刀幻郷の神剣3


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「うるうる・・・まだいたいのです・・・」頭頂部を手で摩るフツノミタマ。
「そうかそうか、痛いか。それは何より。痛いってのは生きてる証だ」したり顔で頷く切れたナイフ。
フツノミタマは直感する。

このひと だめにんげんだ しかもじゅうどの

「で、だ。えっと、めんどくせぇタマでいいや。おいタマ、ここは何処だ。世界地図的な意味で」
「わかんない」ふるふると首を振る。
刀幻郷に落ち着いてもう何百年、何千年経ったか。外の世界がどうなったかなど分かろう筈もない。
「ちっ、使えねータマだなぁ・・・はぁ」やれやれ、と溜息をつく切れたナイフ。
「知ってる。そういうの、りふじん、って言めぎゃぁ!?」げしん! 握り拳の硬い所が頭頂部に直撃する。
「一言余計じゃ! ったく・・・」
「えぐえぐ・・・いたいの・・・」
「せめてこういうときにケータイでも使えりゃなぁ・・・くっそ、いいとこねぇなぁ」
切れたナイフのケータイは、先ほど暇潰しに喰らってみた全方位完全包囲金剛槍攻撃で壊れてしまっている。
切れたナイフにとって、先の戦闘における数少ない痛手の一つである。
「?? けー、たい?」
「おう、これがケータイだ・・・つってもブッ壊れてるけどな」
「むむ・・・よく、わかんないの」
「ケータイも知らんのかタマ。つかオマエここにどんくらい居るんだ?」
「う~ん・・・ひい、ふう、みぃ・・・えっと、いっぱい、なnへみゃあ!?」
「ふむ、白か」
「めくらないの! みちゃだめなの! めーなの!」
ぶんぶんと手を振って抵抗するフツノミタマだが、頭を抑えられて腕が届いてなかったりする。
「ん~? 届かんなぁ~?」
「むー! むー! むぅー!!」
「はっはっは、これならどーだぁ?」
切れたナイフはデコを押さえつけていた手で、むんずとフツノミタマの頭を掴み持ち上げる。
「にゃにゃにゃぁ~!? 」
「ほーれ、たかいたかーい」

「さて、そろそろタマいじりも飽きたなぁ」
「さんざんなめにあったの・・・ふらふら」
「つかこんなところでタマいじってる場合じゃなかったんだよな。さてどうやって合流したものか」
「どこかいくの?」
「おう。ちょっとばっかし人殺しをしに、な」
「むー、うそはよくないの」
「嘘じゃないぞ? これでもおにーさん人殺しだからな」
「ウソツキなの。‘ひとでない'のはいっぱいいっぱいだけど、‘ひと’はころしてないの」
「・・・ちっ、やりにきーな。ちびっこのくせに」
「ちびっこじゃないの、フツノミタマなの。タマでもいいの」
「んなこたぁどーでもいい・・・つかオマエは何モンだ」
「すくなくともロードレアモンではないの。どうみてもオジサンなのにおんなのひとのこえはキモかったの」
「何でそんな数年前の深夜アニメなんて知ってるんだオマエは・・・」
「はまべにうちあげられてるテレビでみたの。えいやってねんじるとアニメがみれるの。おもしろいの」
「オマエはウチのちびっこと同レベルか・・・じゃなくてだな、オマエは」
<神剣フツノミタマ。主にとって在ったかも知れない可能性の欠片と在るかも知れない未来を与える剣。
 汝の手は確かに血に紅く染まっていても、それは外道を狩りし外道の宿世。その宿世と、汝の持ちえた
 可能性世界と開かれし明日、深く呪われし業、それらに我が身、我が刃を委ねるのも良いのやも知れん>
「つまり・・・どういうことだってはよ?」
「かんたんにいえば、だめにんげんほどわたしのちからがひきだせるの」
「ほうほう、それで?」
「おにーさんはだめにんげんだから、わたしのちからいっぱいいっぱいつかえるの」
「ほうほう、それで?」
「わたしがうまれたときには、りっぱなひとばっかりだからようなしだったの。でも、
 いまおにーさんに あって、はじめてあるじさまにであえたきぶんなの」
「ほうほう、それで?」
「つまり、おにーさんは、わたしのあるじさまになるの!」
「・・・頭が痛くなってきたんだが」平仮名ばかりなのも頭の痛い要因かも知れない。
「むぅ・・・りかいりょくにとぼしいの」
「さて、そろそろ真剣にどうやってドイツに行くか考えないとな」
「スルーはひどいの!!」
「ん? どうしたタマ? なんか言ったか?」
「むむむ・・・もうおこったぞう! ぷんすかぽん!」
「ほう・・・怒るとどうなるのかな? タマちゃんや」
「タケ! おいで! このおにーさんとあそんであげるの!」
その瞬間、社を別方向からぶち抜き顕れた紫電の牙が、切れたナイフへ一直線に疾走する!

