科学者の逝く先は・中編


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「こうして魂の研究に着手しましたが、これが実に興味深い。基を同じくするクローン個体
でも魂に差異が現れてくる。また魂自体にも力と記憶のようなものがある。結果、魂とは
情報体の一種だと仮定できました。この魂をクローン個体に移殖できれば能力の再現ができる
かもしれません。」
「そんなことが本当に可能なのか?」
「…先にも述べましたように検証ができておりませんので、可能か不可能かは私にも正直
分かりません。能力に関しては専門外でしてね。少なくとも魂と能力の関係については、
タルタロスの支配者がそうであるとの情報もありますし、ロマサガ2がそれっぽいじゃないですか。
さらに検証の前に技術的な問題が幾つかあるのです。
第一に、魂を採りだす技術。これは単純に死によって採りだす方法がありますが、生産的
ではありませんし、良い状態のまま採取できません。
第二に、魂を複製する技術。一個体につき一つの魂しかありませんが、それをコピーする
ことができません。
第三に、器に移殖する技術。別のクローン個体に移殖しようとすると成功しない。拒絶反応
が出てしまうのです。器を空の状態にしていても、です。原因はまだ証明できていません。
そこで、デスメタルさんあなたの能力に着目しました」
「わたしの?」
「あなたは『ソウルスティール』という力をお持ちですね。それでで第一は解決するはずです。
第二、第三は私の死霊魔術師としての力では不可能でしたが、より強力な力であるあなたなら
解決するはずです。例えば、霊体を融合する能力は、逆に分離複製に応用できるでしょうし、
ガーディアンにお使いの封印技術は移殖技術に適しています。何よりあなたがお持ちのその眼、
『金色の魔眼』でしたか?それに興味があります。もっと有用な力があるのではないですか?
少し研究させてください。もちろん成果はフィードバックいたしますよ。どうです悪いお話では
ないでしょう。私としても、肉体、記憶、魂を同一とした完璧なクローンの作成という自身の
仮説の実験が行えて嬉しい限りなんですがね」
「わたしを利用しようということか?そんなくだらないことに興味は無い。あなたを倒して
反対に力の糧にさせてもらう」
鎖が科学者を絡めとろうと襲う
「説得はできませんか…ではデスメタルさん、あなたは失った人物がいるのではないですか?
もし、ソレが戻ってくるかもしれないとしたら?」
「…!!」
彼の手前で鎖が止まる


「あーあ、なんで折角のデートなのにこんな辛気臭い処へ来なきゃいけないんだよ。
それよりナナちゃん、アッチにあった電飾の綺麗な建物でオジサンと楽しいことしようよ」
「デートじゃありません。それに何考えているんですか!エッチ、変態!」
「あれ~俺は遊園地のこと言ってるんだけどね。何想像しちゃったのかな?ナナちゃんの方が
本当はエッチなんじゃないの」
「~~~!!!」
ギデオンが揶揄うと、ナナエルは顔を真っ赤にしてポカポカと彼を叩いた
「ハハ、ナナちゃんはかわいいな~もう」
「遊ばないでくださいっス。もうすぐ目的地に着くっスよ」

