五話

オートクレールの対魔法能力で
ジョンを襲った火球は全てかき消されていた。

『ヘイジョン!ファックするのか!』
「いや、しないよ。状況を顧みてクールに判断してよ」
『OKだぜジョン。あいつをファックするのか』
『ジーク、あの子あんなに下品だったっけ』
「知らぬ。さして興味もない。俺が興味を持つのは」

オートクレールとグラム
ジークフリードとジョンがぶつかり合う

「この男の強さのみよ!」
「ご期待に添えてれば嬉しいんですけど…ね!」
「充分だ。久方ぶりだぞ、この充実感。リーンヴォードと戦った事を思い出す!」
「リーンヴォード…?」
「そう、エクスカリバーのマスター。貴様と同じスコットランド人よ!」
「先輩と貴方が!?」

ジークフリードの激しい剣激を受け流しながら、ジョンの脳裏に一人の男の姿が浮かぶ
アヴァロン学園…幼稚園からエレベーター式のその学園で
常に彼の目標であり、常に生徒会長を務めていた男

アーサー・リーンヴォード
後に聖剣エクスカリバーを手にし、聖剣の持ち主=アーサーの王たらんという理由で
ラテン語で王を意味するRexを名前につけたし、アレクサーと改名したと聞く
その彼ももう今は亡く、剣聖の歴史に名を残すだけである
そのアレクサーとジークフリードがかつて戦ったことがある
それはジョンに少なからぬ衝撃を与えた

「…一つ伺います。どちらが勝ったんですか?」
「ほう。知り合いであったか。我らの腕は互角。相打ちと言ったところだ。奴との再戦が叶わぬ事が心残りよ」

そう言いながら、その戦いで失った眼を撫ぜジークフリードは少し遠い目をした
ジークフリードの瞳が微量だが優しさに似た色を帯びたのに、はたしてジョンは気付いていたのだろうか

「そうですか…。僕はずっと先輩を目標にし、あの人を超えようと努力してきました」
「ほう」

ジョンの周りを取り巻く空気が変化したことを、魔剣士は長年の経験から鋭く察知した
先ほどまでのランスロットとは何かが違う、と

「ですが、あの人は逝ってしまった…」
『ヘェーイ、ジョン!暇すぎるぜ。俺にも喋らせるんだ』
「黙ってるんだ」
『黙ってるぜ』
「あの人と、いつか剣を交えたかった。あの人を超えるために編み出した技もある
 あの人と互角だという貴方に、その技を使いたい。構いませんか?」
「奴を超えるための代わりに、この俺を使う気か。フン…いいだろう!そう簡単に超えれはせぬぞ」

不敵に笑いながら、ジークフリードは剣を構える
それを受け、オートクレールを構えたジョンは

「僕は今日、貴方と、そしてあの人を超える」

ジョンの放つスコットランド粒子が炎をかき消すかのように煉獄を覆い尽くしていく
この粒子量…。純潔種と言っても多すぎる。これは―

ジークフリードの脳裏に、アレクサーとの戦いが再現される
あの時のアレクサーも、これに勝るとも劣らないだけの粒子を放出していた
そしてあの時、アレクサーはなんと言っていたのか

「スペリオルスコットランド粒子…スコットランド太陽の下、スコットランドの純血種のみが使える力」
「そう、通称ソーラーレイカー」
「よもや貴様がその域に達していようとは」
「粒子圧縮率98%…行きます!」

ジョンの放つスコットランド粒子の名と、日本の神話を知っていれば
ジークフリードはその皮肉を笑っていたところだろう
ジョンの放つスコットランド粒子の名はツクヨミ
アレクサーの放つスコットランド粒子の名はスサノオ
共に日本神話の神の名前なのだから

クリムゾンブロウ曰く「冬、か。思い出すな…」
ブラックパイソン曰く「KANONごっことか言いながら、真冬の森で一晩過ごして死にかけた事をか?」
十六聖天外伝 ~失楽園の章~  5話

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最終更新:2008年12月09日 02:50
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