刀幻郷の神剣1


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彼女はそこにいた。
ここに留まり、もう何年、何十年、何百年・・・もうどれほどか分からない。
自分が顕れた場所に、自分の居場所はなかった。故に出奔した。
その末にこの島を見つけた。

ここは、遙か昔から、夢破れた刀剣の魂が行き着く場所、刀幻郷(とうげんきょう)と
意思持つ刀剣類の間では噂されている場所。
主を失い絶望した刃、血に染まるその身を憂いた刃、そして神剣修行についていけず
落第の刻印を押され夢半ばにして倒れた刃・・・刀剣としての使命と宿命から、
逃げ出すように世から姿を消した刃たちが寄り合う場所。

そこに、彼女はいた。
彼女の名は、神剣フツノミタマ。世に十天魔王器と呼ばれる十の宝具の一つである。

フツノミタマがその地に降り立って以来、刀幻郷は、来るものは拒まず、されど
絶望せし刃以外に来ること叶わず、という特異な領域と化していた。
その守られた聖域の中で、フツノミタマは「姫神様」と讃えられ、心に傷を負う
刀剣類にとって癒しの存在、そして絶対不可侵の神聖存在として崇められることとなる。

実際、フツノミタマはそう讃えられるに足るだけの美貌と力を兼ね備えていた。
フツノミタマがそこにある、それだけで刀幻郷はそれまでとは大きく様変わりしていった。
ただの荒みやさぐれた刀剣の集落から、姫神様を讃える癒しの聖地へ。

しかし、当のフツノミタマ自体は何もしてはいない。
彼女はただ、設えていた櫓に佇み、静々と座していたのみである。
ただそれだけ。騒いでいるのは周りだけ。それだけである。
彼女自身、この場所にいることに特に意味は見出していないのだから。

彼女が地上に顕現したとき、彼女には既に居場所は無かった。
邪なるものを滅ぼす剣、神すらも狩る剣、闇を喰らう剣、全てを刺し貫く槍、
富と栄誉と力を与える指輪、龍の魂を秘め荒ぶる力を揮う剣、
悠久の時の流れに揺らぎをもたらす羅針盤、命のみを射抜き貫く弓、
あらゆる魂を生み出し喰らい操る器、その他に顕現した数々の魔具、そして彼女がいた。
彼女の力は他の同士にも劣らぬはずであったが、そこにはその力を扱えるものが居なかった、
否、彼女の力を受け入れられる者も受け入れようとする者も居なかったのである。

彼女はこの世界に顕れた意味を問うたがそれに応える声は無く、彼女もそれは分かっていた。
故に彼女は世界から己を隔離し、誰も来ない島に一人佇むことにした次第である。

刀幻郷は夢破れた刃の集う地。それは先にも触れたとおりである。
ここでは、人化の法を極めた者は少なく、多くの者は刀剣の姿のまま暮らしていた。
刀剣類ということで基本的に嗜む以上に食料は必要とせず、人化した者が持ち回りで
定期的に身を研ぎあう程度である。
それ以外に刀幻郷で行われるものといえば、不定期開催の不幸自慢大会、新入り歓迎会、
年の一度の姫神祭りくらいなものだ。
フツノミタマを盛大に祭り行われる姫神祭りは、刀幻郷に住まう刀剣たちにとって
唯一己の全てを解放しはっちゃけられる場でもあり、そして普段は櫓に篭り姿を見せない
姫神様を間近に見られる機会でもある。
特に新参の刀剣はここぞとばかりに祭りで目立ち美しき姫神様の気を引こうと奮闘するが、
その目に祭りを写していないフツノミタマにとっては全く興味のないことである。
そして新参が撃沈する様はもはや祭りの風物詩と化している。

主無き刀剣という意味では、郷に集う刃達もフツノミタマも何ら違いはない。
フツノミタマとそんじょそこらの刀剣との違いといえば精々、神剣として崇められるだけの
強大な力を持つ上に、超絶かわいくて和風姫装束が超似合う黒髪ロングの超美幼女だという
その程度の違いしかないという、非常に些細なものである。

その島に、今、異変が訪れる。
「陸地がねぇから魚でも捕獲するかと思ったら、いつの間にか陸地に出ていた。
 ここは一体何なんだぜ?まぁいいや。これでメシが食える。肉はあるかが心配だが」
つい先刻とある一人の元サラリーマンに屈辱と絶望を与えた代わりに腹の中の
昼飯を全て失った、日本闇家業随一の馬鹿野郎高校生が来訪してしまったのである。
刀剣類しか入れないはずなのだが、彼、翠・レングラントはいわゆるひとつの
「切れたナイフ」というやつなので、どういうわけか入れてしまったのである・・・。
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