「っつ~、ててて・・・なんじゃその犬とも猫ともつかねぇ生き物は?」
「ペットのタケなの。らぶり~ぷりち~なの。さぁタケ、あれがあたらしいごしゅじんさまだよ、
 あそんでもらうがいいの!」
ウウウ・・・ガァウ! ガァァァァァァァ! グルアアアアアアアアアアアア!!!
「まじかあああああ! 」

タケ・・・武御雷(タケミカヅチ)という名の電狼は、切れたナイフへ猛然と襲い掛かる!
「さぁタケ、ごしゅじんさまともっとじゃれあうの!」
「そこのチビいいいいいいいい! あとでお嫁にいけない体にされてぇかぁあああああああ!」
グルアアアアアア! ガウ! ウガアアアアアアアアア!
「オマエもやかましいわぃこのビリビリわんこめ! サンダースか!」

武御雷はその身を紫に染め、猛然と切れたナイフへ襲い掛かる!
ジンルイヲ ナメルナアアアアアアアアアアアアア!
「今オマエ喋ったよな!? 間違いなく喋ったよな!? 明らかに鳴き声じゃなかったぞ今のは!」
本来ならばこの程度切れたナイフの実力であればどうとでもなるはずなのだが、魂の愛機と言って
憚らない機体と同一の名を持つ目の前の獣を殴るのは、非常に忍びないのである!

「ちっくしょ~・・・なら、これでどうだああああああああ!」
切れたナイフは徐に右の手刀を左下腕に突き刺し、橈骨を引き抜き、力の限り放り投げる!
「よ~しタケええええええええ!! 取ってこぉ~~~~い!!!」
ウーワンワン! ワオーン!
常夏の島を駆け抜ける一陣の風。常夏の島なのに、なぜかうすら寒かったのは何故だろうか・・・
「・・・さて、そこのチビ。おしおきの時間なわけだが」


どっちらけになったジャンケン大会は、結局なし崩し的に、ファイナリストのリジルと
ブルートガングが姫神様の社へ向うこととなった。
「・・・何か嫌な予感がするな」
「つか俺たちいやな予感だらけの剣生だから今更感満点だが」
二人は一生懸命にその身を跳ねさせながら社へ向う。

「てかさ、俺らみたいに上半身だけ人化できるやつじゃなくて、下半身だけ
 人化できるやつとか手足生えさせられる奴が行くべきだったんじゃないか?」
「うむ、だが勝ってしまった以上は仕方がないではないか。それに何より、
 うまくいけばこの機会に姫神様との好感度をアップできるやも・・・」
「ならば急ぐより他あるまい!」

リジルとブルートガングは跳ねる。
修練に耐えていたあの頃よりも必死に跳ねる。ああ、足がないのがもどかしい・・・!
こんなことならもっと修練を積んでから落ちこぼれればよかった・・・!チクショウ!

そのとき、轟音を響かせて何かが彼らに迫り来る!

すこーーーーーーーーーん!!!!!

