「玄武門」と呼ばれた男がいた。
若くからその手に剣を握り、彼は己が意の赴くままに力を振るっていた。
時に無邪気に、時に乱暴に。
ただ素早く振るわれるだけの双刃は、絶対的な苦悩に打ち払われた。
無心に突き出されるだけの双刃は、強大な壁によって打ち砕かれた。
やがて自身の無力を認め、信念を挫かれた青年。
そんな彼を支えたのは、幼き頃から生を共にしてきた一人の淑女だった。
与えられた温もりは、彼の心に自信を取り戻させる。
再び剣を手にした彼は、更なる成長を遂げていった。
「玄武門」と呼ばれた男がいた。
成長を遂げた彼の手には、かつてと同じ二振りの剣が握られていた。
自身の去りし日の過ちを、戒めるかのように。
自身の一貫した信念を、更に練磨するために。
素早く振るわれる双刃は、押し寄せる脅威を打ち払った。
無心に突き出される双刃は、幾重もの壁を打ち砕いた。
やがて強大な力を得ても、彼は過信することなく前を向き続けた。
そんな彼を…悲劇が襲った。
たった一人の愛娘を、戦乱の中で亡くす未曾有の悲哀。
与えられた不幸は、彼の心を絶望に陥れた。
…しかしそれでも尚、彼は再び剣を手にする。
その目には、かつてない強い意志が宿っていた――――――
「玄武門」と呼ばれた男がいた。
数え切れぬ程の歳月が流れ、かつての青年は老戦士となっていた。
その左手には、異形の盾。
数多の攻撃を浴びながら、尚も君臨する強固な存在。
無数の刀傷を残しながら、尚も健在する強靭な意志。
その盾は、まさしく彼の精神そのものを象っていた。
「 大切なものを、その手で護るために 」
其の剣は、敬愛する友を護るために。
其の盾は、残された家族を護るために。
かつての青年は。
老いても尚、老骨に鞭を打つ。
やがてその身が果てるまで。
やがてその身が砕けるまで。
彼は、戦い続けるであろう。
……で、その「玄武門」は今……
こんな感じになってまス
最終更新:2009年10月06日 16:37