黄金の瞳の少女 ⑤


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「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
ナナエルは全力で走っていた
不思議の森で出会った少女、イナバに助けられ花畑を抜けた後ナナエルは元の森に戻っていた
眼前に見えるのは懐かしいノイシュヴァンシュタイン桜子城
「イナバ・・・イナバ・・・!」
後悔していた
森の中でゴールデンアイを使えなかったとは言えあんな少女を残して自分だけ逃げてきてしまったのだ
森には無数の槍と土や木々の焦げた臭いが立ち込めている
ここで戦闘があったのは間違いないだろう
(お兄様?まさかお兄様が闘っていたの?)
兄まで闘う程状況は差し迫っていると言う事だろうか
恐らく敵は複数。兄まで闘っているこんな状況で自分はただ逃げてきただけだと言うのか?
(情けない・・・)
兄に軽蔑されるのも当たり前だ
自分のゴールデンアイは広範囲を一瞬で焼け野原に出来る威力を持っている
だがその威力も逆にこうした可燃物に取り囲まれた環境では使いにくい事もある
そして自分自身の身体能力の低さも・・・
「何が十六聖天七位よ・・・こんな弱点・・・」
自嘲気味に一人ごちるが今は取り合えず城に戻るしかない
ワンダーワールドによって何度も異世界を廻らされずっと現在地も分からない状況が続いたのだ
まず自分が本当に元の世界に戻ってこれたのかを確認する必要がある
「つ、着いた」
城の前に着いたナナエルは門を通り中に入っていった
「何これ・・・」
入って辺りを見回すとそこは酷い有様だった
壁も床も天上もなく、あたり一面の破壊跡が広がり
床にはいく体もの壊れた敵の機械兵と思われる残骸が散乱している
「ここでも戦闘が・・・」
これだけの戦闘、どうやら元の世界に帰って来れた事は間違いないようだ
しかし何故か誰一人人の姿を見ない
味方はおろか敵の姿さえも、音や気配さえも感じられないのだ
「おかしいわね、まさかまだ―」
そこまで来てナナエルは丁度さしかかった廊下に面した一室、医務室に入っていった
それはたまたま医務室の横を通ったので思いついた
ドロシーに負わされた怪我を手当てしようと言う極自然な考えからであった
―しかし―
「な、何…これ…」
傷ついた手の中に覗いているのは、どう見ても本来人間の体に入って居る筈の無い物だった
コードやホース、グラス繊維の膜、金属繊維の筋肉、どれもこれもありえない物だ
(何故こんな物が私の中に入っているの?え、本物?本物なのこれ?)
目の前の現実が理解できない
今まで怪我くらいした事はある。でもこんな深い傷を負った事なかったし
第一病気になった時だってお医者様は普通に治してくれた。でもこれは…これはまるで…
「これじゃまるで・・・」
その時ナナエルはギョッとした
さっきまで血に見えていた物が今はオイルに見える。傷口と思っていた物が別の物に見える
「う、嘘よ…こんなの嘘よ!きっと幻術…そう、幻術よ!もしかしたら夢かも!ありえないものこんな事!」
ナナエルは自分の嫌な想像を打ち消すように必死に他の事を考える
自分が生きてきた証明を、自分が自分である証明を
「だって私ちゃんと記憶も思い出もあるもの!そうよ、これが何よりの証明だわ!」
子供の頃、父や母、兄とじゃれて遊んでいる自分。日常の風景。改築前の実家
ちゃんと自分と家族が記憶の中に居る。昔のクラスメートの事だって覚えてる
十六聖天に入った時の事だって…

 自 分 が 居 る ?

自分が見てるはずの記憶の中に何故自分が居るの?何故アルバムの写真の場面しか学校の記憶が無いの?
何故十六聖天に入った時のイメージを思い出せないの?
医務室の中、外で聞こえ始めた遠雷の音も聞こえないようにナナエルは茫然と虚空を見つめた
「わ、私・・・ギデオンさん・・・」
ナナエルの瞳に一粒の光が光っていた
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