飛来した何かは、快音を響かせて、リジルの顔面に命中! 気を失ったリジルは人化の法を
維持できず元の剣の姿へ戻ってしまう。
「リジル! おいどうした起きろ! リジル! リジおぶぅ!?」
ブルートガングは何かに踏みつけられ姿勢を崩す。

「な、何が起こったんだ・・・?」
背中より迫ったものを目視しようと振り返ったブルートガングが見たのは、それはそれは
素晴らしい、芸術的な弓なりのしなりを見せて、宙に舞う骨を空中キャッチする、雄々しき
紫の狼の姿であった・・・。

「な、なんだったんだ、あれは・・・?」

骨をくわえた狼は森の奥、そう、彼らが目指すべき姫神様の社へと向っていた。
「姫神様の社から来た、のか・・・?」
ブルートガングは一向に起きる気配のないリジルを見捨て、自分だけが姫神様の好感度を
アップさせようと社へ急ぐことにした。
「今参ります、姫神様・・・!」


そんな刃こぼれした刃どもの心配を一身に受ける姫神様、フツノミタマはおしおきされていた。
「ほ~れたかいたか~い」
「はにゃにゃ~~~! や~め~る~の~~~~!」
「うむ、さすがちびっこ、軽いな」
「お~ろ~す~の~!」

「さていいかげんタマシェイクも飽きたな・・・そろそろわんこが帰ってくる頃かな」
「め~が~ま~わ~る~の~」
「ふむ、タマ公オマエおもしろいな」
「わたしはおもちゃじゃないの・・・あ、タケおかえり! さぁ、ごしゅじんんさまに
 もっとあそんでもらうのぉおおお!」

電瞬の如き神速で戻ってきた武御雷は、咥えてきた骨を切れたナイフに差し出す。
ハッハッハッハ クーンクーン ハッハッハッハ
「よーしよしよし、そいじゃもっかいなー、ほーれ、とって、こおおおおおおおおおい!」
ワオーン! ワンワン!
「タ、タケ・・・?」
「どうやら御主人様として認めてくれたようだな。こうしてみるとなかなか賢いわんこじゃないか」
「タケえええええ! かえってくるのおおおおおおお!」
ワウ? ウー ワン!
「うむ、とりあえず骨を捜しに行ったな」
「しょんぼりさんなの・・・」
「はっはっは、・・・む? タケのやつずいぶんデカいの拾ってきたな」
「あれは・・・むらのひとなの!」

