二話


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どれくらい走っただろう
徳間、楽、アルスラー…数多くの仲間が自分“達”の為に道を作ってくれた
次郎やジョン、最高戦力の一角までもが、自分“達”の為に戦ってくれている
だから、絶対に負けられない。負ける訳にはいかない
それくらい走っただろう
距離の問題ではない。クリムゾンブロウが、ブラックパイソンが斃れて2年
ただひたすら、自分の妹が立つ場所に走り続けていた気がする
そんな追いかけっこも今日でおしまい
決意と覚悟を胸に、アリスはその場所に立った

「ジークを突破したのは誰かと思えば、貴女なの?つまらないわ」
「ワンダーワールド、アリスがあなたを止めてあげる。行くよ、シーク」

もうこれ以上、この可哀想な妹に業を背負わせるわけにはいかない
これ以上、妹に不幸になってほしくない。手遅れになる前に
それに必ず妹に伝えなければいけない事もある
アリスはシーク・ハイドと同化し、ワンダーワールドをまっすぐに見据えた

「止める?殺すじゃなくて?本当に優しくて甘いお馬鹿さん。そんな事だから」

アリスの身体が爆ぜ、そこには数百の槍が突き刺さっていた

「こうやって無様に死んじゃうのよ」
「甘い馬鹿でもいいよ。それでも貴女を止めてみせる」

槍が貫いたのはアリスではなく、鏡。砕け散ったのはアリスではなく、鏡
鏡の破片を見たワンダーワールドは背後に立つアリスに、笑みを浮かべる

「少しは強くなったんだ?良いわ。少し遊んであげる。せめて5分は持ってね
 …震えなさい。私の名はワンダーワールド」

世界に二つしか存在しない神の遺産
その遺産のオリジナルを移植された双子の姉妹が互いに睨み合う

「ロックド・ルーム・マーダー!」

アリスとワンダーワールドのいる場所が隔離される
否、隔離されたのではない。全く違う世界に二人はいた
これこそが三月兎の真の能力。時空連続体に強制的に介入させ
決して逃げる事の出来ない、自分たちだけの世界を生みだすのだ
現世から隔離された空間は1メートル足らずでも
その隔離空間の内部の広さは、ワンダーワールドの意志によって変質する

「パーフェクトブルー!」

異空間の海を召喚し、その圧倒的水圧で敵をかみ砕き、水圧の刃で敵を切り裂く
純粋な水を呼ぶだけの能力、魚の従者。だがその規模は海と同量かそれ以上である
その水の牙が隔離空間内でアリスを襲う。即座にワンダーワールドは隔離空間内を転移する
これも三月兎のもう一つの能力

「オーケストラヒット!」

音を操る蛙の従者。人体の内部を振動させ吹き飛ばすレミーのそれとはケタが違う
指向性の高エネルギー収束式超音波。その収束された音の炎は
見る事も、避ける事も、防ぐことも叶わない。その音の炎が大海の顎に飲み込まれた
アリスを襲う。水中での音の伝達速度は空気中の5倍。逃げ場のない音の炎が
360度からアリスを燃やしつくす


隔離された空間に、その特殊な閉鎖空間に異界の海そのものを圧縮して叩きこみ
音を海に直接流し込む。高エネルギー超振動超音波―その振動故に、熱を持つに至った音を
音の炎の熱で、海が激しく沸騰し、みるみる減少していく
それを空から見下ろしたワンダーワールドはダメ押しに

「アリッサ、カーテンコールはあなたに移されたドゥーマウス…そのオリジナルを使ってあげるわ
 …プルガトリウム!」

眠り鼠の空間燃焼。その燃焼力は海が入りきるこの隔離空間を一瞬で焼き尽くすに十分だった
鏡による完全防御?反射?関係ない。全て無くしてしまえば、それでいい
プルガトリウム発動と同時に、現世に戻ったワンダーワールドは、隔離された空間が消滅するのを眺め
クスクスと笑う

「呆気ないわ。けど確かに止まったわね。あなたの息の根が」
「アリスはまだ負けてない」
「…!?」

ワンダーワールドの身体に衝撃が叩きこまれる
ありえない…。吹き飛ばされる事なく、その場に踏みとどまったワンダーワールドは
自分に攻撃を加えたアリスを見て若干の驚きと関心をもった

「驚いた…けどその程度じゃ私には、傷すら付かないわ」
「ならもっと頑張らなくっちゃね」
「“もっと”?もう次はないわ。お馬鹿さん」
「サウザンドアームズ!ブラックドッグ!トゥルース・アイ!」