繁華街を抜けた先にある、何年も前から使われなくなった工場の廃墟群に次郎、花子、
ナナエル、ギデオンの四人は足を踏み入れる
数多くの工場施設がそのままの状態で放置されている。無数のパイプやコンベアなどが
縦横無尽に張り巡らされており、タンクや塔どの建物も複雑に入組み、まるで鉄と
コンクリートの原生林と思える様相を呈している。生命を感じさせないその様はどこか
神秘的でさえあった
「本当にここでいいのか?」
「次郎さん、間違いないっス。聞いた話だと確かにここっス」
「悩んでもしかたがないし、サクッと行きますか!あ、ナナちゃんと花子ちゃんは
俺と一緒にアッチを探そうね~。次郎お前は邪魔だから帰っていいよ」
「帰っていいのはあなたの方です。寧ろ今すぐ帰れ」
「そうっス、やる気が無いのなら付き合わなくていいっス」
「冗談だってばよ」
ふーやれやれ、と次郎は溜息をつく
暫く探索していると異質な巨大建造物を発見した
周りの全ての建造物は冷たく沈黙しているのだがそれだけは違っていた
建物自体から嫌な熱気を感じる。これは生きている、まだ何らかの活動を行っている、と
四人全員が同じ意見だった
「怪しいっス」
「そうね。でもこれ何の工場なのかしら?」
「恐らく溶鉱炉の複合施設だな。営業の外回りをしている時に同じ様な作りのものを
見たことがある」
「なんだっていいけど、とりあえずビンゴじゃね?早速ぶっ壊して、そっくりさんとやらの
顔を見させてもらおうじゃないの」
「何しようとしてるんですかギデオンさん!?ここはもっと慎重に行きましょうよ!」
「その通りっス。何があるかわからないっスよ」
「いや、木下の言うとおりだ。俺たちがここに来た時点でもう十分気づかれているだろう。
今更隠れてもしょうがない。堂々と正面突破しよう」
「お前にしては良いこと言うじゃないか。あと木下言うな」
「次郎さんがそう言うなら」
「そうね、そうしましょう」
「次郎ばっかり何だよ。俺にもちょっとは優しくしてちょうだいよ~」
「バファリンでも飲んでいればいいじゃないですか」
「半分は優しさで出来ているっス」
次郎たちは鋼鉄製の扉を破壊してその中に入っていった


「ど、どういうこと…?」
デスメタルは動揺していた
失った人物?戻ってくる?それはあの二人にまた会えるということなの
「俗っぽく言えば死者蘇生のことですが、もちろんネクロマンシーの類ではありません。
死んだモノと同一のモノをクローニングすると言うことです。魂は情報体だとはもう述べましたが、
情報体であればそこから遺伝情報や記憶を引出すことができうる可能性もあるのです。
つまり、魂さえあればDNA情報や生きた記憶が無くとも同一個体を作れることができるといえます。
同一の個体であれば、それは本人なのではないのでしょうか?」
「・・・」
「会いたくありませんか?彼ら二人に…それも、あなたの協力次第ですが」
「ど、どうして二人のことを知っているの…」
デスメタルの声が震える。
「どの世界の専門家というのがおりましてね、情報も大概のものが手に入るのですよ。
それにあなたたちが思っている以上に、あなたたちは狙われているのですよ…
どうです、その気になってくれましたか?」
クリムゾンブロウとブラックパイソンに会えるかもしれない、という喜びでデスメタルの
思考は冷静さを欠いていた。如何に強力な力持とうが彼女はまだ小さな子供である。
彼らを犠牲にしてしまった後悔と悲しみに、その小さな心で堪えてきたのだ。
「わ、わたしは…」
仮面の下で涙が出そうになる、もう泣かないって決めたはずなのに…
その時、入り口の壁が破られ漆黒の部屋に光が差す。
向うに四つの人影が見える