「村の人・・・っつかこいつ下半分剣だぞ! キモッ!」
「むー、そういうこといわないの、あるじさま」
「ぬ、まぁいいや。しかしタケ、こんなもん拾ってきちゃ駄目じゃないか。捨ててきなさい」
ワォン! ワンワン!
ずるずると引きずられるブルートガング。そう、彼も橈骨全力スローを顔面に食らってしまって
いたのであった・・・。
「痛い! 痛いって! マジ勘弁して!」
「お、喋ったぞコイツ。つかオマエ何もんだ」
「そういうオマエこそ何者だ!」
「このひとはあるじさまなの。あたまがわるくてぼうりょくてきで、すぐすかーとめくるけど
 そういうことになったの」
「なん・・・だと・・・?」
「何だか良く分からんが、そういうことらしい。こんなちびっこに主様とか言われても
 ピンとこないんだが」
「貴様あああああああ! 偉大なる神剣フツノミタマ様になんて無礼な!」
「神剣・・・おいタマ、お前剣なのか」
「そうなの! わたししんけんさんなの。みる?」
「おう、見せてみぃ」
フツノミタマの全身が輝きだし、そこに一振りの剣が顕れる。
手に取った切れたナイフはといえば
「ほう・・・見た目は地味だが、こいつぁ流石の業物だな・・・気に入った」
<ふふふ・・・鬼界と欧州の申し子にそう言って頂けるとは、光栄ですわ>
「うむ、そっちのアダルティで漢字多めの喋り方のほうが付き合いやすいぞ」
<あらそう? まぁ、貴方が面倒見が良くて助かったわ。駄目人間だけど>
「な・・・姫神様・・・?」
<貴方は・・・ああ、そこの刃こぼれ村の誰かさんね。わざわざご苦労様>
「姫神様・・・一体何を・・・?」
<駄目な子は嫌いじゃないのだけれどね。持て囃すのは結構だけれど、貴方達みたいに縋る事しか
 しないような、芯から腐って主体性のない唯の駄目なモノはご遠慮願いたいの>
「そんな・・・嘘でしょう・・・? 嘘だと仰ってくださいよ、姫神様ぁ!」
<あらあら、困ったわねぇ・・・ねぇ主様、このやかましいの、ウザいから叩き折って下さらない?>
「まぁ待て。さすがにそこまでしなくても良かろう。おいそこの駄剣」
「ぐぬぬ・・・貴様が我らが姫神様を邪悪に染めたのか・・・?」
「ふん、そうだと言ったら、どうするのかな? 這い蹲るしか出来ない刃毀れ風情が」
「きさまああああああああああああ! よくも我らの姫神様を・・・がふぅ!」
切れたナイフは、さも詰まらなさそうにブルートガングを蹴り飛ばす。
「ふん、吠えるだけしかできないくせに、騒がしい」
「畜生・・・オレに力があれば・・・」
<あら? 何かしらね、力って。貴方如き駄剣がこの私に敵うとでも思っているのかしら?
 寝言は寝てから言って欲しいわね、魂鋼以下の価値しかない分際で>
「貴女には敵わなくとも、その男くらいは・・・」
「あっそ。こんなみっともない姿で這い蹲るしか出来ない駄剣なんか拾うような物好きなんて
 世界中何処探してもいないんじゃないかぁ? アキバの武器屋のほうがよっぽどマシなもん
 売ってるかもなぁ! はぁっはっはぁ!」
「俺の価値は・・・模造刀以下、だとでもいうのか・・・?」
<だって貴方、剣としての価値すらないもの。言ってみれば、武器欄にあってカエルがいるのに
 装備できない、魔岩窟でのイベント前のグランドリオンと同じくらいに意味がないわね>
「いやアレはイベント後は装備できてしかも強化イベントもある。でもコイツはそもそも
 アイテム欄にすら入らん。言ってみりゃ背景だな、背景。それも洞窟でポツンと落ちてて
 画面に接近しないと気付かないレベル」
<さて主様、こんな背景相手にしてないで、さっさと行きませんこと? 待ち合わせがあるのでしょう?>
「おおうそうだった。んじゃな屑鉄、悔しかったら・・・せいぜい追ってきな。そんときゃ」
<私達が、主ごと叩き折って差し上げますわ>
「はあっはっはっはぁ!」

ブルートガングは、変貌した姫神様と、それを番えてこの地を去ろうとしている男の姿を、
涙溢れる両の眼に、必死に、焼き付ける・・・
「いつか、必ず、取り戻してみせる・・・」

<か弱くて儚げな女の子に無駄に欲情する男って嫌なのよね、変にしつこいし、すぐ勘違いするし。
 私もようやく主に出会えたことだし、この後の私のことは、全て貴方に任せるわ。貴方の望むままに
 私を使ってくださいませね?>
「ま、頼りにしてるわ」
<それにしても、余計なことをするのね。あんな妙な粉かけしないで、さっさと叩き折ってしまえば
 よろしいのに>
「ま、ホントにやる気があるなら、そのうちまた会うこともあるだろ。暇つぶしにゃ丁度いいさね」
<そういう楽しみ方もあるのね・・・ふふ、本当に面白い方ですわね、主様>
「よし、さっきのチビに戻れ。この先に村があるってんなら、ちょっとばっかし煽っておくか」
「ふにゅ、もどったの。むー、あるじさま、いじめっこよくないの」
「ぬ、やはり平仮名が増えると面倒だな・・・アダルティな人型にはなれんのか」
「むりなの。それで、なにをするの?」
「ああ、ちょっとばっかし現実を見せてやろうと思ってな。協力しろタマ」
「らじゃー!なの。いくよタケ!」
アォン! ワンワン!
一人と一本と一匹は、集落へ向けて歩き出すのであった。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。