出すことを目的と
していますが、これが現在の技術力では不可能でして…。色々実験はしているのですがね。
遺伝子的に肉体つまりハードの同一のモノを作り出すことは技術的に可能です。また記憶
つまりソフトも脳の情報を全て装置でスキャニングし、コピー移殖する事で同一のモノを
作り出すことも同様です。肉体に関してより厳密に言えば時間軸や外部因子の影響などが
ありますがその説明は省かせていただきます。しかし、これでは個体として完璧に同一とは
ならないのですよ。遺伝的にも記憶的にも全く同一のモノなのに、何故だかわかりますか?」
「…経験が足りない…」
「確かにそれも重要です。しかし決定的もの、それは『能力』です。」
「能力?」

「そう能力。クローンにはその能力が再現できない。もちろん能力といっても、遺伝形質的
に表現できる写輪眼等の血継限界に基づいたものなど、一部の先天性的な力は再現できます。
しかしあなたやあなたのご同輩などの多くが持つ、明らかに特殊な力は何度実験しても
不可能なのです。後天性のものも同様ですが、これが可能にならないととても同一の個体とは
呼べない。科学者として結果のある事象を再現・証明できないのは屈辱的でしてね…」
「科学者…。その科学者が何故魔術を使う?おまえは死霊魔術師だろう。同じ匂いがする」
「興味を持っていただけましたか。そう、私は科学者ですが死霊魔術師でもあります。
デスメタルさんあなたと同様にね…」
「・・・」
「そしてあなたは少し勘違いをしています。高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない。
この両者を別々に考えること自体が間違っているのです。科学とは世界の万物の事象について
原因と結果を明らかにし実験・再現することに他なりません。超常だからといってそれをせず
否定することこそ科学者として愚の骨頂です。『無い』ことを証明してこそ『無い』と科学的
言えるのです」

「何が目的?」
デスメタルはスラッシュメタルを呼び出し構える
「その物騒なものを引いてください。敵対するつもりはありませんよ。あなたの力になれる
かも、とういのは本当です」
スラッシュメタルを後へ退くが、いつでも攻撃できる状態を維持する
「感謝します。話の続きですが、私は元々死霊魔術師ではありません。この姿は厭くまでも
私の目的の手段に過ぎません。能力の再現にはどうすればよいのか悩みましてね、同類の
科学者、能力者に関する研究を行っている人物などに協力して頂きまして、一つの可能性を
発見しました。それは『魂』です」
「魂?」
「そう魂。身近なものでしょう?息をするようにそれを操るあなたにとってはね」
確かに魂は個々によって違うし、何よりもその存在自体に力がある
改めて考えればもっともなことである。あまりに簡単すぎてデスメタルは気づかなかった

「しかし昔の私にとってそれは技術の範囲を超越したものでした。魂を判断する方法を
研究するのもよいですが、それは目的ではないのでより簡単な方法を使わせて頂きました。
過去の遺産に頼る方法です。『死者の指輪』といいましたか、魔術具とは便利なものですね、
そちらの研究も実に魅力的です。これだから科学者は辞められない。それを用い死霊魔術師
になりまして、魂を扱えるようになりました。ただ、残念なことに『人間』をやめねば
なりませんでしたがねぇ。くくくくく…」
そう言いその人物はフードをとる
その顔には生気がなく青白い。死人そのものだ。
「リッチ…自分から人を捨てるなんて…」

「そう悲観する事はないんですよ。この躯は色々と便利でしてね。睡眠や食事をする
必要がなくなり、実験に専念できますし、病気や毒、ウイルス、放射線等の影響もない。
それに私自身もクローンでして、他にも私達がいますからなんの心配ありません。
もっともこれは私達のなかでも異質な例ですから本来の私はこうではないのですよ」
満足そうに笑う

~科学者の逝く先は・前編 完~
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