ワンダーワールドの身体が大気に溶ける―否、そう見えるだけの速度で
アリスの背後に回り込み、千を超える拳がアリスに叩きこまれる
恐らく鏡で反射してくるだろうが関係ない。反射された千の拳ごと、鏡を粉砕してやる
だが、その結果はワンダーワールドの予想とは大きく外れていた
反撃が一切こないのである。純粋に鏡で防いでいるだけ

「つまらないわ…守ってるだけじゃ、何にもならない。死になさい」
「守る?違うわ。待ってたの」

眼の前の鏡に向けて千の拳を叩きこんでいるワンダーワールドは耳を疑った
その声は背後から彼女の耳に入ってきたのだ。そして背後から千の拳がワンダーワールドに叩きこまれる

「…痛いわ」

身体についた埃を払いながら、ワンダーワールドはゆっくり立ち上がる
咄嗟にトランプの兵隊を呼び出し盾にしたので、そこまでダメージを負ってはいない
とはいえ、ワンダーワールドの気は晴れない。格下と思っていたアリスに二度も外されたのだ

「アナタが傷つけてきた人の痛みを知りなさい!」

防御の転じていたアリスが、一転攻撃に移る
だが、吹き飛ばされる瞬間、ワンダーワールドの“眼”トゥルース・アイは視ていたのだ

「舐めないで頂戴。大体理解したわ… グリフォン!」

偉大なる翼の王―グリフォンが発動する。隔離空間ではないこの場所で使えば
確実に基地ごと消し飛ぶ…それ故に威力は限定しているとはいえ、その羽ばたきは
二人のいる場所から全てのものを消し飛ばすに十分だった

「…ッ」
「鏡。これを使って移動してたのね。大したものだわ。守るだけかと思ったら移動にも使えたなんてね
 とりあえず、これで鏡はないわ。次はどうするのかしら」

手に持った鏡を空間ごと燃やし尽くし、アリスに向ってワンダーワールドは歪んだ笑みを浮かべた
鏡と鏡の光の反射を利用して移動するアリスの能力。それを利用しアリスは、致死に至る攻撃を回避していたのだ
そう、最初に身代りになった鏡の欠片を利用して

「こうするのよ!」

再び鏡を形成する。だが今度は欠片ではない。100を超える鏡がワンダーワールドの周りに現れた
そしてアリスの姿が鏡に消える

「あらあら芸がないわね。いくら光の反射だからって、種さえ分かれば」

ワンダーワールドはアリスの方を見ることもなく、攻撃に転じたアリスの首を掴んでいた

「この通り…ね?」
「…自信過剰ね、ワンダーワールド。シーク、お願い!」

そのアリスの声と同時に、天井や壁に無数の穴が開く。その穴からは夕焼け空が見て取れた


クリムゾンブロウ曰く「どうした、嬉しそうな顔をしおって。こいつめ」
ブラックパイソン曰く「電車でな、すげー可愛い子座ったとの椅子に座れた。温かかった」

「あら。そんな事が出来たのね。その小さいのを私にぶつければ良かったのに、何がしたいのかしら」
「アナタにぶつけたら、シークが殺されちゃうじゃない」

首を絞められながらも、どこか余裕をもった笑みをアリスは浮かべていた
その笑みが、ワンダーワールドには気にくわない

「もういいわ。死になさい。さようなら」
「ううん。アリスの勝ちよ」

ワンダーワールドの身体が炎に包まれた


鏡は光を反射する。外には夕日。
そして壁の向こうにはSSS級能力者、ジークフリードの生みだす煉獄の炎
その二つの光を鏡で反射させ、増幅。100を超える鏡は、ワンダーワールドにのみ光を注ぎこむ
そう、アリスは自分が攻撃するために周囲に鏡を形成したのではない
自分を囮にして、最高のタイミングを待っていたのだ
だが、この炎程度で倒せる相手じゃない事はわかっている
少しでいい。隙さえ与えれればそれでいいのだ

「こんな炎でこの私を…」
「倒せるなんて思ってない!」
「見せてあげるわ、ワンダーワールド。アリスが作るもう一つの世界
 真・天鏡宮!ミラーパレス!」

クリムゾンブロウ曰く「カード欲しさにその他の神姫たのんだら、タイガーのアホ武士子買ってきやがった」
ブラックパイソン曰く「なんて醜悪なツラ…この世のものと思えない醜さだ」

十六聖天外伝 ~失楽園の章~  二話
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