「ちょっとギデオンさんやり過ぎですよ。扉と一緒に壁まで壊して」
「大丈夫、登場は少しくらいオーバーにしたほうがいいんだって」
「この部屋真っ暗っス。あれ?中に誰かいるっス」
「お、デスメタルじゃねえか。こんなとこで何やってるんだ?俺も人のこと言えねえけどな」
「な、何でもない、関係のないこと。それよりどうして此処に?」
「ああ、斯々然々ってわけだ」
「そう…」
「これまた予想外のお客様ですね。折角の交渉中に…」
白のローブの人物は椅子から立ち上がると部屋の奥へ移動した
「お前は誰だ?デスメタルに何をするつもりだったんだ」
「そういえばまだ名乗っておりませんでしたね。私はファウストという科学者です。
既にお会いしたことのある方もいるのではないでしょうか」
「ファウスト?クリフォトの十大悪か…でも確か壊滅したはずだったよねナナちゃん」
「そのはずです、確か666話で終わっているはずですよ」
「それに今は女のはずっス。フロントミッションとかブロイラーとかそんな名前だったっス」
「私はクローンの一人でしてね。あとフロイラインですよ、お間違えの無いように。
十大悪にはいましたが、アレは所詮、私の研究と実験のための道具に過ぎませんでした。
それにもう用済みでしたからね」
「用済み!?じゃあブリュンヒルデちゃんも用済みってことっスか!」
「ブリュンヒルトですか?」
「ローエングラム艦隊かよ!っス」
「申し訳ありませんブリュンヒルドでしたっけ?」
「聖剣かよ!っス」
「ああブリュンヒルデ、ソレも同様です。大した実験にもなりませんでした。
何の価値もありませんので、あなたたちのお好きにどうぞ」
「そんな、ひどい…」
「ああゲス野郎だぜ…」
花子、ナナエル、ギデオンの三人は怒りを顕にする
次郎だけは冷静にファウストに対応する
「デスメタルも道具として利用するつもりだったのか?」
「いいえ、彼女は協力者として私の研究に加わってもらうつもりでした」
「研究?」
「そう、斯々然々ということですよ」
「・・・」
デスメタルは黙っている
次郎は彼女に近づくとやさしく頭を撫でる
「もういいんだデスメタル。二人の仇はもう打ったし、一人で全てを背負う事はないんだ。
あいつらだっていつまでもお前に苦しんで欲しくないはずだ。もう忘れろとは言わないが
せめて笑顔くらいは見せてやろうぜ」
「自分の為に、もう誰も傷ついて欲しくないだけ」
デスメタルは次郎の手を払うと彼から距離をとる
「でも…ありがとう」
「おう」
次郎の言葉おかげでデスメタルは自分を取り戻せた
「おれは しょうきに もどった!」
そして昔聞いたブロウとパイソンの言葉を思い出していた

「椎名は好きだが、奴は大罪をおかした」
「おキヌちゃんが生き返ってしまった」
「死んでいないおキヌちゃんなどおキヌちゃんにあらず」
「何を信じ生きていけばいい?」
「まだ愛子ちゃんがいる」
「希望の光は残されていた」
「付喪神だけどね」
「机とかむしろご褒美」

そのときは何を言っているのか分からなかった。今でも分からないけど…
あの二人は、例え死んでしまっていてもその状況を楽しむことだろう
それに本当に死んでしまったとは限らない。今でもどこか二人でふざけ合っている可能性だってある
いくらどんなに同じでも本物ではない。本当の二人は自分の心の中にあるのだから
そう考えればファウストの提案は意味のないものだ
「おまえに協力するつもりはない」
「それが答えですか…ではそちらの次郎さんはどうでしょう?なにやら魂が憑いて
おいでようですが、大切な人物ではないのでしょうか?」
「本当かデスメタル」
「本当」
「…沙羅か」
「うん」
「何て言っている」
「自分は次郎の為になるなら何でもいいって。それに魂を戻したら傷と呪も戻ってしまう
からこのままでいいって」
「それで十分なのか」
「忘れないでいつまでも憶えていてくれたらそれで十分だって」
「ああ忘れないさ、桃香…絶対に…」
「ありがとうって」
デスメタルは真境名沙羅こと千歳坂桃香の代わりに次郎に感謝の言葉をおくった
そんな二人を見ていた花子とナナエルは涙ぐんでいた
ギデオンも平気なフリをしているが鼻水をすすっている
「そういうことだ、どうするファウスト!」
「そうですか、最終的にやはり協力はして頂けないのですね。
利用できるものを利用しないとは、全く理解に苦しみますよ…
しかしこのまま手ぶらでお帰り頂くのは失礼なので、もう少しお付き合い願いましょうか」
ファウストが言うと部屋に光が灯る

~科学者の逝く先は・中編 完~
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