七話


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「見事…ッ」

ジークフリードの身体が揺らめく
だが決して彼は膝をつくことがなかった
剣を支えにして、流れ出る血と激痛に耐えながらも
自分に一撃を入れたジョンを称賛した

『ジーク、大丈夫なの!?ジーク』
「この程度では、まだ斃れぬ…。だがランスロットよ」
「今一度言おう。見事だ。我が宿敵アレクサーを思い出させる一撃だった…ぞ」
「ありがとう…ございます」

命そのものをぶつけるかのような一撃である
ジョンの消耗も尋常でなく、ゆっくりその場に膝をつく

「だがな、ランスロット。残念だ。本当に残念だ。できれば、この場を去れ」
『そうよ、アンタもアロンダイトも今すぐここから逃げなさい!」
「何…を…」
「日が沈んだ。夜が来る…」
『早く!ジークがジークであるうちに!」

もしジョンがジークフリードの身体の秘密を知っていれば
あるいは自体は変わったかもしれない。だがそれを知らぬ満身創痍のジョンは
膝をついて呼吸を整える事しか出来なかった

『もー!早く!早く逃げるの!アロンダイト、アンタも早くその子引っ張って逃げなさいよ!』
『ヘイビッチ、今の俺はオートクレール様なんだぜ。頭が狂ったのかい』
『あぁもう鬱陶しい!あのね、夜になるとジークは』
「オイ…なまくらァ…。テメェ誰に断って俺の食事の邪魔しようとしてやがんだ?アァ?」
『…!』

誰だ…?目の前にいる男はジークフリードだというのに、ジョンはそんな非論理的な事を考えた
雰囲気、気配、口調。何をとってもジークフリードとは違い、違和感を感じずにはいられない
姿はジークフリードだというのに。否、姿すら変わっていた
それはもうジークフリードですら無かったのだ

月を背に立つそれの尾が、揺らぎジョンの身体がくの字にに曲がり、壁に叩きつけられた
満身創痍のジョンにその攻撃は速く、重く、激しすぎた
四肢に力が入らない。致命傷だな・・・ぼんやりとそんな事を考えるジョン眼の前に
“それ”が立っていた
ジョンに攻撃を加えたもの
“それ”はもう、ジークフリードであってジークフリードにあらず
それこそは邪龍ファーブニル。かつてジークフリードが倒し
そしてジークフリードに呪いをかけた龍の姿
アロンダイトが何かを叫んでいるよ。だがもうそれすら聞こえない
巨大な邪龍の爪が、再びジョンに攻撃を加えんと、振り下ろされようとしていた

アロンダイトは思った。自分が実体化出来ればいいのに。こんな時こそ実体化出来ればいいのに
そうすれば、少しは役に立てたのに。ドラマや映画なら、こういう時自分は実体化出来るのに、と
そんな彼女の叫びに、世界が応えたのであろうか
次の瞬間、世界は金色の輝きに包まれていた


「ダメ!やめて、ワンダーワールド!」
「黙りなさい…バンカーバスター!」

やめて?だと。この期に及んで何を言うのか
アリスの静止は命乞いに近いものと受け取り歯牙にもかけず
ワンダーワールドはバンカーバスターを発動させた
だが、それはワンダーワールドの過ちだった。姉を信じることが出来れば
恐らくはこの様な事にはならなかっただろう

だが、彼女の生い立ちと、現在の二人の関係を顧みるに
静止の言葉などは無視されて当然なのである。特に現在二人は戦っているのだから
とはいえ、アリスの静止を無視した結果が、現在のアリスの目の前で潰れている
肉の塊である

ワンダーワールドはアリスの鏡を、物理的に跳ね返すものだと高を括っていた
それはある意味では正しい
だが鏡は決して一つではないのだ。ましてやここはアリスの世界
天鏡宮はバンカーバスターの発動=アリスの死と判断した
天鏡宮は、アリスを守る城である
故に、アリスの意志とは無関係にそれを使用した
究極の防御の一つ。空間反転を

攻撃を空間ごと反転させられ、潰れた妹の姿を見たアリスの叫び声は
鏡の城に空しく響いていた

十六聖天外伝 ~失楽園の章~  